投資信託はインデックスファンドで十分?アクティブファンドとデータで比較

「アクティブファンドとインデックスファンドのどちらが良いのか」という議論は、今のところ「投資について専門知識を持たない普通の人はインデックスファンドで十分」ということで納得されているようです。

では、本当のところはどうなのでしょうか。まずは実際のデータから、アクティブファンドとインデックスファンドのリターンを比較してみましょう。


インデックスファンドの有利な点

「長期的に資産運用をする場合、アクティブファンドよりもインデックスファンドを選んだ方が良い」。

投資信託で資産運用している人たちに言わせれば、「何を今さら」の話だと思いますが、それではなぜインデックスファンドを選んだ方が良いのでしょうか。

第一に、アクティブファンドはインデックスファンドよりも運用コストが高いという事実があります。インデックスファンドの信託報酬率が年0.5%前後であるのに対し、アクティブファンドのそれは年1~2%程度です。

信託報酬率が片や年2%で、もう一方が年0.5%だとしたら、1年間で1.5%もの差がつきます。このコスト差分を運用能力で埋めるのは非常に困難と言われています。このコスト差がアクティブファンドのリターンを蝕み続け、結果的にインデックスファンドのリターンに劣後してしまうのです。
第二は、そもそも優秀な運用者が担当しているアクティブファンドを見つけるのが困難であること。

アクティブファンドは運用者の巧拙によって、運用成績には大きな差が生じます。したがって、インデックスファンドのリターンを上回るアクティブファンドも存在するのですが、よほど株式投資やファンドの運用に精通している人でもない限り、それを見つけるのはかなり難しいでしょう。

この点、インデックスファンドは同じベンチマークへの連動を目標とするならば、運用者が違ったとしても、それほどリターンに差がつきません。まさに平均的なリターンを享受できるのです。

もちろんインデックスファンドはベンチマークの採用銘柄を全部組み入れるのではなく、出来るだけ少ない銘柄数で、ベンチマークと同じパフォーマンスを上げられるようなモデルを組んで運用するため、モデルの出来具合によって多少の差が生じますが、アクティブファンドに比べれば僅差です。

こうした理由から、投資や資産運用に深い造詣を持たない普通の人が投資信託で資産運用をする場合は、アクティブファンドよりもインデックスファンドを選んだ方がベターだと言われているのです。

アクティブファンドのなかには30%超のリターンも

実際、アクティブファンドとインデックスファンドの間にどれだけの差があるのかを比較してみましょう。ちなみに本稿を書くにあたって、「投資信託事情」に掲載されている2020年9月末時点のデータを参考にさせてもらいました。

本稿では、国内株式型の大型株、中小型株に分類されているファンドのうち、設定から5年が経過しているものを抽出し、過去5年間の運用成績(年率)を比較しています。つまり2015年9月末から2020年9月末までの間に、基準価額が年平均何%値上がり(あるいは値下がり)したのかを見てみます。
まずインデックスファンドの運用成績です。

日経225平均株価に連動するタイプ・・・・・・年7.1~7.6%
東証株価指数(TOPIX)に連動するタイプ・・・・・・年4.4~4.8%
JPX日経インデックス400に連動するタイプ・・・・・・年4.5~4.7%

では、これに対してアクティブファンドはどうなのかと言うと、最も運用成績の悪いファンドが▲3.6%。逆に最も高いファンドが30.7%でした。見事なくらい運用成績がばらついています。

ちなみに前出の条件で抽出されたファンドの本数が全部で389本あり、このうち日経225平均株価に連動するインデックスファンドの中で、最も高いリターンだった7.6%を上回ったアクティブファンドの本数は128本でした。つまり、全国内株式型ファンドのうち3本に1本の割合で、インデックスファンドを上回るリターンが得られたアクティブファンドが存在していたことになります。

ただし、注意点があります。この数字はあくまでも2020年9月末を基準にしたものでしかないことです。あくまでもラップタイムの成績なので、瞬間的に高いリターンを実現したファンドが含まれている可能性もあります。

大事なことは安定的に高いリターンを実現することですから、本来であれば毎月継続的に運用成績を比較し、常時、上位にランキングされているファンドを探す必要があります。

新興企業投資を中心に高実績

では、過去5年間でどのようなファンドの運用成績が良かったのか。ファンド名を列記してみましょう。

1位 DIAM新興市場日本株ファンド(アセットマネジメントone)
2位 東京海上ジャパン・オーナーズ・株式オープン(東京海上アセットマネジメント)
3位 日興グローイング・ベンチャーファンド(日興アセットマネジメント)
4位 MHAM新興成長株オープン(アセットマネジメントone)
5位 小型株ファンド(明治安田アセットマネジメント)
6位 SBI中小型成長株ファンド(SBIアセットマネジメント)
7位 SBI小型成長株ファンド(SBIアセットマネジメント)
8位 新成長株ファンド(明治安田アセットマネジメント)
9位 日本新興株オープン(日興アセットマネジメント)
10位 新光日本小型株ファンド(アセットマネジメントone)

ここに取り上げた10本のうち9本が、ファンド名に「新興株」、「中小型株」、「ベンチャー」という単語を盛り込んでいます。いずれのファンドも新興株や中小型株、ベンチャー企業の株を組み入れて運用するタイプです。

新興株や中小型株は、総じて値動きは日経225平均株価に採用されている大型株に比べて大きくなります。
たとえば5年の運用成績がトップだったアセットマネジメントoneの「DIAM新興市場日本株ファンド」の期間別騰落率を見ると、過去5年の騰落率は82.8%ですが、過去1年の騰落率は91.2%です。

過去の基準価額の推移をグラフで見ると分かりますが、この1年間で基準価額が急伸しています。ちなみに、日経225平均株価に連動するインデックスファンドの過去1年間騰落率は7.9~8.4%ですから、アクティブファンドの中には、インデックスファンドではとても太刀打ちできないほどのハイリターンを実現するものもあるということは、事実として押さえておくべきでしょう。

ただその一方で、運用成績がボロボロのアクティブファンドもあります。インデックスファンドの中で、過去5年騰落率の年平均が最も低いのは、東証株価指数連動型の年4.4%で、これよりも悪い運用成績のアクティブファンドは全部で94本あります。

このうちマイナスリターンのファンドの本数が過去5年騰落率で8本、過去3年騰落率で80本もあります。
当然、この手のファンドを選んでしまった投資家もいるわけですが、アクティブファンドに投資するならば、この手のダメファンドを買わないように、自分なりのスクリーニング基準を持つ必要があります。

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