なべやかん遺産|「癒やしの怪獣ソフビ」 芸人にして、日本屈指のコレクターでもある、なべやかん。 そのマニアックなコレクションを紹介する月刊『Hanada』の好評連載「なべやかん遺産」がますますパワーアップして「Hanadaプラス」にお引越し! 今回は「癒やしの怪獣ソフビ」!

ストレスが半端じゃなかった一年

コロナ禍でストレス発散が難しい日々が続いている。パァ~ッと遊びに行く、食べ歩きする、仲間と集まってワイワイ騒ぐ、海外旅行でリフレッシュ、そんな事が出来ない。

海外旅行は無理として、国内旅行でもと思うが、外食も旅行も思い切り楽しむ気になれない。気にせず派手な集まりをして楽しもうと考える日もあるが、自粛警察に嫌な思いをさせられるのではないかと思ってしまい、全てが遠慮がちになってしまう。

コロナ禍でやたらと狂暴化している人もいる。異常なクレーマーになったり、人に対して厳しくしたり、ケチだったり。あ、ケチはコロナと関係ないか!ケチはどんな時でもケチだから。

そんなこんなで人付き合いも今年はあんまりしていない。趣味関連のイベントも中止になったり、規模縮小になったり、東京コミコンに関してはウェブでバーチャル開催となった。

コレクター宅に遊びに行くのも、特殊造形工房に遊びに行くのも全て「コロナが落ち着いたら行きますね」という挨拶になり、仕事が減り例年より暇な時間があるにも関わらず趣味の時間が持てないでいる。

趣味の時間は大切な時間。それがないとストレスの溜まり方は半端なものではない。
そんな時はどうすれば良いか、50年生きて来たので学習は出来ている。まず自分のコレクションルームに行く。そこには怪獣ソフビが並んでいるショーケースがあるのでガラス戸をガラガラと開け、中からお気に入りの怪獣ソフビを取り出す。そして、それを手に持って眺める。

ふぅ~。

これで気持ちが和らぐ。怪獣ソフビがストレスを忘れさせてくれるアイテムだという事を学んだのだ。

癒やしを与えてくれる珠玉のコレクションたち

自分の中の究極の怪獣ソフビ、マルサン製のバラゴン(左)とパゴス(右)。

でもこれは簡単な事ではない。なぜなら部屋の入口まで積み上げられたダンボールなどの荷物を部屋から出さないと中に入れないほどコレクションが増殖しているからだ。荷物を部屋から出すという大仕事がまっていて、その作業をしないと、って考える事がストレスになる。

コレクションルームにある全ての怪獣ソフビがストレスから解放してくれるわけではない。

お気に入りのソフビがいくつかあり、それが癒しを与えてくれる。マルサン&ブルマァクの60年代当時モノのソフビ。パワーを持ったソフビ。今回はそんなソフビをご紹介しよう。

マルサン&ブルマァクの怪獣ソフビは、ここ最近のリアル路線のバンダイ怪獣ソフビと違い、可愛らしくデフォルメされている。手に持った時の大きさとデフォルメ感が実に心地よい。

パゴスは三体いる。どれも好きだ。
横から見たパゴスボディ。お腹と背中の丸みが良すぎる。

数ある中で自分的に一番デフォルメ感が見事だと思うのが東宝特撮映画に登場したバラゴンとウルトラQに登場したパゴスだ。体の丸み、手足の長さ、そして顔のデフォルメ感が実に見事。

パゴスという怪獣は、東宝から借りて来たバラゴンの着ぐるみの体に頭を付けた怪獣だ。つまり、バラゴンが素晴らしい怪獣だったからパゴスも美しい怪獣になれたのだ。

好きな怪獣ソフビは微妙な色違いでも集めたくなり、バラゴンもパゴスも数体持っている。同じ怪獣ソフビを買う度、映画『陰謀のセオリー』でメル・ギブソンがサリンジャー著の『ライ麦畑でつかまえて』を何度も買ってしまい「買うと安心するのだ」という台詞を思い出す。

(記憶の中ではそんな感じ)なので、自分も頭が少しおかしいのかもしれないと感じたりする。

まぁ、そうやって自分を理解しているのだから本当に狂っているわけではないだろう(笑)。

パゴスボディのガボラ(中央)とネロンガ(右)。どちらも素晴らしいソフビ。

マルサンの怪獣ソフビでは、バラゴンボディの流用はないが、パゴスボディの流用があり、ネロンガとガボラがパゴスボディで発売されている。どちらの怪獣も撮影用の着ぐるみはバラゴンボディの流用。

これらの怪獣ソフビも手に取りジッと見つめる事でストレスが発散されていく。

パゴスの足を使用しているゴモラ。

子供の頃、ウルトラマンに登場した怪獣ではゴモラが一番好きだった。そんな理由でゴモラのソフビも何体か買ってしまっている。マルサン&ブルマァクのゴモラはパゴスの足と同じものを使っていて、腕も似ているがゴモラは肘に角が付いているので、その部分が違う。

ところが、ブルマァク時期になると間違えてパゴスの腕が付けられているものもある。

当時は売れに売れまくっていたから増産型を作った時に、おそらく間違ってパゴスの腕を使ってしまったのだろう。

もしくは、手足の型を引っ張り出して来た時に間違ってパゴスの手足を使ってしまったのかもしれない。どちらにせよパゴスからの流れのソフビは実に良い。手に持った時にシックリくる。

マルサン&ブルマァクのゴモラ達。

最強のパワースポット

現行のバンダイ発売の怪獣ソフビしか知らない子達は気の毒に感じるね。とはいえ、そんな自分もバンダイ(当時はポピー)怪獣ソフビで遊んだ世代。

マルサン&ブルマァクの怪獣ソフビの良さはコレクターになって知ったのだ。11歳でそれを知って良かったよ。本当の良さは早いうちに知りたいからね。

お気に入りの怪獣ソフビを手にする事で癒しを与えてもらい、ストレス発散に繋がる。そんな怪獣達が部屋中にあるのだから、我がコレクションルームは自分にとって最強のパワースポットになる。

明治神宮の清正井よりも秩父の三峯人社よりも富士山の頂上よりもパワーがあると信じている。

ちなみにその他のパワースポットは、ブリキのおもちゃ博物館館長の北原照久さんの所か、コレクションの師匠であるソフビメーカー・M1号の西村祐次さん宅だろう。

とりあえず、この二か所に行けば良い気を得る事が出来る。コロナが落ち着いたら絶対に行かないといけない。でも、お邪魔した時に強烈に欲しい物があると逆に極度のストレスになる場合もあるが、それがコレクターってもんだろう(笑)。

ストレスと癒しは表裏一体、そんなコレクター道を続けている。ちなみに昨夜はヤフオクで競り負けたので、超超超ストレスいっぱいだ。(涙)

早くバラゴンとパゴスを抱きしめて自分を癒さないと。

なべやかん

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