在庫が“腐る”?投資のプロが「飲食よりアパレルのほうが厳しい」と思うワケ

「現在、新型コロナウイルスによって世界が混乱していますが、実は株式投資にとってはチャンスも次々と舞い込んでいます」こう語るのは、『Yahoo! ファイナンス』で運営されていた「株価予想」で、39連勝という快挙を成し遂げた“相場の福の神”の愛称で親しまれる藤本誠之さん。投資のプロはなぜ「飲食よりアパレルのほうが厳しい」と思うのでしょうか? 著書『株は社長で選べ!コロナ継続・収束問わず確実に勝ち続けるたった一つの株式投資術』から抜粋して紹介します。


人材派遣会社も厳しい理由

在庫を持たなければならず、その在庫が傷んでいくビジネスは厳しいです。いわゆる〝アパレル〞は流行があるので、去年の服はなかなか売れません。コロナ禍のせいで買い物に人が街に出てこないと、おしゃれもしないわけで。

アパレルは厳しいかもしれません。言い方はちょっと悪いですが、在庫が〝腐っちゃう〞ので、実際に上場企業のレナウンが破綻に追い込まれました。未上場の会社も撤退などのニュースが出ています。

基本的な考え方として、在庫を持っていて、在庫が腐る可能性がある企業は厳しいでしょう。コロナ禍で二つの業界が苦しいのではと思っていて、一つは在庫を持つアパレル。もう一つは人材派遣業です。

人材派遣会社は、スタッフを正社員として雇って、その人を派遣して、派遣先給料との差額を抜くというスキーム。一度きりの紹介ならいいけども、社員で雇って派遣する雇用形態だと、正社員なのに派遣先がない間も、ずっと給料を支払わなければならなくて、コストがかかります。雇用が回復してくるまで、厳しいことになりそうです。

一方、飲食は確かにきついと思います。さらに、企業体力も違うので、上場企業より未上場企業のほうが厳しいと思います。でも飲食は、人間は飲み食いし続けないと死んでしまいますし(一方で衣服は、今持っているものを着回し続ければいい)、テイクアウトや宅配の比率を高めてイートインの割合を減らす傾向になるでしょうから、需要はなくなりません。アパレルよりは在庫を残すことは少ないでしょう。

上場している飲食業にプラスな面とは?

上場会社の場合、いきなりステーキのペッパーフードは業績が悪化しましたが、資金調達はできました。一つは、儲け部門であったペッパーフードをファンドに売ったから。もう一つは、新株予約権でエクイティファイナンスをしたからです。上場企業は、最後は株券を刷ればお金を調達できちゃうので、彼らはファイナンスで生き残れるチャンスがあります。

反対に、未上場の店舗出しているようなところが一番きついのではないかと思
います。もっと小規模になり、家族だけでやっているようなお店は、もともと家賃も安くて、従業員の給料もどんぶり勘定のようなところであれば、なんとか耐えきれるんじゃないかと。

また、上場企業にプラスと思われるのは、これで需給が締まるからです。体力の弱いところが淘汰されて、オーバーストア(需要より供給が過剰になるほど出店している状況)が収まります。そうすると、飲食で生き残るのは上場企業かなと。

飲食業も今後は、より機械化されていくと考えています。機械化の主なメリットは、料理のクオリティアップと、人件費の削減。上場企業になると設備投資ができるので、食品用の機械もさまざまな種類があります。

例えば吉野家では、ティーサーバーみたいなもので味噌汁を出しているんですよ。極東産機という会社がその機械を作っていて、お湯を入れて一杯ずつ味噌汁にするんです。今までは味噌汁を鍋で作ってよそっていたのが、この味噌汁の機械だと、味噌汁が1人分ずつできます。でき立てのほうがおいしいし、無駄がないので、結構機械化が進むんじゃないかと思います。

とん汁とかも作るのであれば、デリカフーズという会社が作っている途中までゆでてあるカット野菜を使って、具材をじゃかっと機械に入れて出汁と味噌を入れれば、「とん汁ができちゃった!」と。一部機械化するというスタイルも、より浸透していくのではないかなと思います。

機械とか設備投資をするには、やはり上場企業のほうが資金調達もできるので、「上場企業の飲食が倒産まで行くことはなかなかないのでは?」と楽観視しています。

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