【横浜銀行100年】変革の先に(1)物差しは利益より「地域のため」

報徳二宮神社宮司の草山明久(右)と打ち合わせる横浜銀行小田原支店長の山本博文=小田原市の同神社

 横浜銀行が16日に創立100周年を迎える。変革を重ねた歴史をひもとき、未来への展望を描く。

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 あらためて見たふるさとに往時の姿はなかった。2018年。横浜銀行(横浜市西区)の小田原支店長に着任した山本博文(55)は、生まれ育った街をくまなく歩き、その衰退ぶりを肌で感じ取った。

 地域経済を活気づけるために一役買えないか。そう考えあぐねていると、同じ思いを抱く報徳二宮神社の宮司、草山明久(52)から相談が寄せられた。

 「実はこんな場所があるんです」

 小田原城の目と鼻の先にある神社は、400メートルほど離れた国道1号沿いの一角に倉庫を保有していた。敷地面積は700平方メートル弱。草山はここを拠点に、地域へ恩返しがしたいという。山本は即座に協力を買って出た。

 足かけ2年で練り上げた構想は、平屋建ての多機能施設「箱根口ガレージ報徳広場」として来年2月にも結実する。その仕組みは、神社がまつる二宮尊徳の教え「経済と道徳の両立」に沿うものだ。

 運営を担う神社の関連会社はまず、見栄えが悪く流通に適さない小田原特産のかんきつ類を購入。地場の野菜や水産品とともに、昼に営むレストランや店舗で観光客らに販売する。得られた収益は、夜に開く「地域食堂」で子どもや高齢者に還元していく。

 施設は高齢世帯を対象とした生活必需品の配送サービスや、子ども向けの「経済教室」も展開。最低限の利潤を上げながら地域貢献に取り組み、小田原城を訪れる観光客の回遊性向上も目指す。

 横浜銀はファンドによる出資で開業資金を支援するほか、経営の持続に向けて無担保での融資も決めた。草山は「利益はほぼ出ないが理念に共感してもらえた」と感謝する。

 山本は言う。

 「『もうかるか』だけが物差しじゃない。地域に必要な挑戦なのかを見極め、後押ししていく」

 横浜銀の経営は地域経済の浮沈に左右される。施設の活動それ自体は小さいが、あちこちに種をまかなければ成長の芽は出ない。こうした施策は「はまぎん 10年後プロジェクト」と位置付けられ、県内各地で広がりを見せる。

 山本はあるとき、小田原の住民に「浜銀は変わった」と声を掛けられたという。地域に根差した姿勢が、これまで以上に浸透していると実感した。

 「これこそ地銀のあるべき姿。われわれはずっと、この場所で生きていくんだから」

 =敬称略

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