なぜ鷹は千賀のポスティングを認めないのか? 根底にある球団の“野望”とは…

ソフトバンク・千賀滉大【写真:代表撮影】

ソフトバンクが目指しているのは「世界一の球団」

26日に契約更改交渉を行い、今季から1億円増の年俸4億円で来季の契約を結んだソフトバンクの千賀滉大投手。その交渉の席上で最も時間をかけて話し合われたのは、以前から千賀が希望しているポスティングシステムを利用してのメジャーリーグ挑戦についてだった。(金額は推定)

これまでも球団に希望を伝えてきていた千賀だったが、この日も改めてその思いを伝えた。交渉は1時間超になり、その後に行われた会見で千賀は「アメリカの話が多かったと思います。去年と変わらず引き続き話をさせてもらっている感じです。状況は変わらないですね。なかなか難しいことじゃないかなと思います」と表情を曇らせた。

ソフトバンクは球団としてポスティングでのメジャー挑戦は認めておらず、その姿勢は一貫している。交渉を担当する三笠杉彦取締役GMもこの日、改めて「今日のところで我々の方針について変更があったというのはない。今日の時点ではそう(認めないということ)ですね」と示していた。

今オフは巨人の菅野智之投手や日本ハムの有原航平投手、西川遥輝外野手がポスティングシステムを利用してのメジャー挑戦を目指している。奇しくも千賀と同い年の有原はこの日レンジャーズとの契約に合意。菅野も2017年のWBCでチームメートとして戦っており、千賀自身も「ここ数年は一緒にユニホームを着たり、同級生の(メジャー移籍の)話が多いので身近に感じる部分は結構強い」と語っていた。

現在NPB球団でポスティングを認めていないのはソフトバンクのみ

これまでソフトバンクと同様にポスティングを認めていなかった巨人は昨オフ、山口俊投手のメジャー挑戦で初めてポスティングを認め、今オフは菅野と2年連続でポスティングを利用した。現在のNPBでポスティングを認めていないのは、ソフトバンクのみだ。

なぜソフトバンクは選手のポスティングを認めないのか。そこには球団として目指す“野望”が関係している。

4年連続で日本一となったソフトバンクだが、球団として目指すのは「世界一の球団」。かつて後藤芳光社長は「原則として我々のスローガンとして『世界一の球団になる』というものがあります。世界一を目指して、もがきながら色々と考えている。ウチの素晴らしい選手たちが、その相手に行ってしまっていたら勝負にならない」と語っている。

取得した海外FA権を行使してメジャーに挑戦するのは選手の権利であり、止めることはできない。ただ球団の権利であるポスティングを利用して、わざわざチームの主力である選手を、世界一を狙う上ではライバルとなるメジャー球団に移籍させていては、その“野望”に反するものだというのが考えの根底にある。

千賀の海外FA権取得は早くても2022年の見込み

ダイエーからソフトバンクとなって以降、城島健司捕手(現会長付き特別アドバイザー)、川崎宗則内野手(今季は栃木)、和田毅投手がメジャーリーグに挑戦しているが、3人とも海外FA権を行使しての移籍だった。その前例を鑑みても、ポスティングは認めにくいという側面もある。

三笠GMは「今日の時点で、というところ。どんな意思決定でもですが、一度決めたら変えないということではない。話し合いをして、置かれている環境や状況を見て考えていくというスタンス」とも話しており、可能性には含みを持たせていた。

千賀は早ければ来季中に国内FA権を取得し、海外FA権を手にするのは2022年シーズン中になる。先輩たちと同じく海外FA権を行使してのメジャー挑戦となれば、最短でも2023年シーズン。その時には千賀は30歳となっている。

限られた選手寿命であることを考えれば、1年でも早くメジャーに挑戦したいという千賀の気持ちは当然とも言える。国内FA権取得が目前ということで、球団は複数年契約も用意していたようだが、単年契約に落ち着いた。果たして千賀の願いは球団に届き、事態が動くことはあるのだろうか。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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