2年連続最下位、今季のオリックスを振り返る 山本、田嶋が規定到達も…【投手編】

オリックスシーズンレビュー2020【画像:パーソル パ・リーグTV】

ローテーションを支えた山本&田嶋、左右の両輪

首位とは27ゲーム差、2年連続で最下位に終わったオリックス。開幕から苦戦を強いられ8月には西村徳文監督が辞任する苦しいシーズンとなったが、中嶋聡監督代行が率いた後半戦は、新戦力の台頭で来季への明るい兆しを見せた。本記事は投手を中心とした前編、野手を中心とした後編に分けて、各選手にフォーカス。上記の「パーソル パ・リーグTV」特集動画「シーズンレビュー2020」とともに、オリックスの2020年シーズンを振り返っていく。

球界を代表するエースとなった山本由伸投手を柱に、先発ローテーションの形が徐々に見えてきた今季のオリックス。一方で、中継ぎ陣は昨季から大きく陣容が変わることとなり、勝利の方程式の確立に時間を要した。打線が得点力不足に悩む中で白星こそ伸び悩んだが、シーズンを通して投手陣の形が徐々に整ってきた。

今季、シーズンを通してローテーションを守り、規定投球回に達したのは山本と田嶋大樹投手の2人。山本は昨季に続いて2年連続、一方の田嶋は自身初の到達となった。

昨季は最優秀防御率のタイトルに輝き、今季から背番号「18」を背負ってシーズンに臨んだ山本。開幕からの4戦で3勝、防御率1.82と快調な滑り出しを見せたが、7月19日以降の6試合では、9イニング当たりの四球数を示すBB/9が1.21から3.65とやや制球に苦しみ、防御率も4.62と悪化。1か月以上もの間、白星から遠ざかった。

しかし、9月に入るとエースは輝きを取り戻す。1日のソフトバンク戦で7試合ぶりとなる白星を挙げると、15日の楽天戦からは5試合にまたがって31イニング連続無失点を記録。月間MVPを受賞する活躍でチームをけん引すると、磨きのかかった真っすぐ、フォークを始めとした変化球を駆使して149個の三振を奪い、自身初となる最多奪三振のタイトルを獲得した。

シーズン序盤に山岡泰輔投手が離脱し、中盤戦までローテーションの屋台骨を背負い続けた山本。今季はソフトバンク・千賀滉大投手と4度の投げ合いを演じるなど、各チームの主力投手としのぎを削った。昨年、今年と惜しくも届かなかった2桁勝利に向けて、来季はさらなる進化に期待したい。

最高勝率右腕は故障を経ながら存在感を示す

そして、山本とともに今季のローテーションを支えたのが田嶋だ。1年目は開幕ローテに名を連ねるも肘の故障で離脱、2年目の昨季もその影響で初登板は開幕からふた月経った6月5日と、プロ入り後の2年はシーズンを通して投げぬくことができなかった。

ローテ定着を目指す1年に臨んだ左腕は、開幕2戦目から登板を果たし、7月4日の西武戦で幸先よく1勝目を挙げる。その後は9試合白星なしと援護に恵まれない期間もあったが、9月16日にプロ初完封勝利を挙げるとそこから3連勝を記録。シーズンの最後までローテーションを守り抜き、4勝6敗、防御率4.05という成績で3年目を終えた。

ルーキーイヤーに見せた力強い投げ方から一転、故障明けとなった昨季からは力感のない柔らかなフォームへとモデルチェンジした。この影響もあり今季序盤は140キロ前後の直球を投じていたが、終盤戦にかけては150キロを超える球も目立つようになり、プロ入り3年目にして大きな進化を見せるシーズンとなった。故障を乗り越え、先発陣の一角としてシーズンを戦い抜いた経験は、間違いなく来季以降に生きてくることだろう。来季はローテを支える柱の1人として、首脳陣、そしてファンからの期待を背負うシーズンとなりそうだ。

左右の両輪がローテーションを守り抜いた一方で、悔しいシーズンとなったのが山岡泰輔投手だ。2年連続の開幕投手を任された今季だったが、2登板目のロッテ戦、2人目の打者との対戦中に左脇腹の違和感を覚え降板。その翌日には登録抹消となり、2か月にわたる戦線離脱を強いられることとなった。

8月下旬の復帰後は3連敗となかなか流れに乗ることができなかったが、9月11日のロッテ戦からは6試合連続のQSと、最高勝率に輝いた昨季の安定感を取り戻す。そして、10月30日の日本ハム戦では今季初完投で4勝目を挙げ、昨季同様に1人でマウンドを守り抜いてシーズンを締めくくった。

今季は故障離脱の影響で登板数を大きく減らした山岡。白星も4つと、13勝を挙げた昨季から大きく減らし、プロ入りから3年間ローテーションを守り抜いてきた右腕にとって苦難のシーズンとなった。来季はチームとともに自身の巻き返しへと臨むシーズンとなりそうだ。

高卒ルーキーを筆頭に若手先発投手が躍動

山本、田嶋、そして来日3年目を迎えたアルバースに次いで、今季14試合に先発登板したのが山崎福也投手だった。昨季は36試合に登板して先発はわずか2試合だったが、今季は7月2日に初登板を果たすとシーズンを通して自己最多となる14試合に先発。5勝5敗、防御率4.50と決して満足のいく数字ではなかったが、8月21日の登板では7回1失点と好投し、中嶋聡監督代行の初勝利に貢献するなど、ローテの一角として存在感を放った。同じくドラフト1位の左腕・田嶋の台頭を刺激に、先発としてより一層の活躍に期待したい。

そして、同じドラフト1位左腕では高卒ルーキーの宮城大弥投手が早くもプロ初先発を果たし、大器の片りんを見せた。初登板となった10月4日の楽天戦で5回2失点と好投すると、3戦目には日本ハムを5回7奪三振3四球3失点(自責点2)で退け、高卒ルーキー1番乗りとなるプロ初勝利をつかんだ。150キロに迫る真っすぐと、カーブ、チェンジアップを駆使した緩急自在の投球で、16回を投げてイニングと同数の三振を奪った。投げっぷりの良さも光る左腕の台頭は、チームに新しい風を吹き込んだと言えそうだ。

一方で、昨季の大躍進から一転して苦しいシーズンとなったのが榊原翼投手。開幕1軍を逃して7月3日に初戦を迎えるも、6試合で1勝2敗、防御率4.13と振るわず、中でもBB/9は7.62と制球に苦しんで失点するシーンが続いた。2か月におよぶファームでの調整を経て10月21日に1軍復帰を果たした右腕だったが、その後も四球から失点を招くシーンが続いて白星を挙げることができず、1勝4敗という成績でシーズンを終えた。ローテの一角として期待が大きかっただけに、それを裏切るシーズンとなった。山本、山岡に続く右腕の柱として、明確になった課題をクリアしていきたい。

顔ぶれが変化した中継ぎ陣、新戦力の台頭がブルペンを支える

海田智行投手、増井浩俊投手、近藤大亮投手と昨季50試合以上を投げて救援陣を支えた投手が、そろって不振、あるいは故障に悩まされるシーズンとなった今季。オリックスのブルペン陣は新たな顔ぶれの台頭が光った。

まずは自己最多、そしてチーム最多の48試合に登板した山田修義投手だ。開幕2戦目、先発した田嶋の後を受けて初戦からホールドを挙げると、その後は打者の左右やイニングを問わず登板を重ね、チーム2位となる18ホールドを記録した。無類のタフネスぶりで海田に代わって左腕リリーフのポジションをつかみ取った。

そしてチームトップのホールドを稼いだのが、今季から加入したヒギンスだ。190センチの長身から投げ込まれる真っすぐと、カーブ、チェンジアップを駆使した投球で開幕から10試合連続無失点を記録。セットアッパーとしての地位を確立すると、主に守護神・ディクソンにつなぐ8回を任されて19ホールドを挙げた。41回1/3を投げて45奪三振と、長身の外国人投手らしく力強い投球で試合終盤を制圧したヒギンス。来季もディクソンとの「ハイタワー」リレーで、チームに白星を届けてくれそうだ。

5年目を迎えた吉田凌投手も、今年は飛躍のシーズンとなった。入団後の4年間でわずか5試合の登板に終わっていた右腕だったが、昨季ファームで29試合を投げて防御率1.38と圧巻の成績を残すと、勢いそのままに今季は1軍で躍動。7月15日の初登板から8試合連続無失点で信頼を勝ち取ると、8月15日にはブルペンデーの3番手として登板し、うれしいプロ初勝利を手にした。140キロ中盤の速球とキレ味鋭いスライダーを中心とした投球で、奪三振率は10.24と三振を量産した。11試合連続無失点で締めくくった今季を糧に、来季はブルペンの中心としての活躍が期待される。

経験を糧にベテランも奮闘、技巧派右腕は再び0点台の領域へ

11年目、37歳のシーズンを迎えた比嘉幹貴投手は、2014年以来となる防御率0点台(0.71)を記録。失点は10月15日のソフトバンク戦で浴びた本塁打による自責点1のみと、驚異的な安定感で救援陣を支えた。球威こそ往年の勢いとはいかないものの、急ブレーキのかかるスライダー、時に90キロ台を記録するカーブを使った緩急自在な投球は未だ健在。20試合、12回2/3という投球回以上の存在感を示した。

昨季から救援に転向したディクソンは、来日8年目を迎えた今季も守護神の役割を全うした。6月23日のロッテ戦では2失点でサヨナラ負けを喫するなど、星のめぐり合わせもあり今季初セーブは7月4日の西武戦。8月中旬には西武、ソフトバンクを相手にセーブ失敗が続くなど苦しい時期もあったが、シーズン終盤にはチームの好調に乗じてセーブを重ね、最終的に16セーブでシーズンを終えた。来季には日本球界9年目、36歳と球界でもベテランの域に差し掛かる右腕は、変わらぬパフォーマンスでチームを支えてくれることだろう。

ブルペン陣を中心に昨年とは大きく顔ぶれが変わることとなったオリックス投手陣。先発も山岡の離脱などでなかなか戦力が整わなかった。しかし、田嶋や宮城など新戦力の台頭、ベテラン・増井の配置転換など、先発陣は試行錯誤の末にようやく形が見えてきた。救援陣も山田の活躍を筆頭に、ヒギンス、あるいは漆原大晟投手や富山凌雅投手が各々存在感を示し、守護神・ディクソンらベテランとともにシーズンが進むにつれて徐々に見通しが立ってきた。山本、山岡を中心とした投手力は決して他チームに劣らないオリックス。チームの巻き返しに向けて、来季はさらなる奮起に期待がかかる。(「パ・リーグ インサイト」成田康史)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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