長崎この1年2020<2> 緊急事態宣言と休校 命、学び守るため試行錯誤

休校になり児童の姿がなくなった教室=4月22日、長崎市立諏訪小

 全国各地で新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた2月28日、文部科学省は各都道府県教育委員会に一斉休校を要請した。これを受け県内でも3月2日を皮切りに小中学校や高校などが24日まで休校になった。
 学校関係者は保護者への連絡や在宅学習の手配に奔走し、「準備期間がほとんどないまま前例のない事態だった」と混乱した状況を振り返る。卒業を控えた児童生徒は、お別れ会が中止になったり卒業式が規模縮小になったりするなど節目の行事に影響を受けた。学童保育施設は開所時間を延長するなどして対応したが、人材不足が浮き彫りに。室内では密を避けるための対策に追われた。
 春休みを終えた4月6日、県内多くの公立小中学校が再開した。始業式では手指の消毒を徹底し、窓を開けた体育館で児童生徒は間隔を空けて座った。子どもたちにとって新学期のスタートは「新たな生活様式」の始まりでもあった。
 しかし学校再開直後の7日、政府は東京や大阪など7都府県に新型コロナ特措法に基づく緊急事態宣言を発令した。16日には本県を含む全国に対象が拡大され、県は県立学校を22日から5月6日まで再び休校にすることを決定。各市町の学校もこれに応じ、県内すべての公立小中高校など約560校が22日までに休校に入った。
 学校再開から約2週間で2度目の休校。長崎市内のある小学校長は、子どもの姿がなくなった教室を眺め「子どもを守るため仕方ない」とため息をついた。一方で、学習機会を確保しようと私立中高を中心に学校と自宅をつないだオンライン授業の導入も加速した。
 休校で生じた学習の遅れを取り戻すため、各校は夏休みを短縮。県教委は来春の公立高入試の出題範囲を縮小するなど教育現場は異例ずくめの1年だった。教育関係者は「休校の判断が正しかったかどうかは分からない。ただ子どもの命と学びを守るため、常に試行錯誤を重ねている」。コロナ禍の中、教員らの奮闘は続く。

 


© 株式会社長崎新聞社