<社説>21年度沖縄関係予算 基地を絡めた分断許すな

 沖縄関係予算が政治の駆け引き材料にされることを危惧する。基地を絡めた沖縄社会の分断策ではないかという疑念を抱かざるを得ない。 政府は総額3010億円とする2021年度沖縄関係予算を閣議決定した。18年度から4年連続同額だが、国の裁量権を一層強化する内容となった。県や市町村が増額を求めていた沖縄振興一括交付金は20年度当初予算から33億円減の981億円で、制度創設以降初めて1千億円を割り込み、過去最低を更新した。

 一括交付金の減額は県内のインフラ整備の大幅な遅れなど県民生活に打撃を与えている。水道や学校などの施設整備に遅れが出ている市町村もある。住民生活の需要にそぐわない交付金減額からは、予算の主導権を握ろうという国の意図さえ透けて見える。沖縄振興特別措置法にある「沖縄の自主性を尊重する」との原点に立ち返った予算編成にすべきだ。

 一括交付金は、地方自治体の裁量で使途を決められる地方交付金として12年に沖縄振興特別措置法で定められた。国が使途を決める「ひも付き」補助金に代わる交付金で、県や各市町村の実情に合った事業に予算を振り向け、沖縄の自立度を高める狙いがある。

 12年度の初年度は1575億円を計上し、14年度に1759億円の最高額に達した。16年度まで1600億円台で推移したが、17年度は1358億円に大幅減額された。18年度以降、沖縄関係予算総額は維持されているが、一括交付金は減り続けている。

 一方、「一括交付金の補完」と位置付け、国が直接市町村に投下する沖縄振興特定事業推進費は、前年当初予算比30億円増の85億円だった。増額幅は一括交付金の減額分とほぼ同額だ。この推進費が創設された19年度は30億円、20年度は55億円で大幅な増額が続いている。予算に対する県の裁量幅が狭まるのと同時に、県と市町村の間で分断が進む可能性をはらむ。

 背景には普天間移設問題を巡る国と県の対立があるとみられる。一括交付金は、辺野古新基地建設に反対する翁長県政発足後初の予算編成となった15年度以降、同じく新基地建設に反対する玉城県政を含め7年連続で減額された。

 政府は沖縄関係予算と基地問題のリンクを表向きには否定している。しかし、菅義偉首相は官房長官時代に「結果的にはリンクしている」との発言を繰り返してきた。予算を通じて県の裁量権を狭めようとする国の姿勢は、新基地にあらがう県政への締め付けのようにも見える。

 現行の沖縄振興計画は21年度に期限切れを迎える。今後、基地問題を絡めて、政府が新たな沖縄振興策を駆け引き材料にすることへの懸念も拭えない。県は自主性を発揮できるよう国と粘り強く交渉する必要がある。基地問題と振興策を絡めた沖縄社会の分断を許してはならない。

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