巨大魚屋・角上魚類の秘密を解く!関東圏の人々が高速道路を使って買いに来るワケとは 

東京、埼玉、千葉、神奈川、群馬、長野、新潟に22店舗を展開する巨大魚屋、角上魚類。いずれの店舗も都心部にはないため知らない人は全く知らないお店ですが、一度角上魚類で買い物をするとスーパーでは魚を買えなくなってしまうほど。中には遠方から高速道路を使って角上魚類に通い詰める人もいるそうです。

なぜ、それほどまでに角上魚類が人々の心を掴んで離さないのでしょうか。それは魚の鮮度の良さ、価格の良さ、独自の仕入れ・流通によって実現する旬の珍しい魚の陳列にあります。

今回は「巨大魚屋・角上魚類の秘密を解く!」と題し、2回に分けて同店の中身と秘密について深く迫っていきたいと思います。


22店舗の年間売り上げの総額は破格の350億円!

「角上魚類」と聞くと、魚屋であることが容易に想像つきながらも、独特の語感がまず引っかかります。「魚の角上」でもなく「角上商店」でもなく「角上『魚類』」。肉の小売店やスーパーに置き換えれば「ハナマサ肉類」「ダイエー肉類」というような語感になるわけで、どこか無骨でB to B的な印象を覚えます。

しかし、角上魚類は完全なるB to C業態であり、冒頭の通り全国のスーパーに負けないほどのサービスを行うチェーンです。1976年の設立以来、営業を続けるごとに業績は右肩上がりに伸び続け、2019年度はついに年間売り上げ350億円を突破。22店舗の数字をザックリ平均化すれば、1店舗につき年間で15億円以上、月で1億2千万円以上を売り上げている計算です。

角上魚類で扱う魚の価格は総じてスーパーなどの小売市場よりも安価である一方、できる限り鮮度を守り丁寧なサービスが行われています。薄利多売で消費者にとって理想的な店であると言えます。

試しに刺身を例に見てみましょう。時期にもよって値段は変わるものの取材時は冬が旬のブリ、アジ、イカとまぐろの盛り合わせが580円(税別)。中トロが入ったマグロ尽くしが680円(税別)。いずれも厚切りの12切以上が入っておりスーパーはもちろん、回転寿司などの相場と見合わせてみても安いことがわかります。

本マグロだけのセット。スーパーではあり得ない値段です

1匹100円台からの丸物の魚も「お勧め調理」用に無料で身卸し

角上魚類の本拠地は、新潟県寺泊港にあります。地元で水揚げされた魚はもちろん、新潟市内の漁協、東京・豊洲それぞれに集まる新鮮な魚を各店に納品・販売することから、角上魚類では丸物(おろしていない状態)の状態の魚が多く売られているのも特徴です。

定番の鯛、サンマ、アジ、ブリといった魚に混じって、イシモチ、カナガシラ、れんこ鯛、的鯛、ホウボウといった一般的なスーパーではなかなか見つけられない魚も多く取り扱っています。そして、いずれも1匹100円台からで、どれだけ安い魚であってもお勧めの調理用にその場で無料で身下ろししてくれます。

混雑状況にもよりますが、身下ろしが終わるまでおおむね10~15分。この間も、店内の様々な食材、スーパーでは見かけない珍しい魚を見て回ることができるため、全く退屈しません。

これらの魚は毎日の仕入れにより、種類も値段も変わります。仮に角上魚類に毎日通ったとしても、毎回違うラインナップを覗くことができるのも同店の面白さだと思います。

いずれの魚も店頭スタッフが親切にお客さんに解説

寿司、総菜も新鮮で大人気

これらの鮮魚と同等に人気なのが寿司です。冷凍の魚を使う回転寿司よりは値段が張るものの、角上魚類では前述のように鮮度の良い魚をその場でさばいて寿司にすることが大半のため、一般的な寿司店と同等かそれ以上の味を楽しめます。

例を挙げると中トロ、ブリ、イクラ、帆立、甘海老、鯛ほか高級魚ばかりを揃えた10貫の握りセットが1000円(税別)。ブリやマグロを巻き、仕上げにイクラを乗せた海鮮太巻が650円(税別)。この他にも低価格にこだわった寿司も複数あり、消費者の懐事情に合わせて買い物をすることができます。

また、鮮度の良い魚を扱うのは惣菜も同様です。生で仕入れたものを調理し、販売するので、一般的なスーパーの惣菜と比べれば格段に味が違うことがわかります。さらに、スーパーの惣菜よりも価格が安く、買いやすいのも特徴です。

例を挙げると、生のブラックタイガーを使った海老フライが1本150円(税別)。海老を含む旬の魚ばかりを天ぷらにして乗せた天丼が580円(税別)。食堂、レストランにも負けない味と価格帯のものが並んでいます。

にぎり寿司の一例。さらに安いセットも複数あります

良いこと尽くしの角上魚類のカラクリを探るため新潟へ!

角上魚類の鮮度の良さと低価格。「どうしてこれを実現できるのか」「右肩上がりを続け、年間売り上げ350億円にも達するには、何かカラクリがあるのではないか」という疑問が浮かびます。

これだけ巨大な鮮魚小売の業態は他に例を見ないもので、一体どういう仕組みなのか。興味を抱いた筆者は、角上魚類の本拠地・新潟県寺泊港に向かいました。角上魚類の創立者であり、現会長の柳下浩三氏を訪ねるためです。この様子は本企画の後編でご紹介いたします。お楽しみに!

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