<社説>北部訓練場返還4年 実効性ある軽減策策定を

 日米両政府が掲げる基地負担軽減策のまやかしが改めて浮き彫りとなった。県民の意思を踏まえ、実効性ある負担軽減策を策定すべきだ。 米軍北部訓練場の過半返還に伴う東村高江への米軍のヘリコプター発着場(ヘリパッド)建設によって、米軍機が発する80デシベル以上(パチンコ店内に相当)の騒音測定回数が最大5.4倍に増加したことが分かった。ヘリパッド建設は日米特別行動委員会(SACO)合意による措置で、訓練場返還の条件だった。

 日米両政府が負担軽減の目玉とした北部訓練場の過半が2016年12月に返還されて4年になるが、地域住民の生活環境は悪化しているのである。県民はうわべだけの負担軽減策を受け入れるわけにはいかない。

 訓練場の返還式典に官房長官として出席した菅義偉首相は「本土復帰後、最大規模で、県内の米軍専用施設の約2割が返還され、沖縄の負担軽減に大きく寄与すると考えている」と発言した。しかし、ここにもまやかしがあった。

 確かに北部訓練場の面積7513ヘクタールのうち4010ヘクタールが返還され、国内にある米軍専用施設・区域のうち沖縄が抱える割合は約74%から70%に下がった。ところが返還地の上空に設定されている制限空域は縮小されず、米軍機の訓練が続いているのだ。当時のケネディ駐日米大使を招き、「沖縄の負担軽減」を誇った返還式典は何だったのか。県民だましも甚だしいと言わざるを得ない。

 このことが国会で明らかになったのは返還から約2年4カ月を経た2019年4月のことである。その際、当時の原田憲治防衛副大臣は「速やかに制限空域の変更が実現するよう取り組む」と答弁した。しかし、騒音の発生頻度を見ても副大臣の答弁が履行されたとは言いがたい。

 それだけではない。返還された土地から訓練弾やドラム缶などの米軍の廃棄物が次々と見つかっている。放射性物質コバルト60を含む電子部品も見つかった。このような状況では世界自然遺産の登録は困難ではないか。日米地位協定によって米国は返還地の原状回復義務を負っていない。不利益を被るのは地元自治体や住民である。

 結局、SACO合意によって実現した「本土復帰後、最大規模の返還」である北部訓練場過半返還の内実は、住民の負担を放置したままの基地温存策であり、訓練継続策でしかなかった。県民が求めているのは負担軽減を伴う米軍基地の整理縮小である。

 そもそも、施設の県内移設を条件付けたSACO合意の形成過程に沖縄側が参画する機会はなかったのである。玉城デニー知事は現在、日米両政府と県の三者による協議機関「SACWO(サコワ)」の設置を求めている。このような新たな協議の場で、北部訓練場訓練激化の問題も解決していくしかない。

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