フィギュアスケートの全日本選手権(長野・ビッグハット)男子シングルで五輪2連覇の羽生結弦(26=ANA)が5度目のVを達成した。本紙は元世界女王の安藤美姫(33)を直撃。かつての銀盤のヒロインは、王者の滑りをどう見たのか――。
羽生は新プログラムで5年ぶりに全日本を制覇。千両役者が大舞台で結果を出し、新型コロナウイルス禍に見舞われた激動の2020年を締めくくった。
王者のフリー(26日)の演技を見た安藤は「柔らかい動き、雰囲気、ステップの流れを一段と引き立たせるプログラム」と絶賛した上で「羽生選手の一番の特徴は流れるランディング。彼の呼吸、ジャンプのタイミング、スケーティングの質にすごく合った選曲(『天と地と』)でした」と語る。
一方で、安藤は結果以外の部分でも脱帽している。
「王者になろうがなるまいが、リンクに立ってくれているだけでいい。点数が出るスポーツなので順位も注目されますが、羽生選手は世界中のスケーターが憧れるアスリートのお手本。結果うんぬんではなく、リンクで演技する姿を一日でも長く見せてくれればそれでいいのかな…と勝手に思っています(笑い)」
さらに安藤は「注目される」というトップ選手の宿命にも触れ、羽生のすごみをこう表現した。
「注目される自分の存在、価値を理解していて、そこで生まれる緊張感やプレッシャーをコントロールできる。そして、自分が『羽生結弦』でなければいけないという状況を、苦痛に感じていないんです。そこがすごい。私は苦痛でしかなかったので(笑い)」
かつて同時期にリンクで活躍した安藤だからこそ分かる「究極の強さ」があるのだろう。