筆頭は燕奥川、ロッテ佐々木朗は? 専門家がブレークを期待する有望株リスト

ヤクルトの奥川恭伸(左)とロッテの佐々木朗希【写真:荒川祐史】

現役生活21年の野口寿浩氏が期待する有望株、阪神井上は「甲子園の浜風に乗せて本塁打を量産できる」

今年のプロ野球は新型コロナウイルスの感染拡大で、レギュラーシーズンが120試合に削減されるなど異常事態に見舞われたが、2021年へ向けて成長が期待される若手たちはしっかり芽吹いていた。現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜(現DeNA)で通算21年間も捕手として活躍した野口寿浩氏が推奨するプロスペクト(期待の若手)は──。

「まず奥川は外せません」と野口氏。昨夏の甲子園で星稜高を準優勝に導き、ドラフト1位で入団した奥川恭伸投手は、プロ1年目の今季、2月の新人合同自主トレで右肘に炎症を起こして出遅れたものの、2軍のイースタン・リーグでは7試合に登板し1勝1敗、防御率1.83。自己最速タイの154キロを計測するなど調子を上げた。ただ、唯一の1軍登板となった11月10日の広島戦では、先発して2回9安打5失点KOを喫し、敗戦投手となった。

「1軍デビュー戦が異例の11月のナイターになってしまったのは気の毒。寒過ぎました」と野口氏は奥川を擁護。「来年は開幕からバンバン投げてほしい」と期待する。野口氏にとって古巣の1つであるヤクルトは、今季のチーム防御率が2年連続リーグワーストの4.61だったのに加え、10勝8敗と気を吐いたエース小川が国内FA権を行使し、移籍する可能性もある。19歳の奥川に過度の負担をかけるわけにはいかないが、「チームはとにかくピッチャーが足りない。救世主になってほしい」と願わずにいられない。

セ・リーグの打者では、昨夏の甲子園で奥川を攻略し全国制覇を果たした履正社高の右の大砲で、ドラフト2位で阪神入りした井上広大外野手の名前を真っ先に挙げた。1年目にして10月14日に1軍昇格を果たすと、同21日に本拠地・甲子園で行われたヤクルト戦で、プロ初安打を適時二塁打で飾り、お立ち台にも上がった。今季1軍で放ったヒットはこれ1本に終わった(打率.091)が、スター性は十分うかがわせた。

「阪神は甲子園を本拠地とする以上、特有の浜風に乗せてレフトへホームランを量産できる右の長距離砲が、主軸を務めることが望ましい。大山とともにチームを牽引する打者になってほしい」と野口氏は言う。

中日石川は「将来の4番候補。期待したくなる雰囲気を漂わせている」

奥川、井上と同い年の19歳で、中日ドラフト1位の石川昂弥内野手も、7月に1軍昇格し、14試合で36打数8安打(打率.222)と爪痕を残した。「将来の4番候補。打席に立った時に、期待したくなる雰囲気を漂わせている。奥川、井上もそうだが、スケールが大きい」と野口氏は太鼓判を押す。

パ・リーグでお気に入りは、これまた高卒1年目の楽天・黒川史陽内野手だ。9月4日に初めて1軍に昇格した際、「1軍に上がるためではなく、1軍で活躍するためにやってきた」というコメントを聞いて、野口氏は「大したものだ」と鮮烈な印象を受けたという。10試合に出場し、14打数2安打(打率.143)2打点。智弁和歌山高時代に通算34本塁打を放った右投げ左打ちのスラッガーで、「内野ならどこでも守れる。楽天のレギュラーは鈴木大、浅村、小深田、茂木とそろっていて、壁は分厚いが、来季浅村をセカンドからファーストへ追いやるくらいの心意気でやってほしい」と野口氏の期待は大きい。

日本ハム2年目の20歳・野村佑希内野手も、来季の正三塁手候補として足掛かりを築き、「来季は中田、近藤、大田、渡邉の中核に割って入ってもおかしくない」(野口氏)。ソフトバンクの21歳、リチャード内野手はファームのウエスタン・リーグで本塁打、打点の2冠を獲得した。

投手では、オリックスの19歳左腕・宮城大弥投手、右のサイドスローで球速が150キロに迫る“和製・林昌勇”こと西武・松岡洸希投手、野口氏にとって千葉・習志野高の後輩にあたるロッテの20歳右腕・古谷拓郎投手らに、来季躍進の可能性があると見ている。プロ1年目は体作り優先で1、2軍を通じ公式戦登板なしに終わった最速163キロ右腕、佐々木朗希投手については「いつ、どんなスタイルでベールを脱ぐのか気になる」と言及するにとどめた。

今季は各球団にとってもファンにとっても厳しい1年だったが、来季期待の若手たちが一気に花を咲かせるための準備期間だったとすれば、我慢した甲斐があるというものだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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