「捕手として大事なもの」鷹・甲斐拓也が語る“キャノン”よりも誇れる技術とは?

ソフトバンク・甲斐拓也【写真:荒川祐史】

25日に5500万円増の1億6500万円で契約を更改した甲斐拓也

ソフトバンクの甲斐拓也捕手が25日、本拠地PayPayドーム内の球団事務所で契約更改交渉を行い、5500万円増の1億6500万円で来季の契約にサインした。(金額は推定)

育成出身の甲斐はシーズン序盤にはスタメンから外れる時もあったが、3年ぶりのリーグ優勝と4年連続日本一の立役者の1人に。今季は104試合に出場して打率.211、11本塁打33打点。日本シリーズでは好リードで投手陣を導き、巨人打線を4試合で最少記録となる16安打4得点に抑え込み、2年連続4連勝での日本シリーズ制覇に貢献した。

甲斐の武器といえば、この日球団からも高く評価をされたという守備面だ。育成選手で入団してから、スローイングを中心とした守備面を第一に考えて練習に励んできた。1軍の主力に定着した2017年から4年連続ゴールデングラブ賞。球界でもトップの守備力を誇る捕手となった。

「打つことも大事、打たないといけないと思っていますけど、守備で入ってきた人間。プロ入って10年目が終わりましたけど、そういった自分になれているのはこだわって長所を伸ばそうとしてきたのは間違ってなかったと思います。今までのたくさんのコーチに教わってきて、そういう方達のおかげでここまでできていると思います」

甲斐がこう語り、これまで指導を受けてきたコーチ陣への感謝の思いも口にする。そのキャッチャーとしての守備で甲斐が大事にするものがある。「甲斐キャノン」と称されるスローイングに注目が集まりがちだが、最も大事なのは別のものにあるというのだ。

ソフトバンク投手陣の今季の暴投はリーグ最少の22個

「盗塁阻止を言われますけど、1番キャッチャーとして大事に思うのはブロッキングですね。ブロッキング、ワンバウンドを止める機会の方が、盗塁される数よりも明らかに多い。これによって走者を1つ先の塁に進めるか、進めないかで全く違う。投手にとっても全然違う状況になる。キャッチャーとして、そこは求めているものでもあるし、大事なもの。ストップするのは大事だと思っています」

投手の投球がショートバウンドやワンバウンドになった際に体を張って止める“ブロッキング”と呼ばれる技術。甲斐が重要視するのはこの技術だという。このワンバウンドを捕手が逸らせば、ほとんどが投手に「暴投」が記録される。今季のソフトバンク投手陣の暴投はリーグ最少の22。リーグ最多の西武の45個の半分以下だ。

投手陣の力量ももちろんあるが、甲斐のブロッキングもここに大きく寄与していることは間違いない。エースの千賀滉大投手らがワンバウンドのボールを体を張って止め、体中がアザだらけになっている甲斐の姿に感謝していたところにも、役割の大きさが伺えるだろう。ワンバウンドをどれだけ止めてくれるか、は、投手からの捕手の信頼にも大きく関わってくる。

来季に向けて「自分自身も責任感を持ってやらないといけないですし、5連覇はチームとしてもですけど、キャッチャーとしても1番の目標。そこに向けて頑張っていきたいと思います」と語る甲斐。2年連続のリーグ優勝、5年連続日本一へ、正捕手の存在は来季以降も欠かせない。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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