【取材のウラ側 現場ノート】会場で試合を見つめていた私は、一人の少年の勇姿に思わず涙ぐんでしまった。
女性ダンス&ボーカルグループ「SPEED」の元メンバーで自民党の今井絵理子参院議員(37)の長男・礼夢(らいむ=16)が、12月7日にプロレスデビュー。先天性難聴というハンディを抱えながらも、懸命に戦う姿は多くの人々に感動を与えた。
パラリンピック担当として、障がいを持つアスリートを数多く取材してきた。その中で、すべての選手に当てはまったのが〝諦めの悪さ〟だ。例え片足がなくても、手の一部が欠損していても「そんなのは関係ない」と言わんばかりのハイパフォーマンスに、何度も驚かされた。
礼夢もそうだった。三半規管が弱いため、プロレスの技を習得するのは、決して簡単なことではない。しかし、デビュー戦ではロープを使ってのクロスチョップや逆片エビ固めでたたみかける場面も。勝負には敗れたが、その姿はまさに〝プロレスラー〟そのものだった。母も「いつもと表情が違って、顔つきも変わって正直驚いた」と目を細めた。
ただ、礼夢は「まだスタートラインに立っただけ」と満足していない。これからのプロレスラー人生、何度も大きな壁にぶつかるだろう。でも、礼夢なら大丈夫。どんな試練も乗り越えてくれると私は信じている。
(パラリンピック担当・中西崇太)