社会課題を解決するAI人材を養成。「データサイエンスとAI入門」を必修化

社会課題を解決するAI人材を養成。汎用性の高いフレームワークを身につける「データサイエンスとAI入門」を学部・学科横断で2022年度より必修化

日本工業大学では、現在、学部・学科横断の選択科目である「データサイエンスとAI入門」を2022年度より必修化。この科目では、Society 5.0の概要を理解し、その中核技術であるデータサイエンスとAI(人工知能)の基礎を、講義と演習により修得することを目的としている。

建学の精神に「実工学の理念にもとづく工学教育」を掲げ、研究のための研究ではなく、社会の中で活かされることを目標とする教育研究を掲げる同校。「データサイエンスとAI入門」も、この精神に則って授業計画が作られ、また日本を代表する企業や研究所で研究開発に携わってきた実務家教員が担当する。

大学でデータサインエンスやAI(人工知能)を学ぶといっても、まだまだ各要素技術の修得に終始しがちで、例えば、ロボットならロボット、AIならAIそのことだけを勉強するけれど、それがSociety 5.0の中でどのような位置づけになっているか?実際に、どういうことに使われるか?そこまで至らずに技術の修得自体が目的となってしまっていることが多い。

しかし、最近で言えば、新型コロナウイルスの登場によって、携帯の膨大な移動情報からある地点での密集度を測定してニュースで注意喚起をしたり、世界中に存在する論文データから特定の文言を抽出することで、問題解決のための様々な手掛かりを探すといったようなことも現実となっている。このようにデータサイエンスやAIは学ぶだけなく、それをどのように社会の中で活かしていくかがより重要性を増していることは誰の目にも明らかだ。

それゆえに、学び方もデータサイエンスとAIを活かすためのフレームワークについて話をした上で、例えば、ロボットをどうしよう、情報技術をどうしようという話をしていかないと、勉強したことが直接社会に結びつかない。これまでの技術修得とは異なり、社会の中で求められるものが、技術だけでなく、その活かし方を含めた包括的なスキルとなっている今、大学での学びも変化を余儀なくされているのだ。

この科目は、こうした時代の変化を反映して授業計画が組まれており、誤解を恐れずいうならば、専門的な詳細の内容は別にして、中学生でもその概要を理解できるような、積み上げ式に全体像が浮かび上がるわかりやすい仕立てが特徴であり強みだ。

知りたいことがあれば、いつでもPCやスマートフォンで情報を得られるようになり、私たちの暮らしはすでにIT(Information Technology)と切っても切り離せなくなっている。2017年に、「未来投資戦略2017」及び「経済財政運営の基本方針2017」が閣議決定された。経済社会の中長期的な成長を実現していくため、第4次産業革命の技術革新をあらゆる産業や社会生活に取り入れることで、様々な社会課題を解決するSociety 5.0を世界に先駆けて実現すると政府はしている。すなわちあらゆるモノがインターネットにつながり、そこで蓄積される様々なデータを人工知能などを使って解析し、新たな製品・サービス の開発につなげ、社会課題を解決していくという。

Society 5.0は、人間を中心とした情報社会の理想の姿を提示。また、今全世界で取り組みが進んでいるSDGs (Sustainable Development Goals)は、環境問題をはじめ人権問題など、社会課題をわかりやすい形に分類し、目標として具体化することで、持続可能でよりよい世界を目指し問題の解決を進めている。

この科目では、この二つと、データサイエンス、AIの基本をそれぞれ理解し、社会課題を解決するためのフレームワークを身につける。日常のささいな違和感や疑問も、このフレームワークを応用すれば、解決するために必要なこと、自分がやるべきこと、もっと学ぶべきことが見えてくる、そんな汎用性の高い内容になっている。

また、担当する教授陣がこれまでに大手企業や研究所で手掛けてきた研究開発は、廃棄物を利用したエネルギーシステムの開発、自動車の車群追従走行の安全性メカニズムの研究、メーカーの情報システム開発における生産性と品質向上、各種製品システムのライフサイクルの環境評価など多様だ。社会経済の第一線で問題解決に取り組んできた実務家教員ならではの経験と様々な視点から、社会とデータサイエンスやAIといった工学技術のあり方を、絵に描いた餅ではなく、ほんとうに食べられる美味しい餅にどうやってするか、その指導に力を注ぐ。

今年度は学部・学科横断の選択科目として開講。しかし、土曜開講にもかかわらず130名を超える学生が履修している状況を見れば、学生の興味の高さもわかる。

「今、求められているものは課題解決能力もさることながら、課題発見能力ではないか」と担当である先進工学部情報メディア工学科の辻村 泰寛教授は話す。学び方はそれほど難しくない。しかし、各単元をひとつずつクリアしていくことで、それぞれがつながり、全体像をつかめるようになっている。また、頭に浮かんだ疑問を、このフレームに当てはめてみることで、課題を発見し、新たに研究したいテーマも見つけることができるかもしれない。シンプルな構成だが、受講し積み重ねて学習した先に得られるものは想像以上に大きいのではないかという印象を受ける。AI人材の養成が急務といわれる現在において必要不可欠な科目と言える。

参考)

総務省情報通信白書平成29年版

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/h29.html

内閣府 科学技術政策 Society 5.0

https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/

外務省 JAPAN SDGs Action Platform

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html

日本工業大学 先進工学部 情報メディア工学科

辻村 泰寛 教授

日本信頼性学会理事、日本設備管理学会理事、(社)日本経営工学会第29期表彰委員会委員長、(社)電気学会進化技術体系化と応用調査専門委員会幹事、経営工学関連学会協議会代表者会議メンバー(日本信頼性学会代表)

投稿 社会課題を解決するAI人材を養成。「データサイエンスとAI入門」を必修化大学ジャーナルオンライン に最初に表示されました。

© 大学ジャーナルオンライン