表参道で運用開始されたスマートゴミ箱「BigBelly」、街のゴミ箱からスマートシティのきっかけに

米BigBelly Solar社が開発したスマートゴミ箱「Big Belly」は、2020年10月にスマートゴミ箱・SmaGO(株式会社フォーステック)として、表参道に設置され正式運用が開始した。日本での正式運用はこの表参道が初となる。日本での販売代理を行っている日本システムウエア株式会社(以下、NSW)のサービス・ソリューション事業本部副本部長/クラウドサービス事業部事業部長である大島幸司氏にお話を伺った。(聞き手:IoTNEWS代表 小泉耕二)

日本での販売を決めた背景

NSWは、2012年ころからM2Mのビジネスを行っている。これからはIoTが広がると考えている中で、扱える製品のラインナップを広げるために様々なリサーチを行っていたという。その中で目に止まったものが「BigBelly」で、すぐに10台程を購入し日本へ持ち込んだそうだ。展示会で披露したところ、メディアや企業からの引き合いが多かったため、日本で販売することにしたという。

「BigBelly」の基本的な機能

天面には太陽光ソーラーパネルが搭載されており、センサーでの検知や通信などに必要な電力を賄うことが出来る。「BigBelly」の中には、センサーが付いたゴミ箱が設置されている。このセンサーは、ゴミ箱内でゴミの高さがある程度まで高くなったら満タンであることを検知するようになっている。ゴミ箱の満タンのしきい値は、ゴミ箱ごとに設定が可能だという。ゴミの種類によっては、重すぎて回収ができないという可能性があるため低めのしきい値にするというような対応が可能だ。ゴミ箱が満タンになった場合、通知を行うことが出来る。システム上では、どこのゴミ箱が満タンかどうかを可視化して確認することが可能だ。「BigBelly」には、ゴミを圧縮するタイプと圧縮しないタイプの2種類がある。雑誌や瓶など圧縮に向かないものは圧縮しないタイプを利用するなど、ゴミの種類などによって利用が分けられている。圧縮するタイプの「BigBelly」は、センサーが満タンを検知すると、ゴミ箱内でゴミの圧縮を行う。最大で5倍程度の圧縮が可能だという。こうした機能を使用するための電力は、天面に設置された太陽光ソーラーパネルによって発電されたものを使用している。そのため、設置時に新たに電力を供給する必要がない。導入の際には「BigBelly」を設置するだけという点も今度拡大していくためには重要なポイントになるだろう。

海外と日本で異なる導入状況

表参道に設置されているものは、森永製菓株式会社の広告がラッピングされている。海外では北米やヨーロッパを中心に50カ国で導入されており、自治体での導入が8割を超えているという。NSWは、日本でも同様に自治体での導入から展開をしようとしたが、日本では海外と状況が異なるため展開ができなかったという。海外では、街にゴミ箱が設置されていることが多く、ゴミ箱が満タンになり、ゴミが外に溢れてしまうという問題が多くあるという。しかし、日本は街にゴミ箱があまり設置されておらず、「BigBelly」を導入しようとすると、新規設備投資がかかってしまい投資対効果が出なかったそうだ。今回の表参道での導入でも、最初に導入を検討した際は金額面があわず、導入を断念した経緯があるという。今回導入できた背景には、広告費によって初期費用をまかなえているということがあるという。大島氏は、「日本国内では、自治体での導入よりも、表参道の事例のように広告費を利用した導入や企業のCSRの予算を利用した導入が今後増えるのではないか」と語る。また、自治体で設置を行う場合、ゴミの分別が必要になるが、分別が正しく出来るかどうかは利用者のモラルに依存してしまう。表参道の取り組みは産業廃棄物として収集を行っている。こうした側面からも企業が導入する方が導入が進むのではないかとした。表参道では、景観を保ちたいという要望が周囲の店舗からあったという。元々設置されていたゴミ箱では容量が足りず、お昼に1度ゴミを回収し、翌日のゴミ回収まで隠しておく必要があった。「BigBelly」を導入することで、ゴミの圧縮が可能になるため、毎朝1回のゴミ回収までゴミが満タンになることがなくなったという。現在は、1箇所にいくつかのゴミ箱を連結して設置しているため、1日1度の回収までに余裕を持って運営できているという。現在は、ゴミの満タン状況を可視化して分析することで、更にゴミの回収頻度を下げられないかを検討しているとした。

「BigBelly」をきっかけにスマートシティを広げる

現在使用しているゴミ箱やWebインターフェイスなどはすべて米BigBelly Solar社が開発したものだという。各ゴミ箱の満空情報を見るだけであれば、米BigBelly Solar社の持つ機能だけで利用が可能だが、今後大きなスマートシティプロジェクトの中で「BigBelly」を使用するということを考えたときに、NSWの持つソリューションと組み合わせることが可能ではないかと考えていると大島氏は語る。既に海外では、太陽光パネルによって発電された電力を利用して、「BigBelly」から音声を発信する教育面の取り組みや、「BigBelly」にWi-Fiの機能を搭載し、電波状況が良くない地域でのWi-Fiのフリースポットとして活用する取り組みなどが進んでいるという。日本で「BigBelly」が広く知られるきっかけになったのは、東海大学での実証実験だという。東海大学でIoTの研究を行う研究室から、IoTの教育に教材として適していると評価されて導入に至ったという。センサーを使用し社会問題を解決するというわかりやすいモデルだからだ。大島氏は、「BigBelly」がスマートシティへの取り組みが増えるきっかけになれば良いと語った。

[(https://iotnews.jp/202007_nsw)

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