「恥ずかしい思い、娘にさせたくない」 学校健診で上半身裸は必要? 紙面に反響「スムーズに診察できる」指摘も

学校健診で上半身裸の必要はあるのか

 京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」に投稿があった「学校の定期健康診断で子どもの意に反して上半身裸にさせる必要があるのか」という保護者の疑問を受け、脱衣を巡る現状と課題を11月21日の紙面で取り上げたところ、読者から多くの意見が寄せられた。ほとんどが投稿者への共感だったが、「児童生徒はスムーズな健診に協力する必要がある」と指摘する声もあった。

■「自分の体と心の事は自分で決めてよい」

 京都市北区の母親(36)の長女は中学校で男性医師による健診を上半身裸で受けたのを機に、体調不良でも病院に行くのを嫌がるようになった。母親は脱がせないでほしいと養護教諭に抗議したが、「ほかの生徒も裸なので」と言われたという。

 現在通う府立高でも脱衣を求められたため学校での健診を断り、中学1年の次女と女医の診療所を自費で受診した。医師は2人ともキャミソールなどを着用させたまま診察し、母親は「学校の対応に、より疑問が湧いてきた」と話す。

 城陽市の母親(42)は「自分が学生の時、非常に恥ずかしかった。娘たちには同じ思いをさせたくない」と打ち明ける。「子どもの頃は先生や大人が絶対的な存在だった。仕方がなく裸を受け入れてきたが、嫌だと声を上げてよかったのだと記事を読んで感じた。裸になるかどうかで症状や虐待の発見にどの程度差が出るのか、医師側の意見をもっと知りたい」

 千葉県の会社員高田愛子さんは十数年前、高校の内科検診で裸になるのを嫌がっていると、看護師に笑いながら服をまくられた。ショックで養護教諭に相談したら、「そんなことを言うのはあなただけ。医師がいやらしい目で見ているとでも思っているの」と言われて深く傷ついたという。

 現在は「安心できる学校健診を考える会」を立ち上げ、学校健診では強制的に裸にさせず、健診の方法などを十分に説明した上で本人の意思を尊重するよう文部科学省に求める署名をネットで募っている。「自分の体と心の事は自分で決めてよい、というメッセージを子どもたちに伝えたい」と強調する。

■医療関係者からは異論も

 一方、健診センターに勤務経験があり、小学6年の娘がいる伏見区の女性看護師は(41)は「限られた時間で多くの子どもを診る必要があるので、スムーズな診察が大切だ。保護者や子どもは健診の目的と方法を理解し、協力する必要があると思う」とする。ただ裸にさせなくても体操着のみ着用し、必要な範囲でめくるなどの方法で診察できるのではないかとして、「国が診察方法のガイドラインを示すべきでは」と話す。

 このほかにも次のような意見が寄せられた。

 「脱衣が必要と頭で分かっていても、医師に裸を見せるのは気持ち悪いという思いが拭えなかった」(木津川市、40歳女性)

 「裸にさせる理由について娘の学校からまともな説明を受けたことがない。思春期の子どもに服を脱がせるという行為は、大人が思っている以上にデリケートな問題だ」(40代母親)

 「自分が小学校高学年の時、健診の様子を男性の担任がニヤニヤしながら見ていたのを思い出し、ぞっとする。ただ知人の娘は裸の健診で脊柱側弯(そくわん)症が発覚したので、脱衣が必要な部分もあるだろう。ならばデリケートな場所を隠せる検査着の開発など、大人が当たり前の配慮をするべきでは」(浜松市、47歳母親)

■学校や自治体 分かれる判断

健診での脱衣を巡る学校の対応は次の通り。

・児童生徒を上半身裸にして実施するかどうかは、学校や自治体で判断が分かれる。

・京都市立学校を除く京都府内の公立学校で、男女とも裸で実施するのは小学校で7割、中学校で3割。京都市教育委員会は上半身全脱衣で実施するよう各校に通知。

・学校医は裸で診察する理由を「主に背骨のゆがみを見る検査で見逃しのない診察をするため」と説明。

・文部科学省の担当者の見解は「診察に必要な範囲で肌を露出させる」

・児童生徒を上半身裸にして実施するかどうかは、学校や自治体で判断が分かれる。

 

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