[シュウ・コバヤシのDRONE MANIA]Vol.17 ゲームから想像する未来

ゲームで描かれるドローン

ちょうど1年前ぐらいにVol.4でゲームに登場するドローンについて紹介しました。あれから色々なゲームがリリースされましたが、もはやドローンが登場するのはなにも珍しくなくなりました。そして、今までは一つの道具として使われる程度でしたが、最近は物語の中核を占める重要なアイテムとして扱われるようになってきました。

そこで、今回はドローンのこれからの未来を想像させるようなゲーム、UBISOFT製のウォッチドックス レギオンをゲームの内容にはほとんど触れず、ドローンの専門家としてドローンの扱われ方についてご紹介します。

ウォッチドックス レギオン

ウォッチドックス レギオンはウォッチドックスシリーズの第3作目で、政治や政府、警察をも崩壊しかけた近未来のロンドンを舞台に、ハッカー集団のレジスタンスを組織し、ロンドンの未来を切り開いていく、オープンワールドアクションゲームです。

特徴としては、かなり精密に再現されたロンドンの街中を自由に探索し、ドローンやAI、ネットワークなどのインフラを駆使することができ、街中で出会うほとんどのキャラクターを仲間にできるという自由度に富んだゲームです。

近未来のロンドンのため、すべての市民はオプティクスというARデバイスをこめかみに装備して、常にネットワークに接続しています。またそのネットワーク上はバグリーという名のAIがサポートしており、車も自動運転しているものが多く、タクシーには運転手が乗っていません。そして、ドローンの未来を表すかのように街中を無数のドローンが飛び交っています。

プレイヤーが操作する以外、ほとんどのドローンは自動操縦で飛んでいます。そして基本的に幹線道路の上空を規律正しく飛んでいます。つまり、ドローンが飛行する経路は決まっており、必要であればそこから枝分かれして目的通りに飛ぶようになっているようです。そのため一部のドローン以外は自由に飛び回るわけではありません。幹線道路上であれば建物などの障害物を気にする必要もありません。

また、このロンドンでは電線が存在せず、道路上にあるのは通行する車と、街灯、信号機だけなのでドローン用のルートとして申し分ありません。実際に運用する際も同じようにしないといけないでしょう。ただ、日本の街中は電線と電柱の量がとても多いんのでなかなか同じようには行かないでしょうね。

もう一つ、ドローンがインフラとして整備されていることを表す大きなポイントがあります。それはドローン用のプラットフォームです。街中のいたる所の壁や屋上に取り付けられており、ドローンが安全に着陸できるようになっています。

ゲーム内ではバッテリーの観点はなく、ずっと飛んでいることができますが、実際はこのプラットフォーム上で充電、もしくはバッテリー交換をしているものと考えられます。また、荷物の受け取りや発送もプラットフォームで行うのが理想ですね。

このように、ウォッチドックス レギオンの中ではドローンのインフラが整備されています。では、どのようなドローンが飛んでいるのでしょうか。

  • 配送ドローン
  • ニュースドローン
  • ctOSドローン
  • 運搬ドローン
  • 地上型ドローン

このような種類があります。他にも違反者を追跡し、電撃を食らわせる追跡ドローンや銃やミサイルで武装した鎮圧ドローンなどがありますが、あまりに現実離れしていますので割愛します。

配送ドローン

文字通り、荷物を配送するドローンです。これから最も注目されているドローンの使われ方だと思います。機体にはちゃんとプロペラガードがついており、機体下部に荷物を入れる箱が接続されています。このスクリーンショットを撮って初めて気がついたのですが、顔がついているのですね。かわいい。

現実でも実証実験されているものと近い形をしています。ゲーム内ではこのドローンを撃ち落とすとアイテムがいただけます。また、ビルの屋上に残骸が落ちていることもありました。実際にドローンの配送が始まっても荷物の拾得や略奪などの今まで考えもしなかった問題が出てきそうです。

ニュースドローン

これはゲーム内の架空のニューステレビ局GBBが所有するニュースドローンです。どこか見たことがある形をしていますね。まるでDJI製のInspire 2ですね。

このドローンは事故や事件があるとどこからともなく飛んできて、「この映像はGBBが撮影しています」というアナウンスとともに飛び回っています。プレイヤーがハックして飛ばすこともでき、その際はメインカメラの映像にすることもできます。

LEDライトも搭載されており、夜間でもバッチリ撮影できます。自動で飛ぶこと以外は現在の空撮ドローンと差異はないですが、今後現地取材はドローンの遠隔操縦だけで済んでしまう可能性もあるなと思ってしまいました。実機のヘリコプターですと、救助や騒音で迷惑なこともありますし、各地に常駐しているドローンを遠隔で飛ばすことができれば、かなり効率的ですね。

ctOSドローン

ctOSとは街の通信や交通、水道電気などのすべてを管理するOSで、この管理が行き過ぎることが問題になり、ウォッチドックスシリーズのテーマの一部でもあります。そのctOSが治安や風紀を管理するために街中を監視するドローンです。

いろいろな禁止事項をアナウンスしていたり、駐車違反の罰金を通知しているところを目撃しました。ゲーム内ではやりすぎていた感がありましたが、警備や動く監視カメラとしては有効だと思います。でも、このようなドローンが飛び回っているのはいい気がしませんよね。

運搬ドローン

その名の通り大きな物を運搬するドローンです。建設現場でよく見かけました。コンテナのようなものを定期的に運搬しています。かなり重いものを持ち上げられるようで、ゲーム内のミッションで、屋上に設置されていたサーバーを建設ドローンでまるごと盗むというものがありました。

実際にはさすがにこの大きさのもので、これほどのペイロードがあり安定しているものは聞いたことがありませんが、実現すればクレーンで建設資材を運ぶより効率がいいかもしれません。

ゲーム内ではこのドローンに乗れます。ただ、このドローンに乗っていると周りの市民からどうかしてる的な非難を受けるので、この世界でもドローンに乗っかるのは一般的ではないようです。

地上型ドローン

番外編ですが、地上用のドローンもあります、蜘蛛型でそのままスパイダーというものです。わしゃわしゃと6本の脚を素早く動かし、機敏に動きます。車輪と違い、段差をものともせず、ジャンプもできるため走破能力が高いです。その場で転回もできます。脚を手のように扱うことができるので、コンピューターにアクセスすることもできてしまいます。もともとインフラメンテナンス用途で配備されている部分もあるようです。

ゲーム内でもかなり便利な存在で、人が行く必要がなくなるミッションも多かったです。ここまで機敏に動くものは無理ですが、同じようなものを製作してみたくなりました。

ドローンの浸透

これだけドローンが飛び回っている世界ですので、それなりにドローンの認知度があるようです。冒頭に書いたとおり、ウォッチドックス レギオンはそのへんを歩いているキャラクターをスカウトして仲間にすることができます。そしてすべてのキャラクターには名前、職業などの背景が設定されています。と、いうことはもちろんドローンに関係する職業もあるようです。私が見かけたのはドローンレーサーとドローンエキスパートでした。

見た目もすごいですが、プロフィールもすごいです。78歳、女性ですが妻がいます。ドローンマニアという職業はなかったです。そして街中を歩く市民たちはたまにドローンに対する不満を述べているシーンもあります。ゲームとはいえ色々考えさせられる内容がこのゲームにもあります。そしてミッションによってはドローンなくしては成し遂げられない内容もあります。架空だとしても今後のドローンの未来を予見する内容でした。

マイナスな部分もたくさんある内容でしたので、現実でもそのようにならないよう、社会的な理解が深まれば良いですね。そして、ゲーム内ではサーバールーム内を飛び回りメンテナンスをしたり、この他にもいろいろな用途に使われています。現在では現実的とは考えられない内容でも、思いもよらない活用方法が提案されるかもしれません。ゲームの中で使い方をシミュレーションしてみるのも面白い試みかもしれませんね。

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