長崎この1年2020<4> 大雨と台風 降り方変化、5万人避難

記録的な大雨により冠水した国道34号=7月6日、大村市久原2丁目

 記録的な大雨と台風が長崎県内を相次いで襲った。7月と9月に計4人が死亡。大雨に伴う災害死は県内で11年ぶりだった。7月6日、県内4市3町に大雨特別警報が出された。大村は1時間雨量94.5ミリ、1日の降水量357ミリ。この地点の観測史上1位となる記録的な大雨。河川が氾濫し、家屋や農地に大きな被害が出た。
 大雨特別警報の発表は県内で3年連続。雨の降り方そのものが変化している。長崎地方気象台によると、九州・山口で1時間に50ミリ以上が降った雨の年間発生回数は、1976~85年の10年が平均71.2回に対し、2010~19年の10年は平均108.4回。約1.5倍に増えた。九州各地で近年、豪雨災害が相次ぎ、激甚化している状況を裏付ける。
 7月25日には、諫早市の轟峡で遊歩道が崩落し、8歳女児と母親が亡くなった。
 9月には台風9号、10号が相次いで接近。特に10号は、接近すれば初めてとなる「特別警報級」として最大級の警戒が呼び掛けられた。その結果、各自治体が開設した避難所には5万人超が詰め掛けた。またホテルが避難者で埋まった。降雨の変化とともに新型コロナウイルス感染拡大の影響が如実に表れた。
 避難所では、避難者同士の距離を保つことが求められ、満員となる施設が続出。新たな難題となった。
 県によると、台風10号で各市町が開設した避難所は過去最多742カ所。うち18%に当たる139カ所が満員となり、ほかの場所を案内するなどした。停電の発生や窓ガラスが割れるなど避難所も被災した。
 「これまでは避難者が少ないことが課題だった。今後は今回の台風10号が一つの目安となる」。荒木秀県危機管理監はこう語る。台風後、県は各市町向けに非常用発電機などを購入したほか、避難所の運営には民間資格の防災士など住民の協力を求めることを各市町に伝えた。荒木氏は「行政だけでは限界があり、民間の力も借りながらの対応が必要」としている。


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