ボランティアに奔走 有明支縁会・草野さん「心も含めて支援したい」  活動5年 県内外に広がる縁

勤務先が提供してくれているスペースに支援物資を運び込む草野さん=諫早市内

 「単に復旧作業に行ったり、物資を届けるだけでなく、被災者が自力で生活できるまで、心も含めて支援したい」-。
 たった一人で始めた被災地支援から来年で5年を迎える諫早市のNPO法人「有明支縁会」理事長の草野紀視子さん(50)。全国各地で自然災害が発生するたびに、現地へ駆け付け、物心両面の支援活動を続けている。その原動力を聞いた。
 2016年4月の熊本地震。橘湾に近い草野さんの自宅も大きな揺れに襲われた。隣県の被害が伝えられるたび、いても立ってもいられなくなった。「車で行ける場所。何とか支えたい」。ボランティアを募り、“自前”のバスを走らせ始めたのは同年6月だった。
 それから4年半余り。この間、仲間と共に同会を結成。ボランティアバスは熊本にとどまらず、福岡、岡山、広島などの被災地へも走り、今月で41回。ほかの支援活動と異なるのは、それぞれの地で出会った人との縁をはぐくみ、精霊船を流したり、カステラを贈ったりしたこと。被災した人の心を和ませる活動をそっと加える。
 「困った時にみんなで支え合う社会にしたい。その場限りでなく心の支援を大事にしている」。精霊船作りなど“後方支援”に関わる人との縁が、次々と生まれているのも特徴だ。
 昨年の7月豪雨で被災した熊本県の球磨川流域の市町に足しげく通う。新型コロナウイルスの影響で、県外ボランティアが制限され、生活に必要な衣類や電化製品などを届けてきた。
 今月16日には、八段飾りのひな人形を人吉市の国宝、青井阿蘇神社に贈った。西日本豪雨で知り合ったボランティア仲間から託された年代物。「昔ながらのひな人形が被災者の心を癒やしてくれたら」。そう願い、神社で飾られる春を待つ。
 なぜ、被災地支援なのか。「被災地だけでなく、困っている人がいると知ると動いてしまう」。新型コロナウイルス感染が拡大した今年春以降、医療従事者向けの簡易防護服作製を始め、これまで約6千着を各地へ贈った。「第3波」が深刻化する中、必要とする県内の病院などへの無償提供先を求めている。
 コロナ禍がなければ始めたかったのが、被虐待児や加害者になる親への心的支援。心理カウンセラーの資格を生かし、虐待が起きる背景を掘り下げ、親も含めて必要な支援を進めようと考えている。その根底にあるのは、自身の虐待経験による心の傷。「多くの苦しみを乗り越えてきたからこそ、孤独に苦しんでいる人を受け止めることができる」
 “本業”は諫早市のゴルフ場運営会社の総務担当。休日はボランティアに奔走する日々。「支援の手が届く人だけでなく、被災地や身近な地域で支えてほしくても声を上げられない人を取り残したくない」。揺るぎない信念が、県内外で支え合いのネットワークを広げる原動力になっている。
 同会は熊本の被災者向けに、ホットカーペットや電気ファンヒーターなどの暖房器具、電子レンジなど日常生活に必要な電化製品を募っている。物資支援、簡易防護服の希望団体、虐待支援相談の連絡先は同会の電子メール(info@tasukeaitai.org)。

国宝の青井阿蘇神社に贈ったひな人形=熊本県人吉市(草野さん提供)

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