【昭和~平成 スター列伝】長嶋茂雄 「映画撮影」「旅行」大忙しの63年オフ

長嶋と王に挟まれておどけるフランキー堺。豪華な顔ぶれだ

【昭和~平成 スター列伝】巨人の長嶋茂雄と王貞治、人気俳優のフランキー堺らがグラス片手に満面の笑みを浮かべている。1963年11月20日に行われた、映画「ミスター・ジャイアンツ 勝利の旗」出演者発表会見の様子だ。長嶋が本人役で主演し、63年シーズンの活躍を描いた作品で、王のほか広岡達朗、藤田元司、川上哲治監督ら当時の巨人のメンバーが総出演。巨人広報役の堺や佐原健二ら本職の俳優陣も豪華な顔ぶれだ。坂本勇人が主演するオールスターキャストの映画を作るようなもので、今ではちょっと考えられない企画だ。

この年、長嶋は打率3割4分1厘で4度目の首位打者に輝き、112打点で2度目の打点王を獲得した。37本塁打は王の40本塁打に次ぐリーグ2位。セ・リーグMVP(2度目)、日本シリーズMVP(初)にも選ばれ、完全に球界の顔といえる存在になった。

宿敵・西鉄を下した日本シリーズが終了したのは11月4日。その後は表彰式や球団納会、20日からは映画の撮影と休む間もなかった。撮影終了直後の12月17日には王、南海・野村克也、西鉄・稲尾和久とフランスの航空会社の企画でヨーロッパ旅行に出発。帰国したのは年が明けた64年1月4日だ。

64年は東京オリンピックの影響で開幕日が3月20日に前倒しされており、過密スケジュールを不安視する向きもあった。それでも打率3割1分4厘、31本塁打、90打点をマーク。タイトルにこそ届かなかったが、十分に存在感を見せた。

なお「ミスター・ジャイアンツ 勝利の旗」はキャンプ中の2月に公開され、おおむね好評。当時の長嶋らの練習シーンは、今となっては資料的な価値も認められている。 (敬称略)

© 株式会社東京スポーツ新聞社