羽生結弦「0点」なんの全日本首位発進! 卒論指導教授が絶賛「結局、頭がいい」

ブランクの影響を感じさせない演技を披露した羽生結弦(代表撮影)

自粛期間もプラスに変えていた――。フィギュアスケートの五輪2連覇・羽生結弦(26=ANA)が、約10か月ぶりの実戦となった全日本選手権初日(25日、長野・ビッグハット)の男子ショートプログラム(SP)で103・53点をマークして首位発進。今季は新型コロナウイルス禍でグランプリ(GP)シリーズを欠場しており、ベールに包まれた調整過程の中で、どんなことに力を入れてきたのか。

約10か月ぶりの本番リンク。その感触をじっくり確かめるように、羽生は銀盤の中央に立った。

SPの新プログラム「レット・ミー・エンターテイン・ユー」の軽快なロックナンバーに合わせ、冒頭に4回転サルコーを決めると、コロナ禍で大声が出せない観衆から手拍子が発生した。トーループの4―3回転のコンビネーション、後半のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)も着氷。この直後のチェンジフットシットスピン(CSSp)は回転数が足りずに「0点」とジャッジされるハプニングもあったが、首位発進を決めた。

羽生は「テクニカルを全然伸ばし切れていない。しっかり修正しながら明日(フリー)に向けて頑張りたい」と反省点を挙げた。

今大会もコーチ不在だが、ここまでの10か月間も同様で孤独との戦いだった。「毎日1人でコーチなしで練習した」と言いつつも「それでも僕にとってはスケートに集中できる環境」と決してネガティブにとらえなかった。

中でも早大人間科学部(通信課程)の卒論作成は、自身に大きな影響を与えた。テーマは「3Dモーションキャプチャによる陸上でのジャンプの研究」。約2年間指導した西村昭治教授(60)は「自粛期間中が彼の卒業研究の一番のピークでした」と明かす。ひたすら勉学に励んだ時期の様子を「とても控えめで、人の言うことをよく聞き、咀嚼(そしゃく)してから答えを出す。必ず自分の中で整理がついてから返事をする。非常に慎重なところが印象的でしたね」と振り返った。

研究では手首やヒジの関節、首、頭など最大32か所にセンサーをつけ、ジャンプの感覚を数値化。これによって別の角度から自分の演技を見つめ、より高い精度につなげてきた。その熱心さに西村教授は舌を巻く。

「他の子たちと違って、何か作業すると必ず何か1個、発見していく。例えば、ここでは外側で踏み切るから小指に重さがかかっているとか。結局、頭がいいんです」

そんな研究を重ねてきた早大は9月に卒業。コロナ禍でもやるべきことにフォーカスしてきた王者は、スケーターとしての幅を広げ続けている。

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