基本的疾患から先進医療まで幅広く

**関西医科大学 内科学第三講座
長沼 誠 主任教授(ながぬま・まこと)**
1992年慶應義塾大学医学部卒業。
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科消化管先端治療学講座講師、
慶應義塾大学医学部消化器内科准教授などを経て、2020年から現職。

厚生労働省研究班における治療指針作成委員のプロジェクトリーダーとして、原因が明らかになっていない潰瘍性大腸炎・クローン病の診断や研究に関わってきた長沼誠氏。教授就任に際し、講座運営や取り組みについて聞いた。

幅広い臓器と疾患が対象

内科学第三講座が対象とする臓器は食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、肝臓、胆嚢、膵臓。便秘からがんまで疾患も幅広い。

「関西医科大学附属病院は、枚方市に生活する住民約40万人の医療ニーズに応える市中病院のような機能も果たしています。大学病院としての先進的な医療の追究と並行して、基本的な疾患の治療に努めるバランスの取れた診療体制を整えることが、当講座の使命の一つだと考えています」

前任の岡崎和一氏は、高度な内視鏡診断による適切な治療の実施に尽力するとともに、厚労省の難治性疾患克服事業の研究班に参加。難病に苦しむ患者へ積極的に手を差し伸べてきたという。

「岡崎先生が築いた講座の方向性を継承しながら、そこに私の専門である炎症性腸疾患の臨床研究の成果も加え、講座の発展と地域医療に貢献したいと考えています」

改訂作業を積み重ねる

炎症性腸疾患には主に潰瘍性大腸炎とクローン病の2種類がある。患者は慢性的な下痢、血便、腹痛などに悩まされ、日常生活や仕事に支障をきたす。

厚労省から難病に指定されるこの疾患の原因は、免疫機能の異常反応によって腸壁が傷つき、炎症を起こすと考えられているものの、はっきりしたことはまだ分かっていない。

長沼氏は、厚労省の難治性疾患克服事業の一つ「腸疾患調査研究班」に加わり、潰瘍性大腸炎やクローン病の診断、および治療指針の作成を行うプロジェクトリーダーとして活躍している。

「症状に応じて適していると思われる治療法を具体的に提示し、医師が治療を行う際の重要な判断材料となる最新情報を毎年、メンバーとともに共同で作成し、公表しています。例えば、新しい治療法が登場してきた場合、どの症状に適応すべきかを判断する。あるいは、既存の治療法の科学的根拠を再検討し、変更すべき点があれば改正する、などの作業を行っています」

研究班の地道な努力の積み重ねは、各大学や製薬会社の取り組みに刺激を与え、症状を軽減する優れた治療薬もここ数年、相次いで登場しているという。

炎症性腸疾患の診療部門を新設

東京生まれ。慶應義塾大学医学部に進んだのは父親の口癖がきっかけ。「『資格を持って世の中の役に立つ仕事をしなさい』を繰り返す父でした。それなら医者が良いのではと、医学の道へ。本学に着任するまで関西は未知のエリアでしたが、奈良の吉野山など美しい風景が多く、休日は日帰り撮影旅行に出掛けます。腕は三流、なんちゃってカメラマンです」

準備を進めてきた、関西医科大学附属病院の潰瘍性大腸炎・クローン病の診療部門の新設が2020年11月に発表された。豊富な知識と経験を有する専門医による外来診療が、ほぼ毎日受けられるという。また診療のみならず、基礎研究部門や臨床研究支援センターと連携しながら基礎研究・臨床研究を推進し、病因・病態解明にもつなげていく。

「これまで、この地域には潰瘍性大腸炎に精通する医師が少なく、患者さんによっては兵庫まで行くこともあったそうです。外来窓口ができたことで、高い専門性を持った複数の医師が交代で診察ができるようになりました。枚方市のみならず、近隣地域の患者さんの受け皿になれたらと願っています」

関西医科大学 内科学第三講座
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