柳ヶ浦高→独立L徳島から1年で西武からドラフト7位で指名された上間永遠
プロ野球は本格的なオフシーズンに突入した。今シーズンは3位に終わった埼玉西武ライオンズだが、新人選手を迎え来シーズンの巻き返しに期待がかかる。19年ドラフトで入団し、ルーキーイヤーを終えた選手を紹介しているが、8回目は上間永遠投手だ。
子どものころ、草野球をやっていた祖父の試合をよく見に行っており、物心がついた時からキャッチボールをしていたという。肩が強かったため小学4年生から投手になり、中学生の時にはコルトリーグ全国大会で準優勝を果たした。高校は地元沖縄ではなく、大分の柳ヶ浦高に進学。決め手となったのは、元南海ホークス内野手で、ダイエーでコーチや2軍監督を歴任した定岡智秋氏が監督を務めていたことだ。
「クラブチームの関係者が定岡監督と出身校が同じでした。定岡監督は元プロ野球選手。プロに近づくためには、プロを経験した人に教えてもらうのが自分にとって一番いいと思いました」
高校では食生活を見直して体重を15キロ増やし、2年夏にはそれまで130キロ前半だった球速が144キロに上がったが、3年夏は大分県大会決勝で敗れ、甲子園出場を逃した。その後、プロ志望届を提出したが指名はなく、独立リーグの徳島インディゴソックスに進んだ。独立リーグを選んだのは、NPBへの近道だと考えたからだ。
「レベルが高いところでやりたいという思いがあり、社会人に行こうと考えていましたが、独立リーグは1年でNPBに行ける。定岡監督は柳ヶ浦の監督なる前に独立リーグの高知ファイティングドッグスで監督をやられていたことがあり、NPBに近いところはどこか一緒に考えて、1年で行ける独立リーグ、その中で投手の育成評価が高い徳島に行くのがいいんじゃないかという結論になりました」
徳島からは、同僚の伊藤翔投手が17年に自身と同じく高卒1年目で3位指名を掴んだほか、19年に8位で西武入りした岸潤一郎外野手や増田大輝内野手(巨人)など、多くの選手がNPB入りを果たしている。徳島にはNPBを目指し、大学や社会人から経験豊富な選手が集まっていた。その中でプレーすることで意識が変わったという。
「キャッチャーと合わない時は、自分が首を振って投げたい球を投げています」
「高校生の頃は多少コースが甘くても大丈夫だろうという気持ちがありましたが、徳島ではちょっと甘く入ると打たれてしまい、高校までとは違いました。どの球種でもストライクが取れるという自分の自信があるところは変えず、1球1球を大切にしようと思いました」
140キロ後半の直球と精度の良い変化球に加え、気持ちを表に出さず、どんな状況でも淡々と投球を続けるマウンド度胸で、昨年8月に行われた巨人3軍との交流戦では6回10奪三振無失点と好投し、集まったスカウト陣にアピール。さらに防御率1.40で最優秀防御率のタイトルを獲得した。そして目標としていた最短1年で西武からドラフト7位指名を勝ち取った。
「肘の怪我もあって、正直呼ばれるか不安でずっとドキドキしながら見ていました。育成でも指名があればと思っていたので、自分ではまさかの支配下でした。ほっとしました」
今シーズンは2軍で9試合に登板。1軍での登板機会はなかったが、NPBのマウンドでも自分のスタイルを貫いている。
「理由はないのですが、投げていると次の球が頭にぱっと出てくる。バッターのタイミングや様子を見て『次の球はこれ』っていうのが勝手に出てくるんです。キャッチャーと合わない時は、自分が首を振って投げたい球を投げています。自分で決めた球で打たれるなら、相手のバッターが上だったと思える。中途半端な気持ちは嫌なんです」
ルーキーイヤーを終え、1年間戦っていく体力と身体の強さをつけることが大事だと感じたという。そして「上間なら大丈夫だろうと思ってもらえる、チームを支えられるピッチャーになりたい」と目標を掲げた。度胸満点の19歳が、今後どんな成長を遂げるのか。楽しみだ。(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)