引き出しに眠る古い通帳ありませんか?忘れ去っていた休眠預金を解約する方法

学生時代に使っていたり、地方勤務の際に作ったりして、そのままになっている銀行口座はありませんか?また、大掃除で残高不明の古い通帳が出てきたということはないでしょうか。

このように、銀行口座に放置されているのが休眠預金です。手続きすれば戻ってきますが、時間が経過するほど休眠預金の手続きは面倒になります。思い立ったらすぐに手続きを始めることをお勧めします。

今回は休眠預金にスポットを当て、解約方法などを現役銀行員ライターが解説します。


年間約700億円も生まれている休眠預金

休眠預金とは、入出金などの動きがなく10年間放置された預金のことです。金融庁によると、毎年1200億円が一旦休眠預金になり、年内に500億円は払い戻されます。それでも残り700億円もの休眠預金が毎年生まれています。

休眠預金になると、まず銀行の特別勘定に移され、その後も動きがなかった場合には、最終的に預金保険機構へと移されます。休眠預金になってしまっても、必要な手続きをすればいつでも払い戻すことは可能です。

ちなみに預金にも時効があり、一般に銀行預金は5年で時効という解釈もあります。

しかしながら、どのような状態になると時効が適用されるのかなどは明確になっていません。現実には、何年、あるいは何十年たっても預金者本人であると証明できれば払い戻しには応じてくれるはずです。

しかし、時間が経過するほど払い戻しには手間と時間がかかってしまいます。

休眠預金は世のために使われている

2016年に「休眠預金等活用法」(正式名は「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律」)が制定されました。預金は銀行が公共的な役割を果たすための資金源として、休眠預金を広く社会に活用しよう、という趣旨で作られた法律です。

休眠預金等活用法ができたことで、休眠預金は公益活動などに使われることになります。つまり、あなたが知らないあなたの預金が、どこかで誰かの役に立っているのです。

公益活動とは、国や地方公共団体などでは対応困難な社会課題を、NPO法人など民間の担い手が解決しようという活動のことです。

具体的には、子ども及び若者の支援に係る活動として子ども食堂を運営するNPO法人、働くことが困難な人へ就業や食事等生活の支援をする団体、困難な状況に直面している地域の支援に関する活動などに使われています。

もちろん預金はあくまで預金者のものです。銀行の特別勘定となっても、あるいは預金保険機構に移されたあとでも、手続きをすれば解約できます。

休眠預金はどうやって取り戻すか

休眠預金の具体例と、取り戻す方法を説明します。よく相談を受ける3つのパターンを挙げました。

今回は通帳がある事例ですが「口座を作った記憶があるけど通帳、カードが見当らない」といった場合でも、本人確認が出来れば払い戻しは可能です。

(1)「かなり昔に親が作った古い通帳(しかも合併して今は存在しない銀行)が出てきた。どうやって解約しよう?どこに連絡すれば良いの?」

大前提ですが、預金はなくなってしまうことはありません。休眠預金等活用法で活用されたとしても、手続きすれば預金者に戻ってきます。

まずは連絡先を調べることから始めます。通帳に記載されている電話番号に連絡すれば、場合によっては現在の連絡先などをアナウンスしている場合があります。

合併、社名変更などで今は存在しない名前の銀行でも、現在引き継いでいる銀行に連絡すれば解約の方法など教えてもらえるはずです。合併後も預金は新しい銀行に引き継がれ、消滅することはありませんので、安心してください。

破綻した銀行の場合、基本的には受け皿となった銀行が窓口となります。連絡先など探すのに苦労するかも知れませんが、ネットで調べてもいいでしょう。たとえば2010年に破綻した日本振興銀行を例にすると、受け皿となったイオン銀行が現在の連絡先で、預金払い戻しなどの相談に乗ってくれます。

なお預金保険機構に連絡すれば、過去に破綻した銀行の連絡先などを教えてくれます。自分が取引している銀行に相談しても協力してもらえるかも知れません。

銀行印がなくても大丈夫

連絡先がわかれば、今度は具体的な手続きに入ります。基本的には本人がわかる確認資料(免許証など写真入り)と印鑑、通帳を持って本人が口座のある支店に出向けば解約できます。手続きした後、一定の時間はかかりますが、取引銀行に解約金が振り込まれます。もう一度通帳やカードを再発行して取引を再開することも可能です。

ちなみに、当時の銀行印が不明でも、本人が来店すれば改印しての解約が可能です。本人が確認資料を持参して来店すれば、ほとんどの銀行手続きは可能です。

しかし、遠方の銀行などで出向けないと話は変わってきます。

本人が銀行まで行けない場合はどうするか

(2)「地方勤務のとき作った銀行口座を見つけた。その銀行は今もあるが、解約したいと連絡したところ『本人が来店しなければ解約ができない』と言われた。遠くてとても行けない。どうしても本人が来店しないとダメなの?」

原則として、口座の解約は本人が出向くことが大原則です。大阪在住で銀行は北海道だとしても、来店してくださいと言われる場合が多いです。

銀行では、預金は本当の持ち主(真正な名義人と呼びます)に返す、という大原則があります。現在では新規口座作成やカードローンの申し込みなど、オンライン化が進み、来店しなくても手続きできますが、解約や払い戻しは別です。

本人が現地に行かなければならない?

これらの手続きでは、本人がその支店に出向いて面前自署(銀行員の目の前で本人が署名捺印する)するのが大原則です。本人確認を厳正にすること、間違いなく本人の意思で解約したと確認することが重要だからです。

とはいっても、ただ口座を解約するためだけに、交通費を負担してまで本人が出向かなくてはいけないのでしょうか?いくつか方法はあります。

まず、郵送で解約させてもらえないかと電話で交渉してみましょう。本人が出向く大原則ですが、少額の場合は柔軟に対応してくれるかも知れません。

また、自分が取引している銀行で「取立」という手続きをしてもらえる場合があります。これは、取引銀行に解約用紙を郵送してもらい、取引銀行から先方銀行に書類を送ってもらい、解約する方法です。

亡くなった人名義の休眠預金は?

(3)「亡くなった親名義の古い通帳が出てきた」

すでに死亡している人の預金でも、相続人に払い戻ししてもらえます。ただし、預金相続手続きはそもそも煩雑なので、これが休眠預金になると更に手間と時間がかかります。来店前に必要な書類など銀行に確認することをおすすめします。

また金額の大小にかかわらず、相続では相続税やその他公的な手続きも関係してきます。色々と自分で調べたり専門家に相談したりするのも良いでしょう。

また、親は存命でも認知症などで本人が手続きできない場合も、必要な手続きをとれば解約することは可能です。ただし、預金の解約は本人の意思を確認することが大原則です。認知症の人では意思確認がむずかしく、預金解約も困難になります。

成年後見人制度を利用すれば対応可能になりますが、費用や申請の手間、費用なども考える必要があります。最近では介護費用など必要不可欠な支払は、家族でも条件付きで払い出しに応じてくれる銀行が増えています。

2021年をめどに、認知症の預金引き出しを柔軟化する動きもありますが、まだまだ現時点では手続きが煩雑です。

銀行によって対応は大きく変わる

上記した郵送などの手続きは、すべての銀行が柔軟に対応してくれるかは未知数です。

休眠預金は大部分が1万円未満の少額で、少額だからこそ本人が忘れている場合も多いのです。1000万円や1億円の預金なら、本人でも親でも忘れる人はいないでしょう。何十年も預金取引がなかった顧客のために、経費や手間を掛けてまで解約に応じる必要はないと考える銀行もあります。

ですから、「とにかく本人が来店してください。来なければ応じられません」と押し切られる可能性もあります。そうなってしまったら、いつの日か観光旅行で行くまで我慢するか、交通費を考えて諦めるのか。残念ながらそれしかやりようはないのかもしれません。

私も遠方の銀行に休眠預金を持っているのですが、自分では以下のように考えて(言い聞かせて)納得しています。

「休眠預金等活用法で、誰かの役に立つなら、それはそれで良いかな?」

<参考 政府広報オンライン/放置したままの口座はありませんか?10年たつと「休眠預金」に>

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