「47歳で住宅ローン3600万借入、60歳で完済したい」離婚男性の第二の人生プラン

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、45歳、会社員の男性。離婚して、養育費の負担もある中、新たな住まいの購入を考える相談者。60歳までにローンを完済することは可能でしょうか。FPの渡邊裕介氏がお答えします。

離婚して独り身になったが養育費負担も大きい。また、結婚時代に住んでいた家の売却でローン残債を消すために貯蓄も0になってしまいました。現在、賃貸マンションに住んでいますが、老後のことも考え分譲マンションを契約したものの住宅ローンをこの年から抱えることに不安があり、定年(60歳)までに完済したいと考えています。毎月の収支は赤字で、現在はボーナスで補填しています。

【相談者プロフィール】

・男性、45歳、会社員、独身(離婚)

・子ども:3人(18歳、17歳、16歳)

・同居家族について:一人暮らし

・住居の形態:賃貸

・毎月の世帯の手取り金額:36万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:220万円

・毎月の世帯の支出の目安:42万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:9万円

・食費:5万円

・水道光熱費:1万円

・教育費:0円

・保険料:1万円

・通信費:1万円

・車両費:5万円

・お小遣い:5万円

・その他:15万円【養育費:15万円/月(2021年12月まで)、以後10万円/月(2026年3月まで)、以後5万円/月(2027年3月まで)】

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:1万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:60万円

・現在の貯蓄総額:0円

・現在の投資総額:70万円

・現在の負債総額:150万円(親戚から分譲マンション購入手付金として借入し、ボーナスで毎回50万円返済)

・退職金:一時金1,000万円。DC:1,500万円

・住宅ローン:開始予定2022年2月、物件購入価格4,100万円、借入額3,600万円、返済期間32年、金利は変動(今のところ0.45%程度)


渡邊:こんにちは。ファイナンシャルプランナーの渡邊です。今回は、養育費を抱えた方の住宅購入ローン返済のご相談です。

まず、4,100万円の物件で約1年後に3,600万円の借入とのことですが、500万円ほどの頭金はどのように準備するご予定でしょうか。購入手付金も親戚から借りているので、その返済も必要です。今回は、いただいた情報をもとに3,600万年の住宅ローンを組んだ場合で考えますが、実際はそのあたりも整理して進めましょう。

目標からライフプランを考える

では、今後の生活設計をしていく上で、何を考えて行けば良いのかについて、整理してみましょう。経済的な目標は大きく4つです。

〇養育費の支払い
〇親戚への返済
〇住宅ローンの返済
〇老後資金準備

養育費と親戚への返済は必ず必要な資金です。合計1,110万円ほどをしっかりと確保した上で、ローンの返済や老後資金準備が必要です。現状、家計の中でそれなりの負担にはなっていますが、ご自身の収入の中から確保することが出来ています。安定して収入が続くのであれば、そこまで気にする必要はなさそうです。

無理な繰り上げ返済のしすぎに注意

住宅ローンの返済計画を考える時に、ライフプランに合わせた返済を検討していく必要があります。ローンを抱えると「借金なので早く返さなきゃ」と考える人も少なくありませんが、あまり頑張って繰上げ返済をし過ぎると、他の経済的な支出が必要な時に、資金不足になってしまうこともあります。返済目標時期を決め、それに向けて、その他の経済的な目標とのバランスを考えながら返済計画を立てましょう。

ご相談者の場合、特に住宅購入して初めの数年は、親戚からの貸付金の返済や、お子さまの養育費の支払い負担の割合が大きいです。手元資金が無い中で、あまり大きな繰上げ返済をしていくと、手元資金が無いため、何かアクシデントが起こってしまうと対応出来ません。
現在、親戚への返済50万円と、養育費15万/月がある中で、年間貯蓄が60万円出来ています。収入や生活費が変わらない前提だと、段階的ではありますが、最終的には今よりも230万円貯蓄が増やせ、約300万円の貯蓄が出来る計算となります。

借入年齢47歳で借入金額3,600万、変動金利0.45%返済期間32年とすると、月々の返済が約10万円となります。そこに管理費・修繕積立金・固定資産税で年間40万円程掛かるとすると、今の住居費よりも約50万円負担が増えるので、実質年間貯蓄は、250万円/年ほどになります。

これらを踏まえて、60歳で住宅ローンを完済するためには、どういったペースで返済をしていけば良いか考えてみましょう。

シミュレーション結果、老後までやりくりできる?

仮に変動金利で金利が変わらなかったと仮定すると、一番下のお子様の養育費が終わる7年後のタイミングから、年間150万円の繰上げ返済を継続的に実施していくと、60歳のタイミングで約1000万円の一括返済をするとちょうどローンが完済できる計算となります。

60歳時点の退職一時金1,000万で一括返済することは可能です。このようにシミュレーションを作成すると、無理に借入当初から繰上げ返済をしなくても、十分60歳で完済する余地があることが分かります。

また、年間150万円の繰上げ返済であれば、返済しても貯蓄に回せる資金も残るので、それらを老後に向けて準備が出来ます。退職一時金をローン返済に利用したとしても、DC1,500万と、そこまでの貯蓄があれば、リタイア後ひとりの生活であれば、何とかやりくりはしていけそうです。

万が一の時の備えも忘れずに

ただし、これらはあくまで健康で今の収入が続いた上での試算となります。病気やケガなどで、思わぬ支出や、収入が減ってしまうリスクもあります。現在加入している保険が、それらのリスクをカバーしているのかどうかをチェックする必要はあります。今回、住宅購入をすると、万が一の時にローンの返済が必要なくなる団体信用生命に加入することになります。場合によっては、現在加入している死亡保障を減らすことができ、その分をガンなど大きな病気になった場合の収入減に備えることも必要となってきます。その時の状況に合わせて、ムリ・ムダのない適正な保障を準備していきましょう。

いかがでしょうか。将来に対する不安というのは、先行きが見えないことに対する不安です。ライフプランシミュレーションを作成し、しっかりと計画立てて準備をすれば、日々の生活に安心が生まれ、理想の生活に近づけます。

養育費や住宅ローンの返済など、準備しなければいけないことだけでなく、ぜひリタイア後にどのような生活をしたいかなど、これからの長い人生をどう充実して過ごすのかについても考えると、前向きな貯蓄計画に繋がります。

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