第8回グッドライフアワード最優秀賞に「東京⾥⼭開拓団」:里山の再生に熱意込める

環境省が主催するグッドライフアワードは、環境と社会によい活動を応援するプロジェクト。ローカルSDGsを体現し、地域循環共生圏づくりにつながる取り組みを「環境大臣賞」として表彰している。このアワードでは5日、第8回の環境大臣賞を受賞した代表者10組によるプレゼンテーションと表彰式が行われた。最優秀賞に輝いたのは、荒れた山林を児童養護施設の子どもたちと伐り拓いて里山づくりを行っているNPO法⼈「東京⾥⼭開拓団」。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から規模を縮小し、一般の観覧はウェブ配信となったが、受賞者の熱い思いは十分に伝わってきた。(いからしひろき)

冒頭、開会挨拶に立った中井徳太郎・環境省環境事務次官は、いまのコロナ禍を環境問題の一つと断言。いよいよ「地球環境容量の限界」と警鐘を鳴らした。その上で、脱炭素化は世界的な潮流として定着し、当初は慎重だった日本も菅総理が2050年までのC02排出ゼロを表明したことで、「国中が変わろうとしている。この移行を経済成長につなげたい」と抱負を語った。

続いて登壇した益田文和委員長は、終戦直後に見上げた青空を例に出し、当時も今も同じ混迷期だと述べた。当時は米国というお手本があったが、環境危機の今はそれがない。それぞれが独自に方向性を見つけていく必要があり、その道標がグッドライフアワードで、受賞者の活動一つひとつが手本だと述べた。

最優秀賞は「子どものふるさとを創出する」里山再生

昨年度(第7回)はブロックチェーンによる自然エネルギーを配電する新電力会社「みんな電力」が最優秀賞、スマホアプリを使ったフードシェアリングサービスの「TABETE」が優秀賞を受賞するなど、新しい技術による課題解決に注目が集まったが、今年は最優秀賞と優秀賞に児童福祉に関する取り組みが輝くなど、「人の絆」に焦点が当たった。コロナ禍の行動自粛により人的交流が途絶えた上、コロナにより世界各地で社会的弱者を中心に多くの死者が出ている現状を反映したように思える。閉会の挨拶でも益田委員長は「もともとSDGsの17にもう一つ付け足したいと思っていた。それは『子ども』だ」と述べている。

最優秀賞を受賞したNPO法⼈東京⾥⼭開拓団のプレゼンテーション内容を簡単に紹介したい。

ウェブ配信より

生きづらさを抱える子どもたちがありのままで暮らせる場所を求め、子どもたちとともに里山を開拓してきた同団。最初は半信半疑だった子どもたちだが、里山に行くにつれ表情が明るくなっていったという。里山には自然資源などさまざまな価値があるが、一番は「人の心を開く力ではないか」と堀崎さんは言う。

一方で全国に広がる所有者不明の荒れた山林は300万ヘクタールに昇り、林業崩壊、獣害、土砂崩れ、不法投棄といった多くの問題を引き起こしている。

子どもの虐待貧困を象徴する「児童養護施設」と、林業崩壊を象徴する「荒れた山林」をかけ合わせたら何が生まれたか。それは「ふるさと」だと堀崎さんはいう。環境問題と社会問題を同時に解決し、持続可能な暮らしを目指すグッドライフアワードに、まさにふさわしい取り組みといえよう。

第8回グッドライフアワード受賞取り組み・団体

受賞者と実行委員ら

現状を鑑み、昨年同様のカンファレンスは行われず、総合プロデューサー谷中修吾氏の挨拶をもって、各受賞者のプレゼンテーションを行った。今回の応募は193件。そのうち10の取り組みに対し、環境大臣賞として最優秀賞、優秀賞、各部門賞を決定した。当日は各受賞者が、以下の順番でそれぞれの取り組みについてプレゼンテーションした。

【地域コミュニティ部門】
「空き家× 太陽光発電から始まる地域循環共生圏」
株式会社太陽住建/神奈川県

(取り組み内容)
地域の課題となっている空き家を借り上げ、太陽光発電や防災設備を備えたコミュニティ拠点に再生させる取り組み。平常時はコミュニティスペースとして、災害時には防災拠点としての機能を発揮。サステナブルなまちづくりを目指している。
(登壇者)河原 勇輝 株式会社太陽住建 代表取締役

【学校部門】
「私たちも社会に貢献することができる! 障害を持っている子ども達が社会貢献を通して世界中に笑顔を届けるeconnect project」
econnect project/福岡県

(取り組み内容)
障がいを持つ中学⽣・⾼校⽣が主体となってecoをテーマに「被災地⽀援」「社会貢献」「国際交流」の3つの分野で21のプロジェクトに取り組みむなど、活動は世界に広がり、地域社会の課題の改善・解決に貢献している。
(登壇者)
小川亮 econnect project 代表(北九州市立菅生中学校 教諭)

【NPO・任意団体部門】
「農福連携で地産地消、廃棄ゼロ。」
さんさん⼭城/京都府

(取り組み内容)
障がい者がやりがいを持って地域特産にこだわった農業の6次産業化を展開。JAへの出荷に加え併設のカフェの運営、付加価値の⾼い加⼯品販売など、環境にやさしい廃棄ゼロ活動に取り組む。また地元の児童養護施設の子どもたちへの農業体験の提供なども⾏っている。
(登壇者)
新免 修 さんさん⼭城 施設長
植原 優 さんさん山城 生産工程管理者

【自治体部門】
「平時の低炭素化と災害時のレジリエンスに貢献する『スマートホーム・コミュニティ』」
さいたま市/埼玉県

(取り組み内容)
地元のハウスメーカーや大学との「公民+学」の連携により先進技術を導入し、再生可能エネルギーを効率的に使用し災害時のレジリエンス性も確保した街区「スマートホーム・コミュニティ」の構築・普及を展開している。
(登壇者)上高原 裕一 さいたま市 都市戦略本部 未来都市推進部 環境未来都市推進担当 主査

【NPO・任意団体部門】
「ジェットコースターが見える大都会横浜は金沢漁港で、森林の5倍のCO2を吸収する昆布の養殖に挑む!」
一般社団法人 里海イニシアティブ/神奈川県

(取り組み内容)
森林の約5倍のCO2を吸収し肥沃な海へと水質改善する能力がある昆布の養殖を大都市横浜金沢漁港で展開。ボランティア参加による環境教育や地産地消商品としての販売も行い全国展開を目指している。
(登壇者)富本 龍徳 氏 一般社団法人 里海イニシアティブ 理事

【NPO・任意団体部門】
「mymizu: 使い捨てプラスチック消費を減らすことをはじめ、持続可能なライフスタイルを簡単に、楽しく!」
一般社団法人Social Innovation Japan(mymizu)/福岡県

(取り組み内容)
無料で給水できる場所を簡単に探せる日本初アプリの開発やデジタルコンテンツ、教育プログラム、コンサルを通し多くの人に海洋プラスチック問題や環境保護の重要性について考えてもらうきっかけをつくりだしている。
(登壇者) マクティア マリコ 一般社団法人Social Innovation Japan代表理事・共同創立者

【優秀賞】
「創業100年の八百屋、野菜のカネマツSDGsプロジェクト ~信州松代から、地球の恵み、自然栽培の野菜を細胞に届けます~」
有限会社カネマツ物産(とカネマツ倶楽部有志)/長野県

(取り組み内容)
創業100年の地域に根ざした八百屋が、地元の自然栽培野菜を買い切って流通させ、自然農業の事業化を推進。試食イベントや農家による講演会などの開催や惣菜の冷凍販売も展開している。
(登壇者)
小山都代 有限会社カネマツ物産/会長 兼 カネマツ倶楽部/代表
奈須野真弓 カネマツ倶楽部/会員 兼 Infinitechange株式会社/代表取締役社長

【優秀賞】
「山村の暮らしを教育財に『暮らしの学校だいだらぼっち』の実践」
NPO法⼈グリーンウッド⾃然体験教育センター/長野県

(取り組み内容)
35年間の長期に渡り全国の⼩中学⽣が1年間親元を離れて泰⾩村で共同⽣活する山村留学を展開。地域の住民と交流しながら、多くの子どもたちが豊かな人間性を育てるとともに、卒業後も都市との交流を促進している。
(登壇者)齋藤 新 NPO法人グリーンウッド自然体験教育センター事務局長 

【優秀賞】
「次世代へとつなぐ循環の環(わ)~生ごみ循環でまちを元気に~」
大木町/福岡県

(取り組み内容)
⽣ごみとし尿・浄化槽汚泥によるメタン発酵施設、おおき循環センター「くるるん」を中⼼に、ごみを資源として地域で循環させる取り組みを住⺠と協働して展開。生産される有機液肥「くるっ肥(ぴ)」は地元の農家や住民に100%活用されている。
(登壇者)境公雄 大木町 町長

【最優秀賞】
「荒れた山林を児童養護施設の子どもたちと伐り拓いて里山づくり〜自らの力でふるさとを創り上げる試み〜」
NPO法⼈東京⾥⼭開拓団/東京都

(取り組み内容)
荒れてしまった⼭林を児童養護施設の⼦どもたちとともに再生することで⾥⼭保全と児童福祉の⼀⽯⼆⿃の活動を展開。企業向け⾥⼭研修事業や⾥⼭紹介サイト運営も行い、施設退所者の⾃⽴⽀援も推進している。
(登壇者)
堀崎 茂 東京里山開拓団 代表
髙田 祐介 東京里山開拓団 理事、救世軍機恵子寮施設長

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