【Q&A】無形文化遺産に登録 伝統建築工匠の技とは 課題は後継者の育成

高松塚古墳壁画の修復作業=2012年2月3日、奈良県明日香村(文化庁提供)

 宮大工や左官職人ら匠(たくみ)によって連綿と受け継がれてきた「伝統建築工匠(こうしょう)の技 木造建造物を受け継ぐための伝統技術」が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されることが決まった。関係者は歓迎する一方、貴重な技術をどう後世に伝えていくかという難題を抱えている。(47NEWS編集部)

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 Q そもそも無形文化遺産とは何か。

 A 2006年に発効した、無形文化遺産保護条約に基づき、世界各地の祭礼や芸能、伝統工芸技術などを登録、保護するユネスコの取り組みだ。貴重な遺跡や建造物、自然を対象とする「世界遺産」、文書や絵画が対象の「世界の記憶」(世界記憶遺産)と並ぶユネスコ三大遺産の一つだ。

無形文化遺産の新規登録を審査するユネスコ政府間委員会=2018年11月28日、ポートルイス(共同)

 Q 登録はどのように決まるのか。

 A まずは締約国が遺産候補をユネスコに申請する。その後、専門家の評価機関による事前審査や勧告などを踏まえ、締約国から選ばれた24カ国でつくる政府間委員会が登録の可否を決める。

 日本からはこれまでに歌舞伎や能楽、和食などが登録されている。直近では「男鹿のナマハゲ」(秋田)を含む「来訪神 仮面・仮装の神々」が18年に登録された。

「伝統建築工匠の技」に含まれる「選定保存技術」の一つ、檜皮ぶき(提供写真)

 Q 「伝統建築工匠の技」の内容は。

 A 宮大工や左官職人らが古くから継承してきた17分野の技術だ。木や草、土といった自然の素材を活用し奈良県斑鳩町の法隆寺に代表される日本の伝統的な建築文化を支えてきた。どれも文化財保存のため国が伝承を支援する「選定保存技術」に選ばれている。

 具体的には、瓦屋根やかやぶき屋根、建具や畳の製作のほか、建物の外観や内装に施す装飾や彩色(さいしき)、漆塗りなど。傷んだ古文書や絵画を修理する装こう修理技術も含まれる。キトラ古墳や「飛鳥美人」の愛称で知られる高松塚古墳(いずれも同県明日香村)の壁画修復などを担ってきた技術だ。

 Q どんな点が評価されたのか。

 A 評価機関は11月の勧告で、古くから大工の棟梁(とうりょう)らが「弟子を鍛え、知識や技術を伝えてきた」と評価した。屋根ふきなど一部の作業には地域住民が関わることがあり、社会の結束を強める役割も果たしているとした。 

法隆寺の中門(手前)と五重塔=奈良県斑鳩町

 Q こうした技術を次の世代に受け継いでいくのは大変な作業だ。

 A その通りだ。勧告は、近代化が進み、熟練職人による弟子の育成が「一層困難になった」とも指摘している。実際、日本各地に残る貴重な木造建築などを後世に残す役割を担う職人たちの高齢化が進んでいる。その一方で、門をたたく若手は少なくなっている。後継者の育成は急務となっているのだ。

 「無形文化遺産登録をきっかけに、世の中の関心が高まり、新たな人材が出てきてほしい」というのが、技術保存を担う人たちの共通の願いとなっている。

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