12月も株式市場も堅調に推移?例年年末に伸びるバリュー株にも注目

12月4日に米国の主要株価指数が最高値を更新した翌週、日本株は概ね堅調に推移しました。ただ、7~11日の5営業日で日経平均株価は98円下落。新型コロナの感染が再拡大していることなどを理由に、急ピッチで進んだ株高のスピード調整が入ったイメージです。

一方の米国もS&P500やナスダックが12/8に再度高値を更新する場面があったものの、全般的な値動きは一進一退で、12/11までの5日間でNY ダウは171ドル下落しました。

年末に向け、株価はどう動きそうか、投資家はどんなイベントに注意すべきかを解説します。


日米ともに高値圏で一進一退

直近で新型コロナのワクチン投与が英国で開始されました。待望のワクチン実用化で、感染抑制の効果が期待されるところです。ただ、その一方で世界的に新型コロナの感染が増加し、人々の行動を制限するような対応が検討・実施されている段階にあります。

将来的な新型コロナウイルスの制圧という希望よりも、足元で急速に感染が拡大する現実に目が向けられたことで、とりわけ日本では順調に上昇してきた株式相場に小休止が訪れたと解釈できます。

米国では12/11に米ファイザーなどが開発する新型コロナウイルス・ワクチンの緊急使用許可が承認され、モデルナが開発中のワクチンも近日中に承認が下りる見通しです。それらによって、再び投資家のセンチメントが上向く可能性があります。

日米の追加経済対策によるテコ入れ期待

次なる展開を待つ市場参加者にとっての好材料は、日米で経済的なダメージを手当てする景気対策の成立にメドが立ったことでしょう。それすらも、既に株価には織り込まれつつあるのかもしれませんが、実際に対策が成立し、稼動することによって得られる安心感は大きいでしょう。

日本では12月8日に追加の経済対策が閣議決定されました。その内容は事業規模で約74兆円、財政支出で約40兆円(国費ベースで30兆円超)とされています。日本の需給ギャップ(年換算で34兆円:内閣府試算)や、第1弾・第2弾の経済対策における財政支出合計(国費で約60兆円)と比べても、十分に規模は大きいと判断されます。

米国の追加経済対策についても、米議会での話し合いが続けられています。2兆ドル以上の規模を求める民主党と、5千億ドル程度を主張する共和党との間で議論が平行線を辿ってきましたが、ムニューシン財務長官が提示した9,160億ドルの案を軸に妥協点を探る動きが強まっています。

バイデン次期大統領も追加対策の早期成立を望んでいることから、年明けを待たずに決着する可能性もありそうです。日米の追加経済対策が出揃うことで、目先の株式市場では「政策に売りなし」の展開となることが予想されます。

米FOMCでは金融緩和姿勢を確認

年内に残された重要イベントとしては、12月15、16日に開催される米FOMCが挙げられます。新型コロナの感染再拡大で米経済の鈍化傾向が強まるなかで、米金融当局が金融政策の方向性にどのような修正を加えるのか(もしくは、加えないのか)が注目されます。

米10年債利回りは、10月はじめの0.6%台から足元の0.9%台に、じわり上昇する傾向を見せています。FRBの積極的な金融緩和姿勢に懐疑的な見方が増えると、市場金利への上昇圧力が高まりかねません。

ファンダメンタルズが十分な回復を遂げていない中での市場金利の上昇は、堅調な株価推移に水を差すことになるかもしれません。米金融当局の景気認識の変化の有無に十分な注意を払う必要があるでしょう。

米ホリデー商戦は試金石?

その他、経済指標の発表では、12月16日の米11月小売売上高が注目されます。ホリデー商戦の途中経過ともいえる今回の結果には、ブラックフライデー前後の小売の動向が反映されます。「ホリデー商戦期の小売動向は堅調」と考える市場参加者に対して、そうではない結果が突き付けられるリスクには気をつけないといけません。

全米小売業協会(NRF)が予想する今ホリデー商戦期における売上の伸びは、前年比3.6%~5.2%増となっています。米商務省によれば、ホリデー商戦に入る前の9月と10月の小売売上は、それぞれ前年同月比でプラス5%台と好調に推移しました。

それゆえに、コロナ下でのホリデー商戦にも高い期待が寄せられています。仮に9月、10月が単なる需要の前倒しであった場合、もしくは新型コロナの感染拡大に伴い、急速に消費マインドが冷え込んだ場合には、株式市場にもネガティブな印象を与えるかもしれません。

サプライズなければ相場は堅調

上で挙げたもの以外での注目イベントとしては、12月14日の米大統領選における選挙人投票があります。しかし、すでに各州の選挙結果が確定し、バイデン氏の勝利は揺るぎそうにないことから、波乱は予想しにくいと言えます。

また、日本や英国でも金融政策会合が予定されていますが、政策変更は特には想定されず、相場への影響は限定的と見ます。株価材料としては、とにかく米FOMCに勝るものはなさそうです。

加えて、米国の追加経済対策の行方は引き続きの関心事となります。年内の取引は約半月を残すものの、参加者は次第に減っていくことが見込まれます。先に掲げたイベントや経済指標の発表で、サプライズが生じない限り、年末に向けての株式相場は安定的に推移しそうです。

12月はバリュー株の季節性に注目

物色面での注目点として指摘できるのは、バリュー株優位の展開が実現するかどうかです。過去10年のデータを見ると、12月はバリュー株が優位な傾向にあります。

この1年を振り返ってみると、コロナ下での需要を取り込むハイテク企業・グロース系の株価が好調でしたが、11月以降では景気敏感・バリュー系の健闘が目立つ場面もありました。

直近の1週間ではグロースかバリューかの選好に顕著な傾向は確認されていませんが、12月の残りの期間でバリュー優位に傾くかどうかに関心が寄せられます。季節性に沿ってバリュー株の巻き返しが実現すれば、相場全体の底上げにつながると考えられます。

<文:チーフグローバルストラテジスト 壁谷洋和>

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