鷹柳田は「数字以上に派手で劇的」 元オリ監督がMVPに選出、凄み感じた7月の一打

ソフトバンク・柳田悠岐【写真:荒川祐史】

森脇浩司氏が今季のMVPを独自選出「インパクトが強かった」

ソフトバンクが4年連続の日本一に立った2020年。17日には「NPB AWARDS」が開催され、ベストナインなどシーズンを彩った“顔ぶれ”が決まる。中でも、今季の象徴となるのがMVP。記者投票でセパ1人ずつ選出されるが、専門家が選ぶと誰になるのか――。ダイエーやソフトバンク、巨人、中日でコーチを務め、オリックスでは監督を務め、来季からロッテの1軍野手総合兼内野守備コーチを担う森脇浩司氏にパ・リーグMVPを独自に選出してもらった。

昨季は西武の森友哉捕手が受賞。自らは首位打者とベストナインに輝き、チームの連覇に貢献した。今季のペナントレースは、ソフトバンクが圧倒的な強さを見せて3年ぶりの優勝。その一番の原動力として森脇氏が挙げたのは、柳田悠岐外野手だった。「年間通しての活躍となると、投手ではモイネロ、野手では柳田になるのかなと思う」とうなずく。

柳田は昨季、シーズン序盤に左足の故障で長期離脱。わずか38試合の出場にとどまった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で120試合に短縮された今季。過密日程を強いられる中で、1試合に欠場したのみで119試合に出場した。リーグ2位の打率.342、ともにリーグ3位の29本塁打、86打点をマークし、146安打で最多安打のタイトルを獲得した。

「今年はハードなシーズンだったが、好守においてコンスタントに活躍したのは、ものすごく大きい。特筆すべきはリーグトップの得点圏打率.369で、センターでの守りも非常に心強かった」

森脇氏は、数字と数字以外の両面での貢献を強調する。天井直撃の特大弾を放ったり、片膝をついて体勢を崩されながらもフェンス直撃の当たりにしたりと、相変わらずの規格外で「数字以上に劇的であり、相手に与えるインパクトが強かった」。その一方で、流れを決める分岐点となるような一打を放った印象も強烈に残っているという。

日本S第4戦でも先制された直後に逆転2ラン…要所での貢献度が顕著に

7月19日のオリックス戦(京セラドーム大阪)。0-0で迎えた7回無死二塁だった。エース山本と対峙し、フルカウントから7球目に来た真ん中高め気味のフォークを右翼方向へ。決勝点となる先制の適時二塁打を放った。

「追い込まれてからのフォークを見極め、ファールで粘った後のタイムリーだった」と振り返る場面。森脇氏は「柳田に会ったらあの打席での考え方、気持ちの変化を聞いてみたい」という。先制点を奪うため打者としてはまずはタイムリー、最低限でも進塁打は放ちたいところだった。

「右打者の右打ちはそんなに難しくない。だが、左打者は難しい。落ちるボールを引っ張りにいくと空振りになったり、バットでボールの下を切ったような内野フライになったりしかねない。私はかつて左打者には2ストライク後は進塁打のサインを取り消したりもした」と状況を分析。見た目以上に難しい局面で、進塁打どころか適時二塁打を放った姿に「あの打席のこなし方にレベルの高さを感じた。相手が豪腕山本だったのでなおさらですよね。また、ホークスがペナントを取る中で4度の分岐点となるゲームがあり、このゲームの持つ意味は大きかった」とうなった。

その試合は柳田が先制打を放った直後に中村晃の2ランで一挙3得点。8回に2点を返されたものの逃げ切った。その後、ソフトバンクは7月下旬に首位を奪取。楽天やロッテと激しい争いを繰り広げながらも、10月以降は怒涛の連勝街道を突き進み、リーグ王者に立った。

「あらためて振り返ってみると、やはり柳田が年間を通して好守の中心に居続けたことで、チームとしての安定感が生まれましたね。そういう意味では、甲斐の存在も見逃せない。ペナントが進むにつれ中村晃、グラシアルが加わり更に太い柱が出来上がった。その太い柱があってこその栗原、周東の台頭ではないだろうか」

巨人との「SMBC日本シリーズ」第4戦でも、初回に先制された直後に柳田が逆転2ラン。わずかに見えた巨人反撃の兆しを即座に断ち、4連勝で日本一に立った。最後の最後まで発揮した要所での貢献。“ギータここにあり”を証明した1年で、森脇氏も文句なしのMVP選出だった。

【動画】森脇氏が凄み感じた鷹柳田の一打! オリ山本との全球対戦の映像

森脇氏が凄み感じた鷹柳田の一打! オリ山本との全球対戦の映像【動画:パーソル パ・リーグTV】 signature

(Full-Count編集部)

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