2020年も残りわずかとなりました。今年の株式市場は新型コロナウイルスの世界的流行により、年初に2万4,000円近辺で推移していた日経平均株価は3月に一時1万6,000円台まで下落。しかしその後は各国の金融緩和により株価は急激に回復し、日経平均株価も11月以降にバブル以来の高値を29年ぶりに更新。株価が上下に大きく振れる1年となりました。
波乱の中でも活況に沸いた2020年の相場で、個人投資家の注目を浴びた銘柄は何だったのでしょうか。今回はスマートプラスのコミュニティ型株取引アプリ「STREAM」内の掲示板での銘柄別コメント数のランキングから2020年の個人投資家の関心を紐解こうと思います。
※紹介するコメントは原文のまま表記しています。
幅広い銘柄に注目が集まる
まずは15位~6位までを見てみましょう。昨年同様、オリックスや日産自動車など高配当や優待で有名な銘柄は安定して多くのコメントを集めていました。特にこのような大型株は初心者にも人気があり、初めて購入したという投稿も見られたのが印象的です。
【オリックスについて】
本日めでたく22歳の娘の初優待銘柄となりました。
優待が好条件のまま,ずっと続きますように。
オリックスさん,頑張ってね
(ほたるさん、35いいね)
また、今年8月に新規上場し一時公開価格の10倍まで上昇し注目を集めたティアンドエスや、eコマースプラットフォームを展開し、3月の安値から一時20倍以上まで上昇したBASEなど、市場で注目を集めた銘柄もランクインしました。
このような値動きの激しい銘柄の掲示板には、ベテラン投資家から初心者へアドバイスの投稿が見られていました。このようなコミュニケーションもコミュニティ投資の特徴と言えます。
【BASEについて】
株式投資を甘く見てはいけません!恐ろしい展開に右往左往しない覚悟が無ければ、傍観している方が良いくらいです
丁半博打にさも似たり と言うのが長年相場変動を見て来た私の感想です。
夢も希望も無い様な話でごめんなさい(^-^;それほど生き残る事が難しいと言うお話でした
(生々流転さん、62いいね)
上位にはETFが並ぶ
2020年は世界的に相場が乱高下したこともあり、原油価格がマイナス価格となったほか、金価格が史上最高値を更新するなど、株価指数だけでなく商品価格にも注目が集まった1年でした。そのため上位3銘柄はETFとなりました。5位から詳しく見ていきましょう。
第5位 ソフトバンクグループ(1,275件)
3月には3,000円を割れるまで下落をし、一時は倒産の危機まで話題になりましたが、投資先の株価上昇やMBO観測など話題に事欠かず、10月以降2000年以来の高値を記録しました。売買代金も大きく短期取引の対象なることも多い中、長期投資家による配当を喜ぶ投稿も見られます。
【代表的なコメント】
よっしゃ!
中間配当金22円の維持発表*\\(^o^)/*
「守り=現金」って、この前の決算発表で言ってたから無配だと思っていたのでびっくり!
まぁ投資会社だから、今後も株価変動に振り回されるんですけどね^_^;
でもやっぱり、恩株保有者にとって配当金は有難いです。
(masaru31さん、18いいね)
第4位 アンジェス(1,286件)
4位には3月に大阪大学と新型コロナウイルス向けワクチンの共同開発を発表し、急騰を演じたアンジェスがランクインしました。昨年も6位のコメント数を記録しており、バイオ関連として個人投資家に根強い人気があります。
海外のファイザーやモデルナなどがワクチン開発で先行しており、アンジェスはまだ治験の段階ではありますが、今後も注目は続くかもしれません。6月の段階で見通しを書いているコメントも見られ、個人投資家の目利きの高さがうかがえます。
【代表的なコメント】
ただ今、朝6:33のNHKニュースでコロナ遺伝子ワクチンについてやってました。
ワクチン開発はアメリカがリードしてるみたいですな、この秋から一般投与予定…
国を挙げて開発してますからライセンスもスピード承認でしょうな〜
アンジェスはこの秋から治験予定?と聞いてますが、後になるならより安くて良いものを作って欲しいです。
(塩漬け長介さん、23いいね)
第3位 NEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信(1,800件)
3位にはダブルインバースのETFがランクイン。日経平均株価が1%下落すると2%上昇する特殊な商品であり、昨年も3位のコメント数を記録していて個人投資家の投資対象として定着しています。
今年の日経平均株価はここ数年壁になっていた2万4,000円台付近や、バブル以来の高値を記録した11月など、下落を予想したくなるタイミングが多くあり、たびたび話題となりました。
【代表的なコメント】
そろそろ下げると思い買い出した人多いですね(⌒-⌒; )
でも、ダウが記録的な上げ、今日も日経上げの可能性大ですね…蓋を開けないと分かりませんが。
私もこのパターン良くやりましたが、何か勝率悪いし、減価だし、やめました(⌒-⌒; )
負けると優待、配当もなく、自分から減っていくみたいだし、長く付き合えないので(⌒-⌒; )
(ダウりんさん、36いいね)
トップ2は原油のETF
第2位 WTI原油価格連動型上場投信(1,944件)
第1位 NEXT FUNDS NOMURA原油インデックス連動型上場投信(2,230件)
コロナショックによる先行きの需要不安や米国での貯蔵能力の限界などさまざまな要因が重なり、4月20日にNY原油先物価格が1バレル=マイナス40.32となり大きな話題となった原油のETFが1位、2位を独占しました。
共に先物ETFを対象とする商品であるため、月に1度、期日の短いものを売って長いものを買うロールオーバーのたびに価値が下がってしまうという特性があり、短期の取引に有効とされています。
そのためコミュニティ内でもマイナス価格をつけた4月以降、限月付近になると盛り上がりが加速していました。価格の下落が続いた4月後半には底値を狙う投資家の投稿も目立ちました。
【代表的なコメント】
もう66円。
65円になるのは時間の問題で、ここで買っても旨味がないから。
最低単元の10口だけにします。
多目に買うのは明日以降!
(ポリフォニカさん、27いいね)
今年は上位にランクインした原油やダブルインバースのETFのほかにも、複数のETFへのコメントが多く見られ、個別銘柄だけでなくETFまで手掛ける個人投資家の投資手法の多様さが見て取れました。
また、コミュニティの特性を活かし、商品ごとの特色や売買タイミングについて積極的に交流がされている点も印象的でした。
来年の日経平均株価は3万円台への到達が期待されています。個別でもどのような銘柄に注目が集まるのか楽しみです。
<文:Finatextグループ アナリスト 菅原良介>