2020長崎スポーツこの1年<2> 九州地区高校野球 大崎初V 地域とともに急成長

九州地区高校野球大会で初優勝した大崎。閉会式後、ダイヤモンド一周する選手たち=長崎市、県営ビッグNスタジアム

 高校野球界に旋風が巻き起こった。来春の選抜出場校の選考資料となる九州地区大会(10、11月・長崎)で、西海市大島町の大崎が初優勝。全校生徒114人の島の学校が春夏通じて初の甲子園出場を確実にした。スポーツによる地域振興や県内の競技力、競争力向上につながる結果だった。
 九州以外の全国各地区大会の優勝校は、甲子園常連の私立校。大崎は唯一、公立校で頂点に立った。ベンチ入り20人は全員が県内出身。他県の私立校を次々に倒していく姿は「長崎でもやれる」ことを示すと同時に、県内のライバル校にも大きな刺激を与えた。
 過去に清峰や佐世保実を甲子園に導いた清水央彦監督が2018年に就任したのを機に、チームは急速に成長した。教えを請う選手が島外からも集まり、寝食をともにしながら厳しい練習を重ねた。その熱意に行政や島民も呼応。合宿所や練習場の整備、農水産物の差し入れ、球場での応援などが続き、後援会員数も膨れ上がっていった。
 そんな地域の夢を、チームはわずか3年弱で現実にした。エース坂本安司を軸に無駄な走者を出さず、テンポのいい守備で流れに乗った。先行されても決して崩れず、勝負強く逆転した攻撃陣も高く評価された。昨季1年間、県内無敗を達成しながら、コロナ禍で全国への道を閉ざされた3年生への思いも原動力となっていた。
 これで大崎は昨季から主要公式戦32連勝(県内28連勝)中。現在は来年3月5日までの対外試合禁止期間に入り、年間で最も苦しい冬のトレーニングに励んでいる。1月29日に“春の便り”が届き、さらにパワーアップしてきたチームが、初の甲子園でどんな輝きを放つだろうか。
 もう一つの注目は「どこが大崎にストップをかけるか」という点。「勝ち続けさせるわけにはいかない」-。そんな言葉を県内の多くの指導者が口にしている。新たな強豪の誕生、好敵手の増加は、間違いなく県の競技レベルの底上げにつながるだろう。
 選抜が終わった後、大崎が快進撃を続けるのか、他校が雪辱を果たすのか。例年以上の好勝負が繰り広げられる1年を期待したい。


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