孤独な甲斐を救った3人の鷹レジェンド「だから僕は、寄り添える人間になりたい」

孤独に押しつぶされそうだった甲斐を救ったのは…

ソフトバンクの甲斐拓也捕手(28)が25日に福岡市内の球団事務所で契約を更改し、5500万円アップの年俸1億6500万円でサインした。

リーグ最多得票での4年連続ゴールデングラブ賞、3年ぶり2度目となるベストナインを獲得。「球団からディフェンスをすごく評価してもらった。ケガをせず支えてくれているという言葉がうれしかった」と守備での貢献をこれまで以上に認められた。攻撃面では打率2割1分1厘と低迷。年々、正妻の地位が盤石になるだけに「打ちたいではなく、打たないといけない」と責任感をにじませた。

パ・リーグの現役捕手では最高年俸となるバラ色の契約更改となったが、順風満帆のシーズンではなかった。序盤はチームが波に乗り切れず、やり玉に挙げられることも。7月の札幌遠征では3試合連続でスタメンを外れ「本当にしんどかった」と精神的に追い込まれ「孤独を強く感じた」。

だが、孤立しかけた時に3人のレジェンドに救われた。「札幌に来られた王会長が僕のために話をしてくださった。『結局このチームはお前がやらなきゃ始まらないんだ。甲斐、お前しかいないんだぞ』と励ましてもらった」。

さらに札幌から福岡に戻ると待ち構えていたかのように「城島さん(球団会長付特別アドバイザー)が『2人だけで話そう』と声をかけてくださった。城島さんは僕の話をひたすら聞いて、ずっと相づちを打ちながら同調してくださった。『わかる、わかる』『俺もそうだった』と寄り添ってもらい、すごく気持ちが楽になった」。

投手陣が尊敬してやまない元エースからも、時を同じくして手を差し伸べられた。「(OBの)斉藤和巳さんに電話をもらって。ナイター終わりに2時間くらい付き合っていただいた。和巳さんもひたすら僕の話を聞いてくださいました。いい時も悪い時も見ていてくださる方がいるんだな、一人じゃないんだな、と思えた」。顔を合わせる機会の少ない3人の心遣いゆえに「救われたし、気持ちを入れ替えることができた」と振り返った。

甲斐が「今年は僕の野球人生で意味のある特別なシーズンだった」と言うのには理由がある。「会長、城島さん、和巳さんから大切なことを教わった。それは人を孤独にさせてはいけないということ。だから僕は、投手や若手が悩んで孤立しかけていたら、いち早く気づいて寄り添える人間になりたい。自分がしてもらったことを返していきたい」

レジェンドたちのファインプレー3連発が、鷹の正妻を救い、またひと回り成長させた。

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