トップ選手は100スイング中3回… 12球団で空振りしにくい打者orしやすい打者は?

日本ハムの近藤健介(左)と中日の大島洋平【写真:荒川祐史】

セイバーメトリクスの指標「Z-Contact%」「SwStr%」で検証

ソフトバンクの4年連続日本一で幕を閉じた2020年のプロ野球。タイトル獲得者らが表彰される「NPBアワード」も終わり、今季のMVPには巨人の菅野智之投手、ソフトバンクの柳田悠岐外野手が選出された。

その2020年のプロ野球で最も“空振りしにくい打者”と“空振りしやすい打者”は誰だったのだろうか? 野球を科学的に分析するセイバーメトリクスの指標からそれを探ってみたい。検証のデータには、セイバーメトリクスの指標を用いて分析などを行う株式会社DELTAのデータを参照した。

空振りしやすい打者、空振りしにくい打者はコンタクト率と空振り率で明らかになる。その中でも、ストライクゾーン内のボールに対してスイングし、バットに当てた率を表す「Z-Contact%」と、全スイングのうちの空振り率を表す「SwStr%」を用いて検証してみたい。

ストライクゾーン内で最も空振りしにくいのは中日の大島

○Z-Contact%(300打席超の打者に限る)
・ベスト5
1 大島洋平(中日)95.5%
2 宮崎敏郎(DeNA)95.2%
3 吉田正尚(オリックス)94.9%
4 鈴木大地(楽天)94.6%
5 近本光司(阪神)94.0%

・ワースト5
1 スパンジェンバーグ(西武)73.0%
2 柳田悠岐(ソフトバンク)78.2%
3 浅村栄斗(楽天)78.2%
4 西浦直亨(ヤクルト)78.8%
5 ロメロ(楽天)79.1%

ゾーン内コンタクトで12球団トップの数字を残したのが中日の大島だ。Z-Contact%は実に95.5%をマークした。ストライクゾーンに来たボールに対して100スイングすると、そのうち95球はバットに当てることになる。相手投手としてはゾーン内でバットに空を斬らせることが最も難しかった打者になる。

DeNAの宮崎も95.2%で、大島と僅差の2位に。パ・リーグで首位打者となったオリックスの吉田正が3位で94.9%。力強いスイングが持ち味の吉田正だが、コンタクト率も驚異の高さを誇る。4位には楽天の鈴木、5位には阪神の近本が入った。

逆にゾーン内コンタクトが最も低くなったのは西武のスパンジェンバーグ。Z-Cotact率は73%となり、ゾーン内で空振りを奪いやすい打者という結果に。スパンジェンバーグに続くのはソフトバンクの柳田。豪快なスイングを持ち味とする柳田のZ-Contact率は78.2%となった。

スイング全体で空振りしにくいのは日本ハム近藤とソフトバンク中村晃

○SwStr%(300打席以上の打者に限る)
ベスト5
1 近藤健介(日本ハム)3.8%
2 中村晃(ソフトバンク)3.9%
2 大島洋平(中日)3.9%
4 吉田正尚(オリックス)4.0%
5 福田周平(オリックス)4.3%

ワースト5
1 スパンジェンバーグ(西武)18.2%
2 大田泰示(日本ハム)16.7%
3 ロメロ(楽天)14.6%
4 柳田悠岐(ソフトバンク)13.9%
5 ソト(DeNA)13.9%

ストライク球、ボール球問わず全スイングの中での空振り率を示すSwStr%で見ると、12球団ナンバーワンになるのは日本ハムの近藤に。全スイングのうち、空振りはわずか3.8%という結果になっている。近藤はボール球へのスイング率(O-Swing%)も両リーグ通じて3位の16.5%と低く、ボール球には手を出しにくくスイングさせても空振りしにくいという厄介な打者だということが分かる。

近藤に次ぐのはソフトバンクの中村晃で3.9%。中村晃はZ-Contact%は6位の93.6%だが、O-Swing%は11位の22.5%となり、それなりにボール球にも手を出している。それでいて空振りが少なく、ボール球でさえもバットに当てる技術を持っていると言える。現にContact%は90.4%で大島と並んで全選手トップになる。

全スイングに対しての空振り率が最も高かったのは、こちらも西武のスパンジェンバーグ。SwStr%は18.2%で5から6スイングに1度、空振りするとされる。これに日本ハムの大田の16.7%、ロメロの14.6%、柳田とソトの13.9%と続いていく。(Full-Count編集部 データ提供:DELTA)

データ提供:DELTA
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』も運営する。

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