iPhone11全モデル搭載で話題!4K/8K、5Gで需要増の有機ELとはどんな技術なのか

この秋に発売になったApple(米)のスマホ「iPhone12」の販売が好調なようです。iPhone12はAppleで初の5G対応スマホで、4眼カメラなど新たな技術が搭載されたほか、コンパクトな「mini」も登場した点などが注目されています。

ディスプレイに関しては、2019年発売の「iPhone11」では上位モデルのみであった有機ELパネルをiPhone12では全モデル搭載になったことも話題です。この有機ELとはいったいどういった技術なのでしょうか。


現在の主流、液晶ディスプレイの弱点とは

現在、スマホやテレビで最も普及しているのは液晶ディスプレイです。スマホでは6割以上、テレビにおいてはほぼ全てが現状では液晶ディスプレイ方式と推察されます。

液晶ディスプレイは電圧を加えて液晶粒子の向きを変え、これによりバックライト光の透過/遮断をコントロールする仕組みです。簡単に言うと、微細なシャッターを開閉させることにより画素を表示するというものです。この画素数は8kテレビでは横が約8千、縦が約4千にもなりますので、一つ一つの画素は非常に細かくなります。

液晶ディスプレイの弱点は、シャッターの間から光漏れを生じやすいため深みのある黒表現が難しいことや、シャッターの開閉に多少の時間がかかるため残像が残りやすいことが挙げられます。

4K、5Gで採用増が見込まれる有機EL

これに対し有機ELは、有機発光ダイオード(OLED)と呼ばれる自発光型の素子が自ら青・赤・緑の光を発する仕組みです。OLEDへの電気供給のオン・オフによりデジタル的に画素表示を切り替えるため、応答速度が速く残像が残らないことや、光漏れを生じにくいという強みがあります。

今後、動画視聴の機会が増加すると考えられる5G対応スマホや、高精細な4k/8k放送に対応したテレビなどでは有機ELの採用が増えていくと見込まれています。最初に触れたiPhone12の全モデルでの有機EL採用はまさにこれに沿った動きと言えるでしょう。

韓国メーカーが圧倒的

それでは有機ELで強いのはどういった企業でしょうか。実は有機ELのような最先端のディスプレイは韓国メーカーが圧倒的に強いポジションを握っています。

例えばスマホ用の有機ELではサムスンディスプレイが強く、iPhone12の有機ELもサムスンディスプレイが多くを供給しています。テレビ用の有機ELではLGディスプレイが強く、ソニーなど日本のテレビメーカーにもテレビ用の有機ELパネルを供給しています。

一方、有機ELに使用される材料の分野では日本の化学メーカーが頑張っています。技術的難易度の高い材料として青色光を発する青色発光材料が挙げられますが、この分野では出光興産や保土谷化学工業といった化学メーカーが圧倒的なシェアを握っています。

特に保土谷化学工業はサムスンディスプレイ向けでここ数年シェアを伸ばしてきています。今後、5Gサービスの広がりに伴う5G対応スマホの需要拡大は保土谷化学工業にとり追い風になると考えられます。

サムスンの新方式有機ELで日本企業にも注目

テレビ分野ではサムスンディスプレイが開発中の新方式有機ELが注目されます。

これは「QD-OLED」と呼ばれる技術で、サムスンディスプレイは日本円にして約1兆円を投資しテレビ向けに量産を行っていく考えです。QD-OLEDは青色発光材料のみを使用しますので、保土谷化学工業のような青色発光材料のサプライヤーにとり大きな貢献をもたらす可能性があります。

もちろんディスプレイには赤色や緑色の光も必要ですが、QD-OLEDで青色の光を赤色や緑色に変換するのが量子ドット(QD)と呼ばれるナノ粒子です。

このナノ粒子の原料を供給するとみられるのが日本化学工業です。同社はリン化合物など無機化学製品を得意とするメーカーですが、量子ドットの原料にもリン化合物が使用されますので、恩恵を受ける可能性が高いと考えられます。

有機ELは折り曲げ可能なフレキシブル性をもたすことができ、フォルダブルやローラブルなど新たな機能を持ったディスプレイにも展開可能です。有機ELは2021年における注目デバイスであり、上述の化学メーカーの注目度も高まると期待しています。

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