「勝負の3週間」首相はグルメ三昧

コロナ第3波の猛威の中、会食40回超

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内田恭司

共同通信記者

内田恭司

共同通信記者

東京都生まれ。1991年に入社し、千葉支局、社会部、岐阜支局を経て、99年4月から2018年12月まで政治部。首相官邸、外務省、自民党、野党などを担当し、政局や憲法、外交・安全保障を中心に取材。散歩とジムと温泉が息抜き。

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 新型コロナウイルス対策の「勝負の3週間」の期間中、菅義偉首相が多人数で会食し、世論の強い批判を受けている。首相は「真摯に反省している」と述べたが、この間に行った外食は実に40回以上。多くが少人数の会合だったとはいえ、国民に感染防止の徹底を呼び掛けたにしては、あまりにも「おいしい生活」が過ぎるのではないか。「第3波」は猛威を振るったまま。こんなことでは、コロナ対策が後手に回ったとの観は否めない。(共同通信=内田恭司)

国産牛の高級ステーキ(本文中のレストランとは関係ありません)

 ▽身内からも苦言

 菅首相が批判を浴びたのは2020年12月14日夜の「ステーキ会食」だ。この日は全国の感染者数が計1683人と、1週間ぶりに2000人を下回ったことで気が楽になったのか、首相は午後8時50分に東京・銀座のステーキ店「銀座ひらやま」に到着。自民党の二階俊博幹事長、林幹雄幹事長代理らの会食に合流した。

 他の出席者は、プロ野球ソフトバンクの王貞治球団会長や、俳優の杉良太郎氏、政治評論家の森田実氏、タレントのみのもんた氏らの面々。政府は5人以上の会食は控えるよう国民に求めていたが、首相を含めて8人程度が出席していた。

 ちなみに、銀座ひらやまはステーキの超有名店だ。飲食店情報サイト「食べログ」の2020年「ブロンズ」賞を獲得、夜の予算は「50000円~59999円」となっている。

 16日になり、自民党内からも「襟を正さなければならない」(佐藤勉総務会長)と苦言が出ると、首相は夕方、官邸で報道各社のインタビューに応じ、「国民の誤解を招くという意味においては真摯(しんし)に反省している」と述べた。

新型コロナウイルス感染症対策本部終了後、記者団の取材に応じる菅首相。この後、首相は会食をはしごした=12月14日夜、首相官邸

 しかし、インタビューが終わるとその足で、官邸近くのザ・キャピトルホテル東急の日本料理店「水簾」で、地元・横浜の横浜銀行頭取らと会食。さらに日比谷公園内のフランス料理店「日比谷パレス」に転じ、読売新聞や日本テレビの幹部らとの懇談に興じた。

 ▽和洋中の名店ずらり

 こうなると、菅首相が「勝負の3週間」に、いったいどれだけ外食をしていたのか、知りたくなるのが人情だ。首相がいつ、誰と会ったかを詳細に報じている「首相動静」で調べてみたところ、ホテルの宴会場での会食を含め、約45回にもなった。

 約45回は朝、昼、晩すべてを集計した。うち秘書官相手が10回、秘書官以外が35回。35回の内、夜のみを抽出すると17回だった。

 計10回の首相秘書官との打ち合わせを兼ねた朝食や夕食は、ザ・キャピトルホテル東急のレストラン「ORIGAMI」や、虎ノ門のホテル「The Okura Tokyo」のレストラン「オーキッド」などだった。

 がぜん気になるのは、政府が注意喚起している、アルコールが伴いやすい夜の会食。内輪である秘書官以外の相手のとの17回は、やはり多いのではないか。

 どこに行ったか、店の名前を並べてみよう。

 11月27日▽ホテル「The Okura Tokyo」の日本料理店「山里」

 12月2日▽西麻布の焼き肉店「叙々苑游玄亭西麻布本館」

 12月3日▽赤坂の日本料理店「松川」

 12月3日▽東麻布の中国料理店「富麗華」

 12月5日▽新橋の第一ホテル東京の焼き鳥店「伊勢廣」

 12月7日▽紀尾井町のホテル「ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町」のレストラン「WASYOKU 蒼天 SOUTEN」

 12月8日▽虎ノ門のホテル「アンダーズ東京」のレストラン「ザ タヴァン グリル&ラウンジ」

 12月9日▽再び「WASYOKU 蒼天 SOUTEN」

 12月10日▽内幸町の帝国ホテルの宴会場「牡丹の間」

 12月11日▽ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町のレストラン「All Day Dining OASIS GARDEN」

 12月11日▽赤坂の中国料理店「Wakiya 迎賓茶樓」

 こんなラインナップになっている。

 感染拡大が止まらず、いよいよ危機的状況となっていく14日からの3日間は、ラストスパートをかけたかのように計6回の会食に出席。いずれの日も「二階建て」だった。14日は後述するホテルニューオータニ宴会場と、冒頭紹介した「銀座ひらやま」を、15日は赤坂のイタリア料理店「VaccaRossa」六本木のアークヒルズ仙石山森タワーの「ステーキそらしお」を、16日は前述の、日本料理店「水簾」フランス料理店「日比谷パレス」を、それぞれはしごした。

 朝と昼は、「ORIGAMI」をはじめ、定番になっているザ・キャピトルホテル東急のレストランが多い。しかし夜は、世の中の美食家もうなるような名店や高級店ばかり。そもそも菅首相は酒を飲まず、出席者らによると、食べ物にもあまり手を付けなかったという。とはいえ、グルメ三昧と言われても仕方がない「勝負の3週間」だった。

 ▽無派閥、ブレーン、マスコミ

 それでは、秘書官との食事を除いた約35回は、どのような相手との会食だったのか。大まかに分類すれば、首相に近い自民党無派閥の中堅・若手議員、首相のブレーンである有識者や企業経営者、それとマスコミ幹部だ。

 無派閥議員とは5、6回に分け、坂井学官房副長官を含めて計13、4人と会食。牧原秀樹、山本朋広、大串正樹、田中英之、藤井比早之、田中良生(以上衆院)、園田修光、島村大、柘植芳文(以上参院)の各氏らで、多くが党総裁選に向けて菅首相に出馬を要請した無派閥中堅・若手議員グループのメンバーだ。

 首相として初めて臨んだ臨時国会が閉幕し、自身を支えてくれた一番の身内を呼び集め、飲食をしながら結束を確認したといったところか。

 首相ブレーンは、サントリーホールディングスの新浪剛史社長、熊谷亮丸内閣官房参与、JR東海の山田佳臣相談役、ユーグレナの出雲充社長らだ。「スガノミクス」を推進するため、改めていろいろと意見を聞いたのだろう。

ホテルニューオータニ

 出雲氏との会食は14日、紀尾井町のホテルニューオータニの宴会場「edoROOM」だったとはいえ、合わせて10数人の企業経営者らが集っていた。政府が神経をとがらす「5人」を大きく超えている。しかも首相はこの後に、批判を浴びた銀座でのステーキ会合へ駆け付けたのだ。

 マスコミ関係者も多い。フジテレビの会長と社長、日本経済新聞の会長と社長、共同通信や時事通信出身の著名な政治ジャーナリストに、名前の知られた経済ジャーナリスト、ビジネス雑誌の出版社社長らが、それぞれ首相とテーブルを囲んでいた。

 折しもコロナの感染拡大に加え、東京地検特捜部による安倍晋三前首相周辺や吉川貴盛元農相への捜査進展などで政権が大きく揺らぎ、報道各社による内閣支持率が急落したタイミングだ。大所高所からの助言を仰いだのだろうが、マスコミ側もこういう非常にナイーブな局面において、どういう名目で最高権力者と会食したのだろうか。

 ▽「危機意識の共有を」

 菅首相は官房長官時代、多くのマスコミ関係者と数え切れないほどの会食を重ね、「徹底的なメディアコントロールをしてきた」(立憲民主党幹部)と指摘されてきた。今回も首相にとっては、官房長官時代の延長線上ではないか。

 首相は、12月16日に厳しく批判されてから、危機管理能力をやっと発揮したのか、17、18日はいずれも夜日程を入れず、赤坂の議員宿舎に直帰している。

 加藤勝信官房長官は18日の記者会見で「いろいろな皆さんから話を聞くのは首相にとって大切だ」と慇懃無礼に首相を擁護した。

 逆に小池百合子東京都知事は「国民と危機意識を共有する必要がある」と歯切れ良く言い切った。

加藤勝信官房長官(左)と小池百合子東京都知事

 リーダーに対する言葉としては、どちらが胸にすとんと落ちるだろうか。

 (おわり)