生活室内の微細なホコリをHEPAフィルター空気清浄ファンが効率的に除去

2020年12月22日
帝京大学

生活室内の微細なホコリを
HEPAフィルター空気清浄ファンが効率的に除去
~くらしの空気を安全に保つ、生活空間の微細なホコリとその対策~

帝京大学大学院医学研究科医真菌学・宇宙環境医学教授の槇村浩一と同大学院公衆衛生学研究科講師の津田洋子らは、生活環境における微細なホコリをHEPAフィルター付き空気清浄機ファンが効率的に除去することを明らかにしました。

【本研究の背景】
人が密集する空間では、ウイルスなど微生物の感染症を防ぐために効果的な換気が必要です。一方で、屋外の空気が汚れている場合や、換気によって室温が保てない場合には適切な空気清浄機の使用が推奨されており、室内空気環境、とりわけ有害な微生物などの粒子(ホコリ)の評価と清浄化への関心は現在一層高まっています。ところが、これまでに行われた空気中のホコリとその除去に関する研究は特殊な実験室で実施されたものに限られていました。そこで、槇村教授と津田講師らの研究グループは、くらしの空気を安全に保つために生活空間の微細なホコリとその対策に関する一連の研究を開始しました。

【本研究の概要と意義】
今回明らかになったのは、都内老人ホーム個室内の微細なホコリをパーティクルカウンター(注1)で測定すると共に、市販のHEPAフィルター(注2)付き空気清浄ファン(以下、清浄ファンと呼ぶ)を1時間だけ使用した場合にみられた清浄化の効果です。
ホコリの測定に当たっては、施設入居者や職員の方々に通常通りの生活と介護を行っていただくよう依頼し、空調と24時間の機械換気も通常通り使用しました。個室としては、締め切った部屋(閉窓閉扉)・清浄ファンを1時間使用した部屋・通常の扇風機を1時間使用した部屋の3部屋を用意し、ホコリを測定する前後に5分間の換気を行いました。結果は以下に示す通りです。

この測定では、空気清浄ファンおよび扇風機を使用する前後の換気によって、「①:室内の空気中の微細なホコリの濃度が2倍に上昇するが、換気を止めれば元の水準に回復すること」、「②:締め切った部屋と通常の扇風機を使用した部屋の結果は同じだが、清浄ファンを使用した部屋だけは微細なホコリの濃度が著しく低下(80%減少)すること」が示されました。
人が密集する空間で、ウイルスなど微生物の感染症を防ぐためには効果的な換気が必要ですが、換気によって室温が保てない場合にはHEPAフィルター付きの適切な空気清浄機の使用が厚生労働省から推奨されています(注3)。ウイルスの大きさは0.1μm程度ですが、実際には痰などに包まれるため空気中の大きさは状況によってもっと大きな粒子となることが知られていますので、本研究で測定した0.3μm以上の粒子と同じような動きとなると考えられます。
本研究は実際の生活環境によって、この推奨の有効性を示したものです。また、これに加えて屋外の空気が汚れている場合(注4)には、換気によって室内空気環境が悪くなる可能性も示されました。室内での感染を憂慮する人の割合や密の度合いを勘案して、換気と清浄ファンなどの使い分けを検討する必要もありそうです。

【用語とリンク】
(注1)パーティクルカウンター:空気中のホコリなどの微粒子を計数する計測器
(注2)HEPAフィルター:空気中に含まれる微細なホコリを取り除くために利用する高性能のフィルター
(注3)厚生労働省:冬場における「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気について(令和2年11月27日). https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000698849.pdf
(注4)東京都環境局:大気環境測定結果について http://www.taiki.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/taikikankyo/realtime/index.html

本研究は速報(短報)として以下の雑誌に掲載されました。
槇村浩一、小森綾、藤崎竜一、田村俊、佐藤一朗、アレシャフニ ムハンマドマハディ、槇村美保、山西千晶、松田浩幸、津田洋子:浮遊粒子ならびに浮遊真菌に対する空気清浄ファン短時間稼動の効果:生活環境のモデルとしての老人ホーム居室における予備的評価.都市有害生物管理:10 巻 2 号(2020年12月20日発行)URL:http://www.upm-urbanpest.com/paper.html
本研究は、ダイソン株式会社と共同で実施しました。

なお、この研究の詳細は改めて国際誌に報告される予定です。
本研究は、社会福祉法人寿栄会 特別養護老人ホーム・加賀さくらの杜の職員各位ならびに利用者の皆様の協力により行われました。また、槇村教授は、社会福祉法人 枚方療育園による寄付講座:帝京大学医学部 療育環境下AMR真菌症管理研究寄付講座に所属しています。