コロナ禍で冷蔵庫観が変化?最新製品に見る各メーカーの狙いとは

新型コロナウイルス感染拡大防止の影響で、まとめ買いや3食の食事づくりなどの機会が増えました。そのため、人々が食材を保存する冷蔵庫に求める機能も大きく変わりつつあります。

そうした状況を踏まえ、各メーカーでは冷蔵庫の新製品を続々発表。コロナ禍における冷蔵庫のニーズや新発売の冷蔵庫について掘り下げます。


冷蔵庫の収納量が増加

エステー株式会社が今年6月、20~60代の既婚女性603名を対象に行った調査結果によると、1週間のうち3食の食事作りを毎日行っている人の割合はコロナ前が44.1%だったのに対して、コロナ後は55.2%と大きく増加しました。

合わせて、冷蔵庫内における食品の収納量を「8割以上」と回答した人は20.6%から35.3%にまで上昇。巣ごもり需要によって大量の食品を保存したいニーズが大きく高まっていることがうかがえます。

そのため、今の家庭用冷蔵庫は収納量が大きなポイントになっています。また量が増えるにつれて悩みどころとなってくるのが、何をどこにどのくらい適切に保存できるのかという収納や整理の観点です。

食材の整理整頓のしやすさにこだわった東芝

その二点を意識したのが、東芝が2021年2月に新発売する内容量356Lの大型冷蔵庫「GR-S36SV」(想定価格は税込20万円前後)、「GR-S36SC」(想定価格は税込18万円前後)です。冷凍室が3段あるのが特徴で、上段には氷や生鮮食品、中段にはホームフリージングする食品や使いかけの冷凍食品、深さのある下段には500㎖ペットボトルや冷凍食品を縦に収納できるような仕様になっています。

また、ドアポケットには業界初となるスライド式「フリードアポケット」を採用。高さが異なる調味料や飲み物などさまざまな食品に合わせ、ドアポケットの高さを6段階にまで変えて収納方法をアレンジできます。

扉から外さなくても片手で位置を変えられるので、片手で食品を持った状態でも調整可能。チューブタイプのワサビやカラシ、瓶のジャムやドレッシングなどさまざまな規格がある調味料にも自在に対応することで、「冷蔵庫に入れたかったのに入らない」という日々のストレスを解消してくれることが期待されます。

ハイアールは高機能ながら低価格を実現

一方、ハイアールでは、各家庭に応じた大容量タイプの冷蔵庫が低価格帯で実現。10月から新発売されています。

326Lの「JR-NF326A」(想定価格は税別7万3千円前後)と294リットル「JR-NF294A」(想定価格は税別7万千円前後)。それぞれ少人数世帯と一人暮らし世帯が余裕を持って使える容量となっています。

意識したのは、食材ストックに欠かせない冷凍室に対する細かなニーズです。冷蔵室のすぐ下には、-20℃~5℃まで1℃単位で温度調節が可能な変温室「セレクトゾーン」を搭載。ライフスタイルに合わせて「冷凍(-18℃)」「ソフト冷凍(-8℃)」「パーシャル(-3℃近辺)」「チルド(0℃近辺)」「冷蔵(2〜5℃)」の5つの温度帯への設定が可能に。

また、一番下にある冷凍室は買い物かご約3.8個分が入る127リットルの大容量。さらに2ドアタイプなので冷凍室も冷蔵室と同じように、ドアを開けただけでどこに何が入っているのか把握できる分かりやすさを追求しました。

冷凍庫が引き出しタイプだと、上段や下段を何度も開閉する手間が増え、奥に収納した長期間冷凍したままの食材を忘れがちになることも。ハイアールでは、食材に応じた冷凍のカスタムや食材の出し入れなど、冷凍室の便利機能を意識していることが伺えます。

パナソニックは“野菜室が真ん中”で勝負

また、パナソニックは10月30日に「NR-F516MEX」(想定価格、税別35万円前後)と「NR-F486MEX」(想定価格、税別34万円前後)を新発売。前者は513リットル、後者は483リットル。夫婦2人暮らしだけでなく、4人家族や5人家族でも十分に食材を保存できる大容量冷蔵庫です。

左:「NR-F486MEX」、右:「NR-F516MEX」(パナソニックの発表会より)

特筆すべき機能は、約1週間野菜の新鮮保存を可能にした「Wシャキシャキ野菜室」。この野菜室を一番下ではなく真ん中に持ってくることで、野菜の出し入れのしやすさを一番の特徴として据えました。

野菜室が一番下にある冷蔵庫は今では主流になっていますが、毎日野菜室を開閉していると上段の引き出しの奥に注意がいかなくなることも。その結果、もう食べられなくなったきゅうりやニンジンを引き出しの奥に見つけてしまうことも珍しくありません。また重たいキャベツ1玉や大袋に入った玉ねぎの出し入れも、身体的な負担にもなります。

週に1度まとめて作り置きをする人や冷凍食品を多用する人は、冷凍室が真ん中のほうが使いやすいでしょう。一方で1日に数回料理をする人や毎日新鮮な野菜を食べたい人は、野菜室が真ん中のほうが圧倒的に使いやすそうです。

卵20個も余裕

さらに、パナソニックの新製品では「パーシャル/はやうま冷凍 切替室」を新搭載。これは微凍結状態で約1週間保存できるパーシャル機能と、冷凍状態で長期保存できる冷凍室機能を自由に切り替えられるシステムです。どちらも過去製品にあった人気機能でしたが、「どちらかではなくどちらの機能も欲しい」という声が多かったことから、自由に使える切替室として採用したそう。

「パーシャル」と「はやうま冷凍」が切り替えられる(同)

自身で冷蔵庫内をカスタマイズできるという点はこの他にもこだわっており、たとえばストッカー部分はフリーケース2つと卵トレイ1つを完備することで、自由にアレンジできるようになっています。

担当者は「フリーケースに卵10個をパックごと入れ、さらに卵トレイを使えば最大20個の卵が収納可能になります。また、ビールやチューハイの缶とおつまみをまとめて入れたりジャムやバター、ヨーグルトなど朝必要なものをまとめて朝食セットにしたりすると、ストッカーごと食卓に並べられて非常に便利です」とアピールしていました。

まとめ買いやつくり置きをする頻度が増えれば増えるほど、食品を保存する冷蔵庫に求める理想やニーズは細かいものになっていっています。各メーカーの新製品から見えてきたのは、収納量と冷凍室、整理整頓や出し入れのしやすさ、そしてこだわりの部分を自分でカスタマイズできるという点でした。冷蔵庫各メーカーがしのぎを削る新しい冷蔵庫に、コロナかが続く今後もますます注目が高まりそうです。

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