クラゲ水槽ピカピカ大作戦! サンシャイン水族館、夜の大掃除に行ってきた

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「大掃除」、年末にやらなければいけないとはわかりつつ、面倒臭いものである。きれいに掃除したらスッキリするとはわかっているけれど……。

そんな憂鬱な気分のところに、東京・池袋の「サンシャイン水族館」で年末の大掃除をするとの話を聞いた。「クラゲのいる水槽の水、全部抜いてピッカピカにします!」とのこと。

そんなに大掛かりな掃除を見たら、自分の部屋を大掃除しようというモチベーションも上がるかも!? 淡い期待を胸に、サンシャイン水族館へ向かった。

営業終了後、夜のサンシャイン水族館へ

今回の水を抜く掃除は、営業終了後の時間帯に行われる。誰もいない夜の水族館は不思議な雰囲気だ。

サンシャイン水族館は、東京・池袋のサンシャインシティの屋上にある水族館。日本で初めて作られた都市型の高層水族館で、まるで都会の空を飛んでいるような「天空のペンギン」や、自然のままの環境を再現した「草原のペンギン」をはじめ、独特の見せ方やイベントなど話題に事欠かない。世界の水辺や海の生き物に会える、まさに「都会のオアシス」だ。

「クラゲスクリーン」水槽の水ぜんぶ抜く!

今回掃除するのは、2020年夏にオープンした「海月空感(くらげくうかん)」内の「クラゲスクリーン」水槽。横幅4mの水槽で、触手が長いシーネットルというクラゲの仲間を見られる。

今年はコロナ禍で息詰まることが多い年だったけど、暗い中でカサを閉じたり開いたり、ふわふわとたなびく姿を見ていると、慌ただしい日常を忘れられそう……。

「この『アカクラゲ』、日本近海にたくさんいて、夏に海水浴場で刺される被害も出るクラゲです。赤い模様と長い触手が特徴で、大きなものではカサが40cmくらいにもなるんですよ」

え、癒やされると思ったら危険!? 意外と身近なクラゲなんですね!

そう説明してくれたのは、今回の水槽掃除を担当するサンシャイン水族館の杉本さん。今日はよろしくお願いします。

でも一見きれいな水槽ですが、水槽ってそんなに汚れるんですか?

「水槽の底やアクリル板は汚れやすいですね。クラゲも餌を食べて排泄するので、その汚れがもとになって照明で苔が生えたりします。普段からスポンジで掃除はしていますが、年に数回、今回のように水を完全に抜く『落水清掃』をしています」

アカクラゲは動物性のプランクトンや、他のクラゲ、大きいものだと小魚も食べるそう。意外と食欲旺盛である。

今回の清掃では、まずクラゲをすくい取り、水を抜いたあと塩素とスポンジで苔や汚れを落とす。水や中和剤で洗い流し、満水にしたあと一晩置いて、翌朝クラゲを戻す流れだ。

それでは、早速掃除の様子を見ていこう。

掃除の前にクラゲを脱出!

まずクラゲを水槽から脱出させる。動きがゆっくりなクラゲは簡単に捕まえられそうだが、とても繊細な作業だそう。

「クラゲは自分で泳ぐ力があまりなく、体はほぼ水分とゼラチン質なのでとてももろく弱い生き物です。ダメージがないよう水ごとそっとすくいあげます」

水流に乗って漂うクラゲをそっと、しかしすばやくキャッチ。長い触手を傷つけないよう、丁寧に扱う。

クラゲをバケツに移した後、急いで移動する飼育スタッフ。水流がないとクラゲはどんどん沈んでしまうそう。

掃除スタート

ここから本格的に掃除がスタートする。まずは約30分程度かけて排水する。水が抜けると、たしかに苔や汚れがはっきり見える。

全部排水したあとは水槽の中に飼育スタッフが入り、塩素とスポンジでゴシゴシと汚れを落としていく。水槽のアクリルを傷つけないよう注意しながら、広い水槽の中を丁寧に洗う。

サンシャイン水族館は、高層ビルの上にある水族館だ。水の重さや館内の面積など限られた条件があるなか、観覧スペースを広げるためにバックヤードはかなり狭いという。狭いなかで道具を渡したり声をかけたり、チームで清掃を進めていく。

塩素を使った清掃が終わったら、ジョウロで中和剤をかけ、水洗いをする。生き物にとって塩素は有毒なので、ここでしっかり落とさなければならない。

中和剤が効いているか、検査で確認する。落とせていなかったらもう一度水洗い作業をしなければならないので、飼育スタッフも結果が気になる様子……。

無事に中和され、ピカピカの水槽に! ここから新しい海水を注水していく作業へ。ドバドバと水が満たされていく。

癒やされすぎ空間「海月空感」

注水を待つあいだ、他のクラゲたちも見てみよう。現在サンシャイン水族館のクラゲエリア「海月空感」には5種類のクラゲがいる。どれも展示方法が異なり、さまざまなクラゲの表情を楽しめる。

横幅約14mと国内最大級のミズクラゲがいる水槽「クラゲパノラマ」。上下に設置された鏡でさらに奥行きが感じられ、まるで暗い海のなかか宇宙を漂っているかのような没入感だ。水音のような落ち着いたBGMを聞きながらミズクラゲを眺める非日常感は、ここが東京のど真ん中だと忘れてしまいそう。全面にクラゲが漂うよう、水流の調整はかなり試行錯誤を繰り返したとのこと。

「クラゲトンネル」では、「クラゲパノラマ」と同じミズクラゲをトンネル状の水槽で見られる。左右と頭上をクラゲに囲まれて、海の底にいるような気分に。

他にも、タコに似た「タコクラゲ」や、インド洋や太平洋の温かい海域に生息する「ブルージェリー」といったクラゲも。日本はアクリルガラスの技術が進んでおり、ルーペのような丸い水槽や筒状の水槽など、同じ生物でも見せ方を変え様々な様子を楽しむことができるそう。

「今、駿河湾で採取した貴重な魚『タチウオ』もいるんです。飼育が難しいので『全集中、飼育の呼吸』です」と飼育員の方が教えてくれた。まっすぐ垂直に泳ぐタチウオはまさに名前の通り太刀、いや今ならば『鬼滅の刃』の日輪刀だろうか。光に弱く皮膚も弱いため、展示は珍しいそうだ。

そうこうしているうちに、あっという間に満水に。

しかしすぐにクラゲを入れるのではなく、ひと晩かけて水温を調節する。またクラゲは体に空気が入ると沈めなくなるため、水中の空気をしっかり抜く必要もあるそう。

多彩な生き物がいる水族館だが、裏側ではそれぞれの生態に合わせて細かい調整をしていることがわかる。

そして翌朝……

水族館の朝は早い。眠い目をこすりながら、クラゲを戻す作業も見せてもらうことに。

一晩置いて、水温は26度に。今日からはアカクラゲに替わり「インドネシアシーネットル」がこの水槽に入るという。日本近海にいるアカクラゲよりも温かい海に生息するため、水温もやや高く設定する。

バックヤードからインドネシアシーネットルを移動させる。今回も水と一緒にそっとすくい上げる。

そして、大掃除をしてピカピカになった「クラゲスクリーン」水槽へクラゲを移す。

水流に乗ってふわりふわりと泳ぐインドネシアシーネットル。水槽に移したあとも、何度も様子を観察し「大丈夫そう」とチェック。

「インドネシアシーネットルは、フリルのような触手が特徴のクラゲです。優雅にたなびかせて泳ぐ姿を、きれいに掃除したクラゲスクリーン水槽越しに見てください」と杉本さん。

クラゲは原始的な生き物で、5~6億年前から生きているという説もあるそう。しかし、毎年のように新種が発見されたり、その生態は解明されていないことも多という。

「謎めいた魅力もありますし、厄介者と言われることもありますが、魚や亀の食料にもなる大事な存在です。今はコロナ禍でストレスを感じることも多いと思いますが、クラゲを見ると癒されることは科学的にも証明されています。ぜひ、癒やされに来てください」

サンシャイン水族館の大掃除は、生物に負担をかけないよう繊細な作業を行いながら、来場者によりクラゲを楽しく見てほしいという飼育スタッフの方の思いが伝わるものだった。

自分の部屋の大掃除を終わらせたら、ピカピカの水槽にいるクラゲに会いに来て癒されるのもいいかもしれない。