弱視でも写真が撮れた!  網膜に直接投影するカメラを開発

 視力が弱かったり視野が狭かったり、見ることが困難な弱視(ロービジョン)の人たちが撮影した写真の展覧会「With My Eyes」が東京の眼鏡店「Zoff原宿店」で開かれている。見えにくいのに、なぜ撮影が可能なのか。背景には、網膜に直接レーザー光で映像を投影する新技術があった。(共同通信=中村彰)

QDレーザが開発したカメラ「RETISSA SUPER CAPTURE」

 撮影に使われたのは、半導体レーザーに特化したベンチャー企業・QDレーザ(川崎市)が開発したカメラ「RETISSA SUPER CAPTURE」。微弱なレーザー光を使い、網膜に直接映像を映し出すことができる。「人の顔や文字、遠くを見てみたいという弱視者の願いに応えました」と菅原充社長は話す。水晶体や角膜の状態にかかわらず、きれいな映像を伝えることができるという。

 弱視者5人が撮影プロジェクトに参加した。生命保険会社に勤める秋葉茂さんは神奈川・逗子の海岸で撮影に臨んだ。レンズをのぞくと、それまではぼんやりとしていた風景がクリアに飛び込んできた。「物心が付いてから見えなかったので、感動して涙が出るほどでした」と振り返る。青色が好きで、空や海の青さを切り取った。「見えるって、素晴らしいですね」

秋葉茂さんの作品

 陸上競技に取り組み、パラリンピック出場を目指す特別支援学校生の森雄太さんは、東京大会の会場となる国立競技場を撮影。ズーム機能を使うと「木目まではっきり見えた」という。学生の渡辺大貴さんは「肉眼よりも圧倒的に東京タワーがくっきりと見えて、カメラの性能を実感しました」と感想を話した。

森雄太さんの作品
渡辺大貴さんの作品

 「RETISSA SUPER CAPTURE」は現在、試作品のデモンストレーションの段階だが、2年後を目安に商品化を目指している。展覧会「With My Eyes」は1月27日まで。撮影のドキュメント映像が次のURLから視聴できる。

https://www.zoff.co.jp/shop/t/t1787/

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