ブラックバス世界記録保持者・栗田学が語る「超級サイズのバスの釣り方」9年越しの挑戦で得た結論【でかバス金言集】

バスの中でも特に大きい「でかバス」をあくまでも求めるのがバスプロという職業。だが、とりわけ規格外なのが世界タイ記録のバスを釣り上げた栗田学さんだ。常識はずれのサイズのルアーを常識はずれの回数キャストし続け、最長2週間ぶっ続けで湖上に浮かぶ…そこまでのモチベーションを保つ秘訣は実に、そこにモンスターサイズのでかバスがいるのが見えるから。だそうだ。

語り部は栗田学さん

【Profile】
栗田学(くりた・まなぶ)
岐阜県出身。2009年7月2日、琵琶湖にて世界タイ記録のブラックバスをライブベイトでキャッチした張本人。伝説的な記録に77年ぶりに並んだ。なお、その前年にはルアー(マザー)で8,480グラムの琵琶湖記録バスをキャッチしている。固定観念に囚われることなく、今も自分の釣りを探究している。

諦めずにいられる理由は「そこにいるのがわかってる」から

最初に世界記録を狙おうと思ったのは、2000年。今から20年前にそういう魚を見つけて、とりあえず釣れるまで狙おうと思ったんです。何年かけて…とかは考えてなくて、釣れるまで。

2008年にマザーで8キロオーバーを釣って…。あの2年はそういう魚を自分が絶対釣るってなんだかわかっていましたね。

心が折れないようにするには…常にそういう魚を見るんですよ。釣れなくてもいいんで、見続けたらモチベーションが上がるし、そいつを釣るためにいろいろ考えるじゃないですか。

当時、僕が見た中ではかなり大きいメータークラスのバスを2週間くらい見続けたことがあって。その時は、餌付けとかラジコンボートを浮かべてみようとか…いろいろ考えちゃうんですよ、どうしたら反応するのか? って。それで得たものはやっぱりデカかったです。

ライブベイトからビッグベイトへ

ライブベイトって、そんなん卑怯だろ、っていう人もいるけど、実際やってみたらすごく難しい釣りだし、そこからルアーのアクションやアプローチが変わってきたりしたんですよ。僕がビッグベイトを覚えたのは、ライブベイトの釣りで自分の釣りが変わったというのがきっかけでした。

そこで新しい発見があって、今度はルアーに導入してみよう、と。それでマザーを作らせたし、この巨大ルアーもそうです。当時、30〜40センチのデカいハスが水面ですごくデカいバスに追われてる光景を結構見てたんですよ。

その頃は、ジョンテッドクローとかスライドスイマーがよく釣れていて、だったら30センチのS字系があったらいいな…というのがきっかけ。それが15年くらい前。当時はもうバカにされとったもんね。マグロでも釣りに行くんか? って。

最長で2週間! 常識を超えた栗田さんの長い釣行時間

一番出てた年は、年間200〜250日は出たかな。あと、時間が長いですわ。36時間連続とかよくやってました。最長は2週間ですね。途中で1回だけボートを上げて、メシを食って、バッテリーを入れ替えて、シャワーを浴びてまた出る、とか。

世界記録を釣った年にはもっとデカいバスをバラしていたのですが、あのときはネストを見つけて、湖上に8日間浮いてました。たまにご飯の買い出しとバッテリー交換に上がるだけで。あいつがデカすぎて釣った世界記録バスが小さく見えましたね。

よく「なんでビッグベイトでそんなに釣れるんですか?」って聞かれるんですが、そのときに「1日にどれくらい投げるの?」って聞くと、少ない人は「5投くらいです」って真顔で言うんですよ。よくて1時間とか。チェイスはあるけど釣れないんですよ、って。

そういう人には「とりあえず1日投げ通したほうがいいんじゃない?」って。それによって見えるものがあるから、そこから自分で工夫して魚を騙すほうが面白いよ、って言いますね。

あと、初心者には「3年間はビッグベイトをやるな」って言います。ジグヘッドとかクランクベイトとかミノーとかを3年間投げてからビッグベイトを投げたほうがうまくなるよ、って。

栗田さんのでかバスルアーを一部紹介

デニーロ800(マニホールド)

かつて、70センチを超える「客寄せパンダ」というルアーを自作していた栗田さん。こちらはマニホールド製で80センチだ。

栗田「これは釣るためではなく、きっかけを作るルアー。デカいバスを見つけるためと、自分のモチベーションを高めるため。もう、ないと困ります」

デニーロ800(マニホールド)

スライドスイマー250(デプス)

栗田「出たばかりのころは半年くらい釣れなかったんですが、ライブベイトの釣りをやっていたのでその動きを意識して動かしたらめちゃくちゃ釣れるようになりました。ライブベイトもルアーも着水してゆっくりフワフワ泳いでたら滅多に食われないですよ」

スライドスイマー250(デプス)

クラッシュ9(DRT)

栗田「これもヤバかったですね。一番簡単に釣れるビッグベイト。今はただ巻きで釣れるビッグベイトはあまりないんですが、これはグリグリって巻くとボーン!と出る。食ってくるバスもデカいです。タイニーも最初に衝撃を受けましたね」

自作スプーン(栗田学)

栗田「マグナムスプーンが入ってくる前の年に自作していました。デカいバスがハスを食ってるのを見て、フラッシングがすごいな、と。それで小さいスプーンをデカくしたらハスっぽいと思ったんです。50〜65センチくらいまでを1日に30〜40本、100キロくらいは釣ったんじゃないかな?」

自作スプーン(栗田学)

自作巨大アラバマ(栗田学)

栗田「これはまだ釣ってないですが、チェイスもバイトもあります。1回だけ60後半くらいのが掛かったんですが、アームが金属疲労してて…折れちゃいました。でも、めっちゃ反応したのは最初の年だけでしたね…」

普通のビッグベイトサイズのワームが5匹の群れになった強烈な仕掛け。浮力帯がついている。投げるのも1投1投、思い切り振り抜かなければ飛ばない。当然、しんどい。

世界記録を釣りたいなぁ…と夢見るのではなく、釣る、と決めた。腹を括ったらある程度のリスクは背負えたという。時間もお金もたくさん費やし、常人の理解を超えたアプローチを試し続けて…9年越しでキャッチした世界タイ記録のバス。その重さは計り知れない。

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