雲仙市のこれから 金澤市政3期目へ<上> 観光 新団体設立で戦略加速へ

雲仙市観光戦略のワーキンググループ会議。新しい観光団体の設立で戦略が加速するか=雲仙メモリアルホール

 雲仙市長選は現職の金澤秀三郎氏(60)が無投票3選し、2期目で手応えを感じた施策を継続しながら、大胆な改革に挑む。宿泊客の漸減傾向が続く観光業の復活、高齢化社会での地域交通施策の展望を探る。

 「今年の雲仙温泉観光は新型コロナウイルス感染拡大で大打撃を受けたが、安心安全な旅の提供を徹底し、難局を乗り切っていく」。今月15日に雲仙地獄で開かれた雲仙温泉感謝祭の神事で、雲仙温泉観光協会の宮崎高一会長はこうあいさつして、一年を締めくくった。
 県観光統計によると、2019年の同市の延べ宿泊客数は約49万9千人で10年前の8割弱に落ち込んでいる。今年は新型コロナ感染拡大による外出自粛で、誘客はさらに厳しさを増したが、同市は6月末、10年後に「6日間滞在できる雲仙」を目指す観光戦略を策定。雲仙温泉街の観光関連事業者の年間総売上(19年は約66億円)を、30年に100億円に伸ばす目標を掲げ、スタートを切った。コロナ収束後に全国で繰り広げられる誘客競争も見据え、受け入れ環境の充実を急いでいる。
 3期目を迎える金澤市長は、戦略の目標達成のため、実施母体となる観光団体の立ち上げを主導し、早ければ来年4月にも準備組織をつくりたい考え。雲仙温泉、小浜温泉、神代小路などの資源を生かした観光地域づくりを目指す。同市が目指す滞在型観光を実現するには、市内にとどまらず島原半島内の観光地を周遊するスタイルが必要になるが、半島3市の観光連携の動きは停滞している。
 半島内では雲仙温泉観光協会、小浜温泉観光協会など計五つの観光団体が、業務統合などを目指す「島原半島観光一本化協議会」を17年7月に発足させたが、進展していない。観光地としての特色も歴史も、業務形態も異なる各団体が一つにまとまる筋道を立てるのが難しいからだ。
 協議が停滞する間も半島への観光客は減り続け、19年の3市の延べ宿泊者数は計約89万8千人で、ピークだった1990年の約200万人の半分以下。その中にあって、半島の宿泊客数の6割近くを占めるのが雲仙市。市内の温泉街関係者からは「観光資源が豊富な雲仙が主導して、島原半島の観光を引っ張っていくべきだ」という声が上がる。金澤市長の3期目は、市観光戦略を加速し、半島の連携も前進を図る4年間になりそうだ。


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