特措法改正には両論 西村経済再生相インタビュー

 新型コロナウイルス感染症の流行が収まらない中で、法的整備の面でどんな課題があるのか。12月8日、西村康稔経済再生担当相に話を聞いた。新型コロナ特別措置法の改正には、政府の感染症対策分科会でも賛否両論があるという。(共同通信=蒔田浩平、中尾聡一郎)

インタビューに答える西村経済再生相=12月8日、中央合同庁舎8号館

 ▽ステージ4なら緊急事態宣言視野

 ―新型コロナに対しては今年春に比べて知見も増えてきました。

 いろいろな知見が蓄積されてきたのは事実だ。治療法もレムデシビル、デキサメタゾンという薬のほかに、血栓を防ぐ薬も標準的に使われているし、うつぶせで対応したり、血液検査によって比較的若くて基礎疾患がない人の重症化リスクも分かってきたりしているので、対応はかなり進んできた。東京は4、5月に院内・施設内感染が広がり、現在は比較的少なく抑えてきており、経験を積んで医療機関もかなりのことができるようになっている。スーパーコンピューターや人工知能(AI)を使ったり、経済分析だったり、いろんなことが分かってきているので、経済との両立が図れるようになっている。映画館でも制限を緩和したが、クラスターが広がったという報告は受けていないし、野球場も観客席で広がったということは出ていない。一定の根拠に基づけば両立できる。

 ―全区域の緊急事態宣言は、この冬場には考え得るのか。分科会が示した感染状況の最悪の指標はステージ4だが。

 リスクの高い人を重点的に検査すること、営業時間の短縮によって人の流れを一定程度止めることの二つは効果がある。夏の分析で分かっている。この二つを感染拡大地域では実施してもらっていて、北海道は1日の検査件数が10月半ばに740件程度だったが3千件を超えた。東京でも10月半ばに4千件くらいだったが、8千件ぐらいと倍になった。大阪も倍ぐらいだ。時短要請は、事業者の皆さんには大変厳しい状況になるが、財政的な支援をしながらやっていただくことで感染が抑えられる。あるいは、緊急事態宣言と重なるが、そういう対策を積み重ねることで日本全国一律に全ての業種、多くの業種に休んでもらうということではなく、特定の地域、特定の業種に焦点を絞った対策でかなりの効果があることも分かってきている。今のところ、これで感染拡大を抑えられないかということで対応している。

東京都内で開かれた新型コロナウイルス感染症対策分科会の初会合=7月6日

 ただステージ4になれば、病床も逼迫(ひっぱく)する。陽性者の数も抑えられず「オーバーシュート(爆発的患者急増)」となれば、つまり2~3日で倍増するような兆しが見えれば、緊急事態宣言が視野に入ってくるから、そうなればこれは判断しなければならない。もちろん専門家の意見をよく聞いて判断したい。ステージ4になる前に感染拡大を抑えていけないかと考えている。

 ▽特措法改正は検討加速

 ―新型コロナ特措法改正は検討を加速していくと表明していますが、どういう問題意識を持っていますか。

 法律の執行責任者として、どうやったら実効性が上がるのか、どういう仕組みにすればいいのか考え続けているし、法制局長官と議論もしている。論点はいくつかある。そもそも新しい感染症が出てきた時に、毎回法改正をしないといけないのか。既知の感染症には使えず、未知のものは使えるということだが、新型コロナは既知のもので直ちに使えないため法改正をした。本当に未知か既知かで分けていいのかということだ。コロナは感染力が強く、若い人はそんなに重症化しないが、高齢者はインフルエンザに比べてもきつい。こういう感染症はいちいち法改正しなくても使えるようにしておいたほうがいいのではないか。それから今回特に思うのは、緊急事態宣言の下では臨時の医療施設を造れることになっているが、本当は今の段階から臨時施設を造りたい。その他の問題意識としては、強制力をどこまで持たせるべきかということだ。どういう動きが罰則の対象となるのかをよく詰めないといけない。まさに私権の制約、基本的人権の尊重が関わる。本当は宣言の前に強い措置で抑えたいが、今は宣言後も指示・公表しかできない。

 ―菅義偉首相は分科会で議論すると会見で発言されました。年内にも始まるのでしょうか。

菅首相=12月4日、首相官邸

 法体系全体に関わることなので、法制局ともいろいろな議論しているが、全体に緩やかな法体系の中でどういう位置付けでやっていくか。首相も迅速に見直したいと言われたので、まさに加速をして議論したいが、実は分科会では、一部の委員からは強制力のある制度にという意見があり、また一部からは基本的人権の尊重の観点から慎重にという話があった。両方の議論があり、分科会にかけるまでにもう少し時間が必要かと思う。事務的にしっかり詰めさせたい。

 ▽国と地方の関係は維持

 ―国の都道府県に対する権限は、緊急事態宣言下でも総合調整がつかない時の指示にとどまっていますが、国の権限を強めるのでしょうか。それとも連携を密にしながら今まで通りでやっていくのでしょうか。

 今回の3回目の大きな流行の経験を、後でしっかり検証する。4、5月の経験、7、8月の経験から言うと、国が大きな方向性を示し、知事が病床も感染状況も一番よく分かっており、どの範囲でどれだけのことをやらなければいけないという判断をされている。その間、感染や病床の状況は頻繁にやりとりしている。特に大阪と北海道は感染がひどかったので毎日何度も電話して、事務的にも緊密にやり取りをしている。その結果「GoTo」の一時停止や時短の判断は、知事が適切に判断できるよう私の立場でサポートする。これは政府の調整権限だが、この春から夏にかけての経験で言うと、結果として知事のリーダーシップや緊密な連携で感染を抑えてこられたので、つまり強制的な命令や罰則がなくやれてきて、互いに経験を積んでいる。いろいろなことで意思疎通を図り、かなりの成果を上げた。今回の11、12月の流行をどう抑えるかも、やりとりしながら次につなげていきたい。大きな方向性としては、国と地方の関係のこの枠組みは今の段階では維持していいのではないか。つまり国が大きな方向性を示しながら、知事が最後、いろいろな措置を取る部分で責任をもってやっていく。互いの立場で責任を果たしていく。

「ロックダウン」の言葉懸念 西村経済再生相インタビュー

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