【新型コロナ】宿泊療養者死亡、施設に全体マニュアルなし 神奈川県が不備認める

宿泊療養施設の対応などについて審議が行われた県議会厚生常任委員会=県議会会議室

 新型コロナウイルスに感染した軽症・無症状者を受け入れる神奈川県の宿泊療養施設で療養中の50代男性が急変して死亡した問題で、県が施設の全体的な運営マニュアルを作成していなかったことが23日、明らかになった。厚生労働省は都道府県などに対し療養施設のマニュアル作成を促す事務連絡をしており、県は同日の県議会厚生常任委員会で不備を認め、早急に作成する考えを示した。

 県医療危機対策本部室によると、現地の看護師や運営スタッフそれぞれのマニュアルは作成していたものの、同省が示しているような施設ごとに療養者との連絡方法や急変時の対応などについて詳細を記した全体的なマニュアルは作成していなかった。

 この日の常任委では、委員から「全体を俯瞰(ふかん)した上で自分がどういった役割を担うのかを考える必要がある。全体のマニュアルは大原則」「命を預かっているという重みを県は再認識してもらいたい」といった指摘が相次いだ。

 県の担当者らは「セクションごとのマニュアルだけでは足りなかった」「周りの動きが分かり、共通認識を持って動けるようなマニュアルの整備が必要」などと述べ、早急に作成する方針を示した。

 県は男性が死亡した事案について専門的な立場から原因を究明するとともに再発防止策などを検証するため、弁護士ら第三者による検証委員会を設置し、25日に初会合を開く。

 男性が亡くなったのは今月11日。宿泊療養施設となっている厚木市内のホテルに滞在していたが急変し、新型コロナによる急性気管支肺炎で死亡した。男性と連絡が取れなくなってからスタッフらが部屋に入るまでに時間がかかったことなどから黒岩祐治知事は「県の対応に問題があった」と謝罪している。

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