コロナ禍で議論される“命か経済か”、それ以外の選択肢は?

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。11月24日(火)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、社会学者の西田亮介さんがコロナ禍における“命か経済か論争”について述べました。

◆コロナ禍で加熱する「命か経済か」問題

コロナ禍において「命か経済か」という議論があちこちで巻き起こっていますが、一方でWHO(世界保健機関)やIMF(国際通貨基金)は繰り返し「この議論をしないように」という趣旨のメッセージを発信しています。

現状、日本では自殺件数が増加していますが、「注意しなければいけないのは、自殺の原因が経済かわからないことを踏まえて考えなくてはいけないということ」と西田さん。しかし、今年1~10月にかけて、約1万7,000人が自殺で亡くなっており、このままいくと年間2万人を上回る見込みに。

日本の自殺者数はこの10年で約3万人から約2万人へと減少しており、2019年の20,169人は統計始まって以来最小。それだけに西田さんは「命か経済かという擬似トレードオフで考えてはいけない」と主張します。

◆命か経済かの二択ではなく、考えるべきは…

とはいえ、感染が拡大すれば誰もが不安が募るもの。解決法は一概には言えないものの、「考えるヒントとしては、経済が回らなくても命を失わないことが重要。つまり、命か経済かといえば、命ではないかと思う」と西田さんは言います。さらには、「そう考えると雇用対策や失業給付の対象期間などを拡充していくことを考えないといけない」とも。なぜかといえば、今の政策は雇用対策と言いながら事業者向けの給付などが中心で「効率が良くないから」。そして、「それが直接生活者に届いているかわからない。雇用対策というのであれば、直接生活者に配ればいいのではないか」と指摘します。

ちなみに、西田さんが「効いているのか効いていないのかわからない」という事業者向けの持続化給付金は約5兆円の予算規模で、世帯1人あたり10万円を給付した特別定額給付金は13兆円程度。一方、生活保護費は配布額ではなく管理費などを合わせた事業費ベースで年間3.8兆円。これらを比べたときに「生活保護費は少なくないかと指摘できる」と西田さん。

現状では有効求人倍率が月間で1を超えており、求人のほうが上回っていますが、「経済が回らなくても命を失わないような政策をもう少し考えてもいいんじゃないか」と言います。というのも、過去の災害時にも同じようなことが考えられ、例えば東日本大震災後には規模感や事業の継続が前提条件なものの、中小企業の負債や二重ローンを買い上げ事業継続できるようなスキームを用意しました。そういったことをヒントにすべきと訴えつつ、改めて「命か経済か以外の在り方を考えるといい、この二項対立で考えすぎ」とまとめます。

「毎日新聞」ニュース配信動画「まいもく」MCの中嶋真希さんも「命か経済か」の二択は「どちらも選べないものであり、こうした対立を生んでしまうと、どちらか選べない人にとっては絶望感しかない」と言います。そして、「どちらか選ぶのではなく、どっちも選んでいいというメッセージは政策にしかできないことだと思うので、そのメッセージをちゃんと出し続けてほしい」と願っていました。

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<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

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