漁業の救世主

 長崎県にとって身近な漁業は今、大きく変わろうとしている。今月1日に改正漁業法が施行され、漁獲上限を定める魚種が増えることになりそうだ。資源を守りつつ、漁業に携わる人を増やす狙いという▲確かに魚は減り、漁業はもうからなくなり、若い人から敬遠されている。70年ぶりとなる改正は、悪循環を断ち切れるか▲佐世保市のベンチャー企業「オーシャンソリューションテクノロジー」は人工知能(AI)を用いて、この課題に取り組んでいる。手書きしていた操業日誌の代わりに、漁師に漁場や魚種、漁獲量をタブレットに入力してもらう。集まった膨大な“経験値”をAIが分析。アプリでお薦めの漁場を提案する▲漁師からは「そんな簡単なもんじゃないよ」といった声が聞こえてきそう。それでも、一人前の漁師になるまで時間がかかることを考えれば、初心者には心強いだろう▲さらに、燃料代がかからない近場で、市場に少ない魚種を狙って“値崩れ”を防ぐ。取り過ぎを防いで、資源回復につなげる▲デジタル化を進める国からも補助金などの後押しを受け、和歌山県や福岡県宗像市、宮崎県の約70隻で試験操業を続けている。「魚の奪い合いをやめる」と水上陽介社長(39)。本県の小さな会社の挑戦が、日本の漁業を救う-。そんな夢が膨らむ。(明)

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