服の「作りすぎ」、技術で是正 ZOZO沢田社長インタビュー

 ファッション業界は、新型コロナウイルスによる消費者の外出機会の減少で大きな打撃を受けた。だが、もともと「作りすぎ」という構造問題も抱えていた。インターネット衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営するZOZO(ゾゾ)の沢田宏太郎社長は、データに基づいた販売予測で問題の是正に貢献すると意気込んだ。昨年11月にインタビューに応じた。(共同通信=越賀希英)

インタビューに答えるゾゾの沢田宏太郎社長=2020年11月2日、東京都内

 ▽追い風

 ―2020年9月中間連結決算は増収増益で好調でした。新型コロナウイルスはどのように影響しましたか。

 デジタルシフトは間違いなく起きていて、消費者の選択肢としてアパレルEC(電子商取引)が出るようになったのは追い風だった。(ファッション)業界全体では需要は落ちているので、ECの販売力で業界を下支えすることにまい進している。

 ―コロナ禍で自社ECを始める動きが加速しています。

 ゾゾタウンと自社ECは互いに食い合うものではない。リアルの世界と同じでいろいろなお店を回りたい人もいれば、直営店で気に入った店員さんと話しながら服を買う人もいる。ゾゾタウンでいろいろなことを試し、売れ行きが良くなるノウハウがあればブランドさんに提供することも可能だ。コロナで思ったのはゾゾタウンが業界のインフラになっているということだ。先頭を走って実験台になり結果的に業界が盛り上がれば良い。

 ―ファッション業界に具体的にどのように貢献しますか。

 業界全体で言われているのは「作りすぎ」だ。需給の問題はデータを使って解決できる。サイトに来る人の購買履歴やサイト上の動き方から今このタイミングで買ってくれる人かどうかを高確率で当てられるようになってきた。この商品がきょう何個売れるかも当てられる。売れ残りそうな商品を割引で消費者とつなげば、課題となっている物余りは是正されていく。技術で業界に貢献していける。

 ―売れ残る商品が分かるなら、今売れる商品が何かを把握して作ることもできるのでしょうか。

 ここ5年くらいデータをひっくり返しながら研究しているが、全く世に出ていない商品がどの程度売れるかを予想するのはとても難しい。一方で、1度世に出して初日の売れ行きが分かればその後の売れ行きはある程度分かる。ブランドさんが商品をゾゾタウンに入れてくれた場合に、初日の販売数を基にブランドさんに「もっと作った方が良い」などと伝えられる。追加生産をどれだけ迅速にできるかは取り組みがいがある。すぐに追加生産することが難しくても予約商品とすれば業界としても健全で効率的だ。

 ―楽天が高級嗜好(しこう)のラグジュアリーブランドを集めたサイトを作るなど、ファッション業界でネットを活用したさまざまなサービスが生まれています。どのように対抗しますか。

 われわれはファッションが分かっている人間が千人以上いる会社なので、自分たちの好きなファッションをブランドさんといかにコミュニケーションしながら売るかを追い求めている。世界規模でみてもファッションというマニアックな分野で技術を極めている会社はなかなかない。ラグジュアリーブランドさんの中にはわれわれのテクノロジーに興味を抱いていただいているところもあり、例えばロエベさんとはうまくやらせてもらっている。800万人以上いるゾゾタウンの客の中でロエベさんの商品を買ってくれそうな人を直近の履歴で人工知能を使って、特別なプロモーションのメールや通知を出している。

 ―19年11月にZホールディングス(ZHD)の子会社になりました。購入履歴を活用した新たなビジネスの創出は、ZHD傘下の決済サービス・ペイペイの強みでもあります。

 われわれはファッションの領域しか持っていないので、ロエベの商品を買っている人がヤフーでどのような検索をしているのかが分かれば非常に可能性がある。ただ、個人情報保護法などの規制があるので十分に配慮する。人が次に何を買うかを予測することはとても難しく、今分かっているのは直近の動きは今の動きを決定するということ。ペイペイは3千万人の利用者を抱えていて、膨大なデータが集まっている。

 ▽ゾゾスーツ2

 ―採寸用ボディスーツの改良版「ゾゾスーツ2」を発表しました。外部企業と衣料品やヘルスケアサービスなどの開発に取り組む方針を示しています。

開発したゾゾスーツ2

 旧ゾゾスーツはファッションを売るときに使える技術として追い求めてきた。一方で、いろいろな会社から問い合わせがあり、消費者からもダイエット目的の体型測定に使っているという方がいらっしゃったりして、ファッションにとらわれずに使える技術だという感触があった。外部の企業と使い方を考えたい。われわれが想像できない使い方が生まれてくるという期待が高く、オープン化という形でやらせていただく。

 ―旧ゾゾスーツは消費者に直接配り、自社単独で衣料品開発を行いました。

 服をデザインすることは僕らの強みじゃないということがプライベートブランドを作ってみて分かった。ゾゾスーツを使って女性の下着を作ろうした場合に、胸の形と測定結果の間のマッチングロジックは下着メーカーさんの方がお持ちになっている。僕らは技術を提供し、そこから先はブランドさんの知見を利用させていただく。出た結果をゾゾタウンで使うもよし、ブランドさんの自社ECや店舗で使うもよしというスタンスだ。

 ―ゾゾスーツ2の特徴を教えてください。

 旧ゾゾスーツを発表した後から開発を開始し、初代とは違う代物になった。計測ロジック自体を大幅に変え、素材も変えて伸縮性も改善した。旧ゾゾスーツはある程度特殊な素材や作り方をしていたが、今回は難しい製造方法ではない。コストも前回より下がっている。初代はコストをかけた印象があったが、その反省を生かして大量販売しようとしてもハイリスクハイリターンにはならない。

 ▽前沢氏がいなくなっても

 ―19年9月に社長に就任されて1年が過ぎました。カリスマ社長と呼ばれた創業者の前沢友作前社長の頃に比べてゾゾの話題性が落ちているように感じます。

沢田社長と前沢友作前社長=2019年9月12日、東京都内

 前沢時代は会社からも発信するし、前沢という宣伝広告塔も使う形でやってきた。前沢がいなくなっても、組織力を使いながら発信をしていくことはできる。発信する内容は現場からアイデアが出てきているのでそれを絶やすことなく、すくい上げて実現していく。前沢の「挑戦していく」というDNAは受け継ぐべきだと思っている。(去年の)夏の終わりに、商品を入れる箱に、開くと打ち上げ花火の音が流れる仕掛けとカップ焼きそばを同封した。

 ―コロナ禍で花火大会がなくなったからですね。

 現場から僕にアイデアを持ちかけてきた。対外的に「面白い」という評価があり、社内でも「うちっぽいよね」と気持ちが晴れやかになった。組織力で発信していくことは十分できると自信を持ち始めている。

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