芥川賞候補に選ばれた尾崎世界観の創作活動の原点

4人組バンド・クリープハイプの尾崎世界観が文芸誌「新潮」12月号で発表した「母影(おもかげ)」が、「第164回芥川龍之介賞」の候補作に選出された。選考会は来年1月20日に開かれる。

尾崎は、12年にメジャーデビューしたロックバンド・クリープハイプのボーカル・ギター担当として活動しながら作家活動も並行。16年に小説「祐介」で作家デビュー。その後も著書「苦汁100%」「苦汁200%」「泣きたくなるほど嬉しい日々に」などを上梓し、作家としても注目を集めていた。

候補作は、母子家庭で育ち、学校に友達がおらず、放課後は母親が働く店ですごしている小学校低学年の女の子を主人公にした物語。

各メディアによると、尾崎は「候補になったと知った時、喜びを通り越してなぜか怒りが湧いてきました。今までの悔しさや情けなさの全部が、一気に声になって気がついたら叫んでいました。新型コロナの影響でライブもできない中で、やっと心から大きな声を出せました」とコメントしたという。

高校在籍中からバンドを始め、工場やコンビニ、製本所などで生計を立てながら音楽を続けたが、製本所時代が創作活動の原点だったようだ。「本人がインタビューで語ったところによると、製本所のバイト時代、尾崎は本を読みあさり、そこで出会った数多くの小説が彼のルーツとなった。敬愛するパンクロッカー出身の小説家・町田康の作品に出会ったのもその頃。尾崎が小説『祐介』を書いていたのは、バンドが解散の危機を迎えていたタイミング。それを書いて内包していたいろんなものを吐き出し、バンドは解散せずに済んだという」(音楽ライター)

シンガー・ソングライターのあいみょんとの熱愛が報じられているが、尾崎の才能にほれたことは想像に難くない。

参考

https://twitter.com/ozakisekaikan/status/1339675671010787329

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