第二のHPCCA法制定なるか?バイデン政権が左右するブロックチェーン・イノベーションの行方

SECが暗号通貨のユニコーンRippleを提訴

 2020年12月23日、アメリカ・証券取引委員会(SEC)が、アメリカのスタートアップRippleを提訴したと報じられた。Rippleは2012年の創業して以来、独自の暗号通貨単位・リップル(XRP)を通じて、自由な国際送金を実現しているスタートアップで、評価額10億ドル以上のユニコーンにも数えられている。Rippleがこのサービスを展開するためのコア技術に使っているのがブロックチェーンと呼ばれる技術である。ブロックチェーンとは、ブロックと呼ばれるデータ単位をチェーンのようにつなげるという構造により、改ざんされづらいという特徴をもち、中央集権的に情報を集めて管理される従来の手法とは異なるため、「分散型台帳」と呼ばれたりもする。

 今回のSECの訴状では、Rippleが内部の情報を開示することなく、ブロックチェーンを用いた暗号資産XRPの販売を通じて10億ドル以上の資金を調達したことを問題視されており、即時にRippleは違反していない旨の文書を発表したようだ。

 ビットコインやイーサリウムを代表とする暗号通貨は徐々に浸透してきているが、国際的・各国での規制の枠組みがいまだ整備されていないことで外部から疑念が寄せられることが少なくない。直近では2019年から今年にかけて、Facebookが中心となって発表された国際的な暗号通貨Libraが、各国の反発によって頓挫したことは記憶に新しいのではないだろうか(反発された理由は、Facebookの個人情報流出の問題も絡んでいるが)。

バイデン政権はブロックチェーンにとって追い風となるか

 12月24日にTechCrunchにRippleの社員が寄稿した記事

The Biden administration can change the world with new crypto regulations” には、これまでにブロックチェーン・暗号技術が世の中に浸透仕切っていないのは、政府が明確な規制や政策をとっていないからだとし、次期大統領のバイデンには、その規制の制定に大きな期待がかかっている、と述べられている。保守的な政策が多く、スタートアップには逆風だとされてきたトランプ政権からバイデン政権へと移行することで、アメリカのスタートアップ・エコシステムは新たなフェーズを切り開きうるという論点は、以前の記事(アメリカ大統領選挙)でも触れさせていただいた。

 この記事で最も注目するべきなのは、1991年にアメリカで制定された法律、HPCCA(High Performance Computing and Communications Act)法が引き合いに出されているということだ。

IT大国となるきっかけとなったHPCCA法

 HPCCA法とは、当時の上院議員アル・ゴアが主導し、ジョージ・ブッシュ大統領(父)のもと制定された、アメリカ国内の情報インフラの普及を推進するための法令である。この法令がアメリカのドットコムバブルを引き起こし、AmazonやeBay、Yahooなど、アメリカのIT黎明期を支える企業を生み出したといえよう。IT化の動きは今なお続いており、2020年もAirbnbやDoorDash、Asanaなど、既存産業とITを組み合わせたビジネスモデルのIPOが達成された。

 HPCCA法のように、法規制によって爆発的にビジネスが誕生した前例をもとに、今後ブロックチェーンが、一つの規制が整備されることで社会実装が急激に進行するポテンシャルがあることは疑いようのない事実であろう。バイデン政権はもう間も無く誕生するが、任期が終了する2025年にブロックチェーンによって世界がどう変わっているのか、今から楽しみである。

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