超便利になった先進装備! 北米と日本では使う機能が全く違う? その違いとは?

国が違えば、ルールなどがまったく異なるのは当たり前。クルマの世界も同じなのだが、昨今当たり前になりつつある自動車のアシスト機能も大きく異なるのだ。カメラの使い方ですら、全然違うという。そこで今回は、JDパワーがアメリカで新車を購入した消費者を対象に実施した、先進技術をはじめとする各種装備の有無、利用状況、不具合経験や評価、習熟方法、非利用理由などを聴取した調査「JD パワー2020年米国自動車テクノロジーエクスペリエンス調査℠(J.D.Power 2020 U.S.Tech Experience Index Study℠)」のデータを基に、主に日米の先進装備の違いと、今後期待したい機能について見ていこう!>>

北米駐車場イメージ

国が違えば必要な装備も変わる!? 駐車時のルールに答えがあった

日米で全然違う! と言う話がある。それは駐車の仕方だ。日本はほとんどの場合バックで入れるが、アメリカはほぼ前向き駐車といっても過言でないほど。理由は簡単で日本とは違いアメリカの駐車場はとんでもなく敷地が広いから。

我々の感覚ならば、前向き駐車のひとは“あまり運転が得意ではない人”というイメージだが、アメリカは運転の得意/不得意にかかわらず、前向き駐車が当たり前なのだ。

日本でも増えつつある後方安全機能! 死角をクルマがカバー

リアクロストラフィックアラートは後方の死角からやってくるクルマやバイク、さらには人を検知して、ドライバーに警告するというモノ

となれば、駐車時に必要アシスト機能も大きく異なる。

実用性が高い異能として評価されている機能のなかで、もっとも注目されているのがリヤクロストラフィックアラートなる機能だ。簡単に説明すると、例えば前向き駐車で出庫する際に、左右後方からクルマや人が近づいた場合にドライバーに警告。あるいは自動ブレーキがかかるというモノだ。

最近では日本でも軽自動車などを中心に採用例が増えつつあるが、アメリカはほとんどの車種に搭載されているのだとか。

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緻密な調査がキモ! クルマを客観的に評価する第三者機関

ちなみにJDパワーとは、自動車をはじめとする企業や製品サービスの顧客満足度やユーザー評価、顧客動向に関する調査をグローバルに実施している調査コンサルティング会社である。弊社のカタログページもJDパワーが2019年度に実施したユーザー満足度調査から算出したスコアを掲載している。クルマを選ぶ際に是非! 参考にしてほしい。

日本人らしさが露呈! ちょっと恥ずかしい機能とは?

ここまで日本とアメリカで使われている機能の違いを紹介してきたが、今後期待したい先進機能について触れていこう。現状、日米どちらにおいても浸透していない機能ながら、北米の一部の人が強い支持をしている機能があるという。

メルセデス・ベンツ 新型Eクラスはルームミラー下に取り付けられたカメラに向かってピースサインなどをすると、自宅までの道のりといったナビ設定などが行える

その筆頭が「ジャスチャーコントロール」だ。音量や早送り/巻き戻しといった音響やエアコン温度の上下といった機能をセンサーの下で指を動かすコトで操作できるという代物だ。

日本車でいうならば、ホンダ 新型オデッセイには車内ではないもののジャスチャーでスライドドアの開閉が行える機能も

日本メーカーのクルマで現在採用されているホンダ オデッセイ程度と少ないないものの、輸入車ならBMW 5/7シリーズなどに以前から搭載されている機能である。これまでBMW以外の欧州車メーカーはこの機能を積極的に採用してこなかったのだが、2020年9月にドイツ本国でデビューしたメルセデス・ベンツ 新型Sクラスに採用されるなど、北米のみならず欧州市場でも注目の機能となりそうだ。

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装着車はいまだ少ないものの、実際にジャスチャーコントロール機能を搭載したクルマのオーナーに聞くと約24%は”次のクルマにも欲しい!” と回答

上図は、ジェスチャーコントロールについて、アメリカの消費者の使用頻度を示したものである(出典:J.D.Power 2020 U.S.Tech Experience Index Study)。この表からももわかる通り、プレミアムカーを所有するアメリカのユーザーの86%が少なくとも一度はジェスチャーコントロールを使用した経験があり、24%が将来の自動車購入時に必ずほしい機能だと答えているという。

使ってみると便利だが……他人の目は気になるとの意見も

では、なぜ日本車は積極的に採用していないのか? その答えはズバリ日本人だから、というコトに尽きる。BMW 5シリーズなどすでに日本で販売中のクルマにも採用されているのだが、BMWのディーラーマンによると“使わない人がほとんど”で、その理由は「通行人や同乗者からヘンな目で見られるのが怖い」「何してんだコイツ!? と思われるのがイヤ」といずれも他人に見られて恥ずかしいからという、なんとも日本人らしい理由なのだという。

もっともジェスチャーコントロールの機能がついたクルマがまだまだ普及していないというのも大きいのだが。

いずれにせよ、メルセデス・ベンツも積極的に採用し始めたために、もしかすると日本車にもその波が押し寄せる日もそう遠くないかもしれない。

日本人には不向き! 手書き機能はほぼ使えない?!

メルセデス・ベンツにはタッチコントロールなる操作パネルがセンターコンソールに設置されている。マウスパッドのように使えるだけでなく、この部分に手書き入力をすることで目的地設定などが行えるのだ

ジャスチャーコントロールから少し話は逸れるが、日本特有の問題として手書き機能が使いづらいという点にも注目したい。これはメルセデス・ベンツなどに見られるモノで、センターコンソールにあるパッドに文字を書くことでナビの目的地設定などが行えるという機能だ。

右ハンドルの場合、文字を書くパッドが設置されているのは左側のため、左手で書かなければならない。

文字入力という機能にフォーカスするならば右利きの多い日本人には左ハンドルがオススメ

アルファベットはさておき日本語、とくに漢字を左手で書くのはかなりの難易度だ。しかも、コンピュータが正確に読み取ってくれるとは限らないのだ。実際、筆者がテストを行うと正しく読み取ってくれなくてイライラしたコトを覚えている。

メルセデスに問い合わせるとドイツ本国ではそのようなクレームは一切ないという。スペース的に難しいだろうが、可能ならば右側のドアパネルなどにパッドを設置してほしいモノだが。

せまーい道だらけの日本に最適! 超便利な機能に期待

日本の住宅街はクルマ1台がやっと通れる道なんてのは数多くある。とくに東京の住宅密集地は、嫌気がさすような狭い道にも関わらず一方通行ではない道も多く見かける。そこで対向車が現れた場合、Uターンをする場所もなく、そのまんまバックをしなければならないなんて……考えただけでもゾッとする。そんな時に「クルマが助けてくれたら」なんて現実逃避したコトのある人も多いハズ。

モニターに映し出される指示に従ってタッチ操作をすれば、元来た軌跡をクルマが勝手に戻ってくれるリバースアシスト機能

実は、その夢を叶える機能が現実に販売されている。その正体はBMWのリバースアシストなる機能で、狭い道などのすれ違いの際に自車が通った軌跡を自動で辿ってくれると代物だ。「クルマが自動で対向車とすれ違ってくれる」とまではいかないが、バックするしかない時に重宝するハズだ。

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現在、一定の速度&先行者との距離を一定に保ってくれるACC(アダプティブクルーズコントロール)が軽自動車にまで普及している。だが、この機能はご存知の通り、メインで使うのは高速道路などの速度域が高い道路のため、一般道向きではないとされている。そのため、欧州のように毎日のようにアウトバーンを走らない日本には、ACCよりもリバースアシストをもっと普及させるべきではないだろうか。

ACCに比べて、より高精度のセンサーやカメラが必要となるためにコストがかかるのは確かだが、ぜひ日本車にこそ欲しい装備ではないだろうか。

いずれにしても飛躍的な進化を遂げているアシスト機能。完全自動運転社会の実現までには相当な時間がかかりそうだが、過渡期ならではの今しか味わえない機能に是非注目してほしい。

そんな時だからこそユーザーの声をメーカー自身が求めており、もしかすると自分の意見が商品改良に役立つかもしれない。そんな関わり方ができるのは今だけなのだ。

【筆者:MOTA編集部 木村 剛大】

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